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静寂を破ったのはパミラの悲鳴だった。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!! お前! なんでっ!? お前は!!! ししし死んだはずだ!!!」
「はい。一度死にましたよ」
レティシアは振り返って、優しくパミラに微笑みかける。彼女は今から死ぬのだから、少しは優しくしてあげないと。そんな気持ちがミケーラにはあった。
「首が落ちた後、目が合いましたよね?」
忘れてしまいましたか? と言いながらパミラに近づいていった。
「来るなっ! 来るなっ!!!」
「ですが疑っておられるでしょう? 私は本物ですよ。瞳と首を見てみてください」
パミラは親切のつもりで、すぐ近くに顔を寄せ、瞳を合わせる。彼女の瞳は今も変わらず美しかった。
「あの牢でのやり取りを話した方がいいですか? 2人きりでしたし、私が本物だという証拠になるでしょう?」
レティシアから逃れようと身をよじるが、パミラを縛る縄を持った兵士に力で押さえつけられた。
「ヒィィィ!!! あ、あああ悪魔め!!!」
「今は貴女に代わって聖女ということになっております」
彼女がちゃんと理解できるようにと、ゆっくりと教えてあげた。そうして尋ねる。
「私から何か奪えましたか?」
あの処刑の朝、パミラは勝利を確信して、牢で最期の時間を過ごすレティシアを1人で訪れていた。
「アハハ! 天下の公爵令嬢が哀れな姿ね! お前から全て奪ってやったわ!」
牢の格子に手をかけ、挑発するように言葉を投げつけたにもかかわらず、彼女は声をあげて笑った。
「ふふ……! 面白いことをおっしゃるのね。奪えたのは王太子くらいではなくて? それに関しては心から感謝してますのよ。彼のような愚鈍な男性が婚約者のまま聖アルテニアの元に行くのはとても耐えられなかったんですもの」
パミラは急にライルがとてもつまらない男に思えた。あの男はパミラがいなければただのコンプレックスの塊だ。だけどそれを認めるわけにはいかなかった。レティシアには惨めったらしく死んでもらわなければ。でないとパミラのコンプレックスが消えない。
「お前は私に負けたんだ!!! 負けたんだからな!!!! 負けましたと言えぇぇ!!!」
「本当に貴女、ライル様とお似合いですこと」
そういうと、もうパミラがなんと言おうと答えることはなかった。
「ギロチンの前でもその冷静さが保てると思うな!!!」
その捨て台詞は全く効果がなかった。レティシアは処刑台に上がっても、最初から最期まで凛として気高く美しかった。
今のパミラのように取り乱すことなどなかった。
レティシアは元王太子ライルの方を向きながら話している。
「ああ、あそこで何かぶつぶつ言っている私の元婚約者は差し上げますわ。私には新しい方がいらっしゃいますし」
そうしてまたパミラの方に向き直った。
「一緒に連れて行ってあげてくださいね」
そこでようやくパミラは理解した。
(私、今から死ぬんだ)
「いや! いやよ!!! いやだ!!! ごめんなさい!!! 助けて!!! ごめんなさい!!!!!!!」
「こちらこそごめんなさいね。それはしてあげられないの」
そう言って、パミラの元を去っていった。
「い"やだぁぁぁあぁぁ!!! 死にたくないよぉぉおぉ!!!!! 嵌めてごめんなさい!!! 殺してごめんなさい!!! レティシアが羨ましかっただけなのぉぉぉぉ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!! 許してぇぇぇ!!!!!」
それを見聞きしていた観衆たちは絶叫した。
「やはり偽聖女だったのか!!!」
「聖アルテニアが無実の罪で亡くなったレティシア様を復活させたと言うことなのか!?」
「あの美しい鳥は使い鳥じゃないか!」
「俺! 確かにあの瞳を持ったレティシア様の死体を見たぜ!!?」
「き、奇跡だ!!!」
「ああ、アルテニア様は我々をいつも見守ってくださっているのだ……!!!」
興奮して騒ぎ出す者、ただただ固まる者、むせび泣く者、あまりのことに気を失うもの。処刑台の周りは熱狂に包まれていた。
レティシアにも使われたギロチンは、この日、2人の命を終わらせた。
ミケーラがパミラとライル以外に恩赦を与えたのだ。あくまで処刑を免れただけで、その後も厳しい処遇が待ってはいるが、それでも死を免れた死刑囚たちはレティシアに深く感謝した。
(レティシアはパミラとライルに復讐しろと言っていたし、良いわよね?)
問いかけられたルークは、また美しい鳴き声を上げたのだった。
先に首を落としたのはライルだった。彼はもうまともに会話は出来なかったが、ギロチンを前に少しホッとしているようにも見えた。
「さようなら殿下、もう会うことはないでしょう」
「ああ」
大神官の号令で、彼の人生は終わった。
「いやよ!!! いやだいやだいやだ!!! いやだよぉぉぉ!!!」
パミラは首が落ちた後も叫んでいた。落ちた首の表情は苦痛に満ち歪んでいた。
これでレティシアの復讐は終わった。彼女は喜んでくれるだろうか。
ミケーラは晴れ渡った空を見上げた。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!!! お前! なんでっ!? お前は!!! ししし死んだはずだ!!!」
「はい。一度死にましたよ」
レティシアは振り返って、優しくパミラに微笑みかける。彼女は今から死ぬのだから、少しは優しくしてあげないと。そんな気持ちがミケーラにはあった。
「首が落ちた後、目が合いましたよね?」
忘れてしまいましたか? と言いながらパミラに近づいていった。
「来るなっ! 来るなっ!!!」
「ですが疑っておられるでしょう? 私は本物ですよ。瞳と首を見てみてください」
パミラは親切のつもりで、すぐ近くに顔を寄せ、瞳を合わせる。彼女の瞳は今も変わらず美しかった。
「あの牢でのやり取りを話した方がいいですか? 2人きりでしたし、私が本物だという証拠になるでしょう?」
レティシアから逃れようと身をよじるが、パミラを縛る縄を持った兵士に力で押さえつけられた。
「ヒィィィ!!! あ、あああ悪魔め!!!」
「今は貴女に代わって聖女ということになっております」
彼女がちゃんと理解できるようにと、ゆっくりと教えてあげた。そうして尋ねる。
「私から何か奪えましたか?」
あの処刑の朝、パミラは勝利を確信して、牢で最期の時間を過ごすレティシアを1人で訪れていた。
「アハハ! 天下の公爵令嬢が哀れな姿ね! お前から全て奪ってやったわ!」
牢の格子に手をかけ、挑発するように言葉を投げつけたにもかかわらず、彼女は声をあげて笑った。
「ふふ……! 面白いことをおっしゃるのね。奪えたのは王太子くらいではなくて? それに関しては心から感謝してますのよ。彼のような愚鈍な男性が婚約者のまま聖アルテニアの元に行くのはとても耐えられなかったんですもの」
パミラは急にライルがとてもつまらない男に思えた。あの男はパミラがいなければただのコンプレックスの塊だ。だけどそれを認めるわけにはいかなかった。レティシアには惨めったらしく死んでもらわなければ。でないとパミラのコンプレックスが消えない。
「お前は私に負けたんだ!!! 負けたんだからな!!!! 負けましたと言えぇぇ!!!」
「本当に貴女、ライル様とお似合いですこと」
そういうと、もうパミラがなんと言おうと答えることはなかった。
「ギロチンの前でもその冷静さが保てると思うな!!!」
その捨て台詞は全く効果がなかった。レティシアは処刑台に上がっても、最初から最期まで凛として気高く美しかった。
今のパミラのように取り乱すことなどなかった。
レティシアは元王太子ライルの方を向きながら話している。
「ああ、あそこで何かぶつぶつ言っている私の元婚約者は差し上げますわ。私には新しい方がいらっしゃいますし」
そうしてまたパミラの方に向き直った。
「一緒に連れて行ってあげてくださいね」
そこでようやくパミラは理解した。
(私、今から死ぬんだ)
「いや! いやよ!!! いやだ!!! ごめんなさい!!! 助けて!!! ごめんなさい!!!!!!!」
「こちらこそごめんなさいね。それはしてあげられないの」
そう言って、パミラの元を去っていった。
「い"やだぁぁぁあぁぁ!!! 死にたくないよぉぉおぉ!!!!! 嵌めてごめんなさい!!! 殺してごめんなさい!!! レティシアが羨ましかっただけなのぉぉぉぉ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!! 許してぇぇぇ!!!!!」
それを見聞きしていた観衆たちは絶叫した。
「やはり偽聖女だったのか!!!」
「聖アルテニアが無実の罪で亡くなったレティシア様を復活させたと言うことなのか!?」
「あの美しい鳥は使い鳥じゃないか!」
「俺! 確かにあの瞳を持ったレティシア様の死体を見たぜ!!?」
「き、奇跡だ!!!」
「ああ、アルテニア様は我々をいつも見守ってくださっているのだ……!!!」
興奮して騒ぎ出す者、ただただ固まる者、むせび泣く者、あまりのことに気を失うもの。処刑台の周りは熱狂に包まれていた。
レティシアにも使われたギロチンは、この日、2人の命を終わらせた。
ミケーラがパミラとライル以外に恩赦を与えたのだ。あくまで処刑を免れただけで、その後も厳しい処遇が待ってはいるが、それでも死を免れた死刑囚たちはレティシアに深く感謝した。
(レティシアはパミラとライルに復讐しろと言っていたし、良いわよね?)
問いかけられたルークは、また美しい鳴き声を上げたのだった。
先に首を落としたのはライルだった。彼はもうまともに会話は出来なかったが、ギロチンを前に少しホッとしているようにも見えた。
「さようなら殿下、もう会うことはないでしょう」
「ああ」
大神官の号令で、彼の人生は終わった。
「いやよ!!! いやだいやだいやだ!!! いやだよぉぉぉ!!!」
パミラは首が落ちた後も叫んでいた。落ちた首の表情は苦痛に満ち歪んでいた。
これでレティシアの復讐は終わった。彼女は喜んでくれるだろうか。
ミケーラは晴れ渡った空を見上げた。
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