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第三部 元悪役令嬢は原作エンドを書きかえる
7 校外学習
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ジェフリーが(こっそり)旅立ってから一ヶ月が過ぎた。かなり秘密裏に動いているので彼が今どこで何をしているのかわからない。
(気にはなるけど……ジェフリーは安心感があるのよね。下手は打たないし、結果は必ず持って帰って来るだろうっていう)
そんな中私達は原作のお楽しみエピソード。「王立学院の校外実習」だ。有事に備えて対応力を学ぶ、という名目の下に行われる貴族や金持ちからすると未知の世界の体験会である。
ちなみに二年次は学院近隣の森の中、三年次は王都から少し離れた魔獣生息地域で行われる。
(平和が続いてるからねぇ~……いや、これからもそうであってもらわなきゃなんだけど)
原作では平民出身のアイリスが料理でレオハルト他男性陣を虜にし、他ご令嬢から顰蹙を買い、突如現れた魔獣から守られるヒロインポジションを全力で見せつけたイベント。
もちろん、イベントの中身は大きく変わることになった。
そもそも生徒を襲ったはぐれ魔獣はもういない。
フォルムは熊と似ているが、魔獣というだけあってゴーレムが半分混ざったような容貌をしており攻撃力も防御力も高い、という原作情報だったのだが、このイベントの前日に探し出し、私とルカとアイリスで討伐済みだ。
原作ではレオハルト達が苦戦していたというのに、今の我々にかかれば特に危なげもなく……。
これで学友達は全てが初めての体験に少し緊張しつつも、この行事を楽しめるはずだ。
簡単な魔術実習と森での過ごし方のレクチャー、薪木拾いが終わると、まだ日は高いが夕食の準備に取り掛かる。
「リディアナ……様手際いいじゃん!」
「そこそこやってたからねぇ」
前世で、というのは彼女に通じているだろう。
アイリスに褒められるのは少々こそばゆい。彼女も原作通り慣れた手つきで野菜の皮をむいている。この綺麗に皮をむいているところが前世の日本を感じてちょっぴり面白い。こちらの世界……少なくとも我が国は皮むきはそれほど重要視されていないようなのだ。
もちろんそんな理由など知る由もない他のご令嬢達は、信じられないような目を私に向けていた。
「私から見ても意味わかんないわ。なんで公爵令嬢が手慣れた手つきで肉も野菜も捌いてるのか」
「ルイーゼもでしょ?」
「私の場合は刃物を持てばどうとでも。味付けとかサッパリだし」
「その手さばきって妖精の加護なの!?」
今日の夕食メニューは焼き串にスープ。どちらもやたら高級な材料が用意されているところに、多少なりとも学院側の配慮を感じる。
各グループに分かれているが、私達の班が間違いなく一番美味しそうに出来上がった。匂いも見た目も。
アリアが小さな子供がそうするように、オドオドと慎重にスープをよそってくれている。
(水炊きで十分な気がするけど)
これも配慮だろうか……。
「見事だな」
先に食べ終わったであろうレオハルトが様子を見にやって来る。
「そちらはどうでした?」
「フィンリーの独壇場さ」
(えー! 見たかった~~~!!!)
と、声を出さない私を褒めてあげたい。なんせ誰が聞いているかわからない。
「あ~……ルカがシャシンを撮っていたから見せてもらうといい」
口には出さないが表情には出ていたか……呆れ顔のレオハルト。最近はヤキモチを通り越して再び私の推し活を受け入れてくれているようだった。
フィンリー様は冒険者生活に備えて、一から十まで全て自分で行うのはもちろんのこと、調理や武器の手入れに至るまで本場の冒険者に教えを請い、比較的魔獣の発生が少ないエリアで野営もしている。このイベントはまさにその成果を見せつけるうってつけの場だろう。
「リディは平気か? その、外で眠るのには慣れていないだろう?」
「慣れてはいませんが楽しみですよ」
前世でキャンプには行ったことがあるし、非日常を味わうのは悪くない。夕食とは違って、寝るのは寝袋一枚(もちろん高級素材使用)なので……ルカは少々不安気だったが。その表情が今のレオハルトと似ている。
「レオハルト様……大丈夫ですか?」
「王子様だもんねぇ……地面で寝るの初めて? 寝袋の下にマントとか引くと多少は寝やすくなるよ」
アイリスが悪気なくアドバイスをするが、それがまさに図星だったのか、
「だ、大丈夫に決まっている!」
と、レオハルトは明らかに虚勢を張っていた。
「寝る場所、ちゃんと石をどかすんですよ?」
こんな時に限ってジェフリーの不在が影響してくるとは……!
「わ、わかっている! 先生にも聞いてきた!」
「そういえば、一時は冒険者みたいな生活してたって仰ってましたもんね」
流石下調べはバッチリだったか。
「ねえねえ! 大きな焚火するんだって!!」
ウキウキしたルカが小走りでやって来る。
(キャンプファイヤー!? 原作にはなかったのに!)
その前に魔獣騒動があったせいか? なんにせよ、そんな楽しそうなことやるならマシュマロを持ってくるべきだった!
この学院が用意したその大きな焚火は、私とアイリスが知っているそれとは少し違い、炎の中に蛍でもいるかのような淡い光がところどころで小さく煌めき、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
(そわそわして眠れなさそうな生徒の為にリラックス効果を狙ってるとか?)
なんて余計な意図まで考えてしまう。
炎の力は偉大だ。前世の世界でもなにかと儀式に使われてきた、という理由もよくわかる。
パチパチと弾ける音を聞きながら各々、気の合う友人たちとその火を囲みコミュニケーションをとっていた。もちろん我々も。
「ねえ! ガチでアランが私のこと意識しないんだけどなんでかな!? そんなに魅力ない!?」
やはりこういうイベントは恋バナありきか。
アイリスが思い立ったようにその質問を我々に向け放った。どうやら鬱憤が溜まっていたようだ。最近は二人の時間も以前より増えているというのに、と。
「村から出れば変わると思ったのに~~~!!」
アリアとルイーゼは至極真面目な顔をして、
「アラン様はその……貴女の……その、アレをご存知なのでしょう?」
「恐れ多いんじゃない?」
「そういう感情を向けるのが失礼になる、と考えてるとか?」
かなり冷静に分析をしていた。ルイーゼの言うアレとは、アイリスが初代聖女の末裔ということを指している。彼女達もその事実を知った時どういった態度で接するのが『正しい』か、考えあぐねてはいた。結局、それまでと変わらぬ態度がいい、と答えは出したようだが。
「やっぱりその可能性高い!?」
「あ、自覚はあったんだ」
なんせアランは生まれた時からアイリスを守るよう言われて育ってきている。フランクな間柄に見えるが、実際彼の中ではしっかりアイリスを特別な血を引く女性、という風に刷り込まれているのだ。
「あたし……なんでそういう風に考えちゃうのか理解できなくってさぁ……」
アイリスの言わんとすることはわかる。前世の価値観を引きずっているせいで、イマイチ身分というものがピンとこない。村ではマイルドに崇められていたということだったので、貴族に生まれその辺のことを一から仕込まれた私とも状況が違う。
「大切にされてるのはわかる……でも、もしかしたらそれすら義務感かもしれないと思うと……無理ぃ~~~……」
ジトッとした目でこちらに視線を移し、
「だからマジでレオ……ハルト様の気持ちわかるっていうか……」
「え!? 別に義務感で大切にしてるわけじゃないわよ!?」
こちらに飛び火してきた。
「でもそういう風には見れないんでしょー? あ! それで言ったらフィンの方も同じなのか……」
アイリスが言うには、私がレオハルトやフィンリー様に向ける感情とアランがアイリスに向ける感情の方向性が同じなんじゃないかということだが……。
「つーかさぁ~フィン……リー様はそれでいいかも知れないけどさぁ~……」
この辺に関して、最近アイリスは俄然レオハルトに味方する。レオハルトと自分を重ねてしまっているようだ。
「ちょっと!」
「大丈夫だって~だーれもこっち見ちゃいないし。自分達のことに夢中だし」
確かにそれぞれのグループは自分達の会話に夢中で、周りなんか目に入っていない。皆楽しそうだ。いつもは気取った貴族達だが、学生らしい健全な表情を浮かべている。
「あたしはそれじゃあ嫌なの。それじゃあ満たされないの」
「満たされないんだ」
ルイーゼがビックリと目を見開く。
「綺麗な感情じゃなくていいの! 普通の恋愛がいいの! 嫉妬して嫉妬されてドロドロの感情に悩み悩まれたいの!!」
大袈裟に演技がかったように手を握りしめていた。そうして『これはレオの代弁でもある!』とばかりにこちらに炎を宿した瞳を向ける。
「肩書が足を引っ張ることになるなんて……! ずっとこのまま中途半端な片思いなんて嫌!!」
「まあ! そんなことを仰っては……!」
ダメ! と、アリアは反射的に批判しそうになるもすぐにボリュームダウンした。
「……仰りたいことはわかりますが……」
「でしょ! さっすがアリア! 恋愛結婚(仮)!」
一方私とルイーゼはというと。
「お互いに大切だっていう愛情は欲しいけど、そういうのちょっとめんどくさい……」
アイリスとアリアの顔色を窺いつつ、正直に気持ちを吐露していた。ルイーゼも婚約者の話があちこちと出始めているが、これといって決め手がないというのが悩みのようだ。
「ルイーゼはレオ……様のどこがよかったわけ?」
ルイーゼは初恋が話が出てちょっぴり恥ずかしそうにした後、
「えー……めちゃくちゃ頑張ってるくせにその頑張りを周囲に見せないところかな……」
その瞬間、全員がなるほどそれはちょっとわかる、と頷いた。確かに昔からそういうところがあった。幼い頃からレオハルトのことをちゃんと見てくれている人はちゃんといたのだ。
「私も恋の駆け引きとかいらない派だな~」
隣にいて安心できる方がよくない? と、恋愛観を語ってみると、
「背負ってるもの多すぎなんだよ~……あたしも頑張るから、背中の荷物を下ろしたらまた考えよっか!」
と、今度は哀れみのような目で深読みをされてしまった。
「ぷっ」
いつもなら不謹慎! と怒るはずのアリアが吹き出した。ルイーゼもぐっと力を込めて笑うのを我慢している。
「荷物下ろした後にそんな体力残ってるかな!?」
「恋愛は別腹だって!」
その後もとめどなく会話は続く。クスクス笑ったり、お互いの方にもたれかかったり。
この夜のひとときは、きっといい思い出となって私達の中に残るだろう。
(気にはなるけど……ジェフリーは安心感があるのよね。下手は打たないし、結果は必ず持って帰って来るだろうっていう)
そんな中私達は原作のお楽しみエピソード。「王立学院の校外実習」だ。有事に備えて対応力を学ぶ、という名目の下に行われる貴族や金持ちからすると未知の世界の体験会である。
ちなみに二年次は学院近隣の森の中、三年次は王都から少し離れた魔獣生息地域で行われる。
(平和が続いてるからねぇ~……いや、これからもそうであってもらわなきゃなんだけど)
原作では平民出身のアイリスが料理でレオハルト他男性陣を虜にし、他ご令嬢から顰蹙を買い、突如現れた魔獣から守られるヒロインポジションを全力で見せつけたイベント。
もちろん、イベントの中身は大きく変わることになった。
そもそも生徒を襲ったはぐれ魔獣はもういない。
フォルムは熊と似ているが、魔獣というだけあってゴーレムが半分混ざったような容貌をしており攻撃力も防御力も高い、という原作情報だったのだが、このイベントの前日に探し出し、私とルカとアイリスで討伐済みだ。
原作ではレオハルト達が苦戦していたというのに、今の我々にかかれば特に危なげもなく……。
これで学友達は全てが初めての体験に少し緊張しつつも、この行事を楽しめるはずだ。
簡単な魔術実習と森での過ごし方のレクチャー、薪木拾いが終わると、まだ日は高いが夕食の準備に取り掛かる。
「リディアナ……様手際いいじゃん!」
「そこそこやってたからねぇ」
前世で、というのは彼女に通じているだろう。
アイリスに褒められるのは少々こそばゆい。彼女も原作通り慣れた手つきで野菜の皮をむいている。この綺麗に皮をむいているところが前世の日本を感じてちょっぴり面白い。こちらの世界……少なくとも我が国は皮むきはそれほど重要視されていないようなのだ。
もちろんそんな理由など知る由もない他のご令嬢達は、信じられないような目を私に向けていた。
「私から見ても意味わかんないわ。なんで公爵令嬢が手慣れた手つきで肉も野菜も捌いてるのか」
「ルイーゼもでしょ?」
「私の場合は刃物を持てばどうとでも。味付けとかサッパリだし」
「その手さばきって妖精の加護なの!?」
今日の夕食メニューは焼き串にスープ。どちらもやたら高級な材料が用意されているところに、多少なりとも学院側の配慮を感じる。
各グループに分かれているが、私達の班が間違いなく一番美味しそうに出来上がった。匂いも見た目も。
アリアが小さな子供がそうするように、オドオドと慎重にスープをよそってくれている。
(水炊きで十分な気がするけど)
これも配慮だろうか……。
「見事だな」
先に食べ終わったであろうレオハルトが様子を見にやって来る。
「そちらはどうでした?」
「フィンリーの独壇場さ」
(えー! 見たかった~~~!!!)
と、声を出さない私を褒めてあげたい。なんせ誰が聞いているかわからない。
「あ~……ルカがシャシンを撮っていたから見せてもらうといい」
口には出さないが表情には出ていたか……呆れ顔のレオハルト。最近はヤキモチを通り越して再び私の推し活を受け入れてくれているようだった。
フィンリー様は冒険者生活に備えて、一から十まで全て自分で行うのはもちろんのこと、調理や武器の手入れに至るまで本場の冒険者に教えを請い、比較的魔獣の発生が少ないエリアで野営もしている。このイベントはまさにその成果を見せつけるうってつけの場だろう。
「リディは平気か? その、外で眠るのには慣れていないだろう?」
「慣れてはいませんが楽しみですよ」
前世でキャンプには行ったことがあるし、非日常を味わうのは悪くない。夕食とは違って、寝るのは寝袋一枚(もちろん高級素材使用)なので……ルカは少々不安気だったが。その表情が今のレオハルトと似ている。
「レオハルト様……大丈夫ですか?」
「王子様だもんねぇ……地面で寝るの初めて? 寝袋の下にマントとか引くと多少は寝やすくなるよ」
アイリスが悪気なくアドバイスをするが、それがまさに図星だったのか、
「だ、大丈夫に決まっている!」
と、レオハルトは明らかに虚勢を張っていた。
「寝る場所、ちゃんと石をどかすんですよ?」
こんな時に限ってジェフリーの不在が影響してくるとは……!
「わ、わかっている! 先生にも聞いてきた!」
「そういえば、一時は冒険者みたいな生活してたって仰ってましたもんね」
流石下調べはバッチリだったか。
「ねえねえ! 大きな焚火するんだって!!」
ウキウキしたルカが小走りでやって来る。
(キャンプファイヤー!? 原作にはなかったのに!)
その前に魔獣騒動があったせいか? なんにせよ、そんな楽しそうなことやるならマシュマロを持ってくるべきだった!
この学院が用意したその大きな焚火は、私とアイリスが知っているそれとは少し違い、炎の中に蛍でもいるかのような淡い光がところどころで小さく煌めき、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
(そわそわして眠れなさそうな生徒の為にリラックス効果を狙ってるとか?)
なんて余計な意図まで考えてしまう。
炎の力は偉大だ。前世の世界でもなにかと儀式に使われてきた、という理由もよくわかる。
パチパチと弾ける音を聞きながら各々、気の合う友人たちとその火を囲みコミュニケーションをとっていた。もちろん我々も。
「ねえ! ガチでアランが私のこと意識しないんだけどなんでかな!? そんなに魅力ない!?」
やはりこういうイベントは恋バナありきか。
アイリスが思い立ったようにその質問を我々に向け放った。どうやら鬱憤が溜まっていたようだ。最近は二人の時間も以前より増えているというのに、と。
「村から出れば変わると思ったのに~~~!!」
アリアとルイーゼは至極真面目な顔をして、
「アラン様はその……貴女の……その、アレをご存知なのでしょう?」
「恐れ多いんじゃない?」
「そういう感情を向けるのが失礼になる、と考えてるとか?」
かなり冷静に分析をしていた。ルイーゼの言うアレとは、アイリスが初代聖女の末裔ということを指している。彼女達もその事実を知った時どういった態度で接するのが『正しい』か、考えあぐねてはいた。結局、それまでと変わらぬ態度がいい、と答えは出したようだが。
「やっぱりその可能性高い!?」
「あ、自覚はあったんだ」
なんせアランは生まれた時からアイリスを守るよう言われて育ってきている。フランクな間柄に見えるが、実際彼の中ではしっかりアイリスを特別な血を引く女性、という風に刷り込まれているのだ。
「あたし……なんでそういう風に考えちゃうのか理解できなくってさぁ……」
アイリスの言わんとすることはわかる。前世の価値観を引きずっているせいで、イマイチ身分というものがピンとこない。村ではマイルドに崇められていたということだったので、貴族に生まれその辺のことを一から仕込まれた私とも状況が違う。
「大切にされてるのはわかる……でも、もしかしたらそれすら義務感かもしれないと思うと……無理ぃ~~~……」
ジトッとした目でこちらに視線を移し、
「だからマジでレオ……ハルト様の気持ちわかるっていうか……」
「え!? 別に義務感で大切にしてるわけじゃないわよ!?」
こちらに飛び火してきた。
「でもそういう風には見れないんでしょー? あ! それで言ったらフィンの方も同じなのか……」
アイリスが言うには、私がレオハルトやフィンリー様に向ける感情とアランがアイリスに向ける感情の方向性が同じなんじゃないかということだが……。
「つーかさぁ~フィン……リー様はそれでいいかも知れないけどさぁ~……」
この辺に関して、最近アイリスは俄然レオハルトに味方する。レオハルトと自分を重ねてしまっているようだ。
「ちょっと!」
「大丈夫だって~だーれもこっち見ちゃいないし。自分達のことに夢中だし」
確かにそれぞれのグループは自分達の会話に夢中で、周りなんか目に入っていない。皆楽しそうだ。いつもは気取った貴族達だが、学生らしい健全な表情を浮かべている。
「あたしはそれじゃあ嫌なの。それじゃあ満たされないの」
「満たされないんだ」
ルイーゼがビックリと目を見開く。
「綺麗な感情じゃなくていいの! 普通の恋愛がいいの! 嫉妬して嫉妬されてドロドロの感情に悩み悩まれたいの!!」
大袈裟に演技がかったように手を握りしめていた。そうして『これはレオの代弁でもある!』とばかりにこちらに炎を宿した瞳を向ける。
「肩書が足を引っ張ることになるなんて……! ずっとこのまま中途半端な片思いなんて嫌!!」
「まあ! そんなことを仰っては……!」
ダメ! と、アリアは反射的に批判しそうになるもすぐにボリュームダウンした。
「……仰りたいことはわかりますが……」
「でしょ! さっすがアリア! 恋愛結婚(仮)!」
一方私とルイーゼはというと。
「お互いに大切だっていう愛情は欲しいけど、そういうのちょっとめんどくさい……」
アイリスとアリアの顔色を窺いつつ、正直に気持ちを吐露していた。ルイーゼも婚約者の話があちこちと出始めているが、これといって決め手がないというのが悩みのようだ。
「ルイーゼはレオ……様のどこがよかったわけ?」
ルイーゼは初恋が話が出てちょっぴり恥ずかしそうにした後、
「えー……めちゃくちゃ頑張ってるくせにその頑張りを周囲に見せないところかな……」
その瞬間、全員がなるほどそれはちょっとわかる、と頷いた。確かに昔からそういうところがあった。幼い頃からレオハルトのことをちゃんと見てくれている人はちゃんといたのだ。
「私も恋の駆け引きとかいらない派だな~」
隣にいて安心できる方がよくない? と、恋愛観を語ってみると、
「背負ってるもの多すぎなんだよ~……あたしも頑張るから、背中の荷物を下ろしたらまた考えよっか!」
と、今度は哀れみのような目で深読みをされてしまった。
「ぷっ」
いつもなら不謹慎! と怒るはずのアリアが吹き出した。ルイーゼもぐっと力を込めて笑うのを我慢している。
「荷物下ろした後にそんな体力残ってるかな!?」
「恋愛は別腹だって!」
その後もとめどなく会話は続く。クスクス笑ったり、お互いの方にもたれかかったり。
この夜のひとときは、きっといい思い出となって私達の中に残るだろう。
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