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4 デート2

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 アリスが攻略キャラであるダグラスの方に行かなかった理由はわかっている。『知能』が圧倒的に足りないのだ。その状態で彼に近づくと好感度が下がってしまう。ここはゲームではなく現実世界だからパラメータこそないが、現実の彼の反応もおそらく変わらない。

「それよりメル! 久しぶりに手合わせしようぜ!」
「……いいわよ」

(ヨッシャー!)

 心の中でガッツポーズだ。学園に入学すると、女子は剣術の授業がないので本当に久しぶりになる。

「そんな! 私とのデート中なのに!」
「……デート? 平民の女の子は剣の稽古もデートになるのか?」

 確かに。でもゲームではデートカウントだったんだよね、訓練場で剣の訓練……。攻略キャラに何気なくそんな疑問を投げかけられると、ヘビーユーザー的に心にくるものがある。

「まあ俺達の手合わせ見とけって! 参考になるからよ」
「……もういい」

 そう言うと1人で帰って行く。それをジルは止めることなく、

「おう! うまく教えられなくて悪かったな!」

 と言って見送った。

 ギリッと歯軋りの音が聞こえた。


「やっぱ俺、人に教えんのうまくねーわ」
「そーかもね」
 
(そう思うなら二度と訓練場にアリスを連れて来んなよ!)

 手合わせの方は地道に剣の訓練をしていたおかげで、悲惨な結果にはならなかった。

「6 対 4かよ~もう少し引き離せると思ったんだがな」
「次は勝ち越すからね!」
「はぁ~剣術くらい譲れよな~!」

(もっと練習量増やさなきゃ……)

 成長期とは恐ろしい。圧倒的に力負けし始めてしまっている。これが筋肉の差……もっと技術を磨かなければ。

「……手首、大丈夫か?」

 気づいてくれていたのか。最後の手合わせでジルの剣をうまく受けられず少し痛めてしまったのだ。

「このくらい大丈夫よ」

 手をヒラヒラさせてみせる。

「あ! こら動かすな!」

 そう言って腕を掴まれた。今回、ジルの手は冷たくて気持ちがいい。

「こ、これは治療だからな!」
「わわわかってる!」

 氷の魔法で冷やしてくれた。冷たさの加減がうまいのは、いつも自分で冷やしているからかもしれない。しょっちゅう訓練しているし。

「ジルにとってデートってどんなんなの?」

 触れ合ったまま、なんだか間がもたなくて聞いてみたが、我ながら踏み込んだ質問かもしれない。

「そんなもんに興味があんのかよ」

 ニヤつきながら顔を覗き込んでくる。なんだか少し嬉しそうだ。

「だ、だって、さっきジルはデートじゃないって言ってたけど、女の子を訓練場に連れてきてるの初めて見たし……邪魔されたくないって言ってたじゃん」

 ジルはモテる。ゲームでも現実でも、訓練場に行きたがる女子はこれまでも大勢いたが、集中したいからと全て断っている。だからゲーム内のヒロインは特別だった。ジルにとって大切な空間を共有できる相手なのだ。

「あー……最近、ルークのやつが付き纏われて大変だって言うから代わってやったんだよ」
「そうなの!?」
「そーだよ。リーシャから聞いてねーのか?」

 首を横に振る。何も聞いていない。リーシャも知らないのだろうか。

 リーシャの婚約者である第二王子ルークは優しく穏やかだ。争いは好まない。『ラブコレ』内では2番目に攻略が簡単なキャラだ。同じく王族の第一王子との関係に戸惑っていた。彼らは腹違いの兄弟なのだ。

「デートか。したことねーからわかんねぇけどよ。誰とするかが1番大事なんじゃねーの」
「ありきたり~」
「あ! なんだそれ! 人が真面目に答えたのに!」

 真面目な答えだったのか! と言うことは、好きな人と一緒にいることが大事ってことか?

(私のこと好きになれ~好きになれ~)

 こっそり何度も心で唱える。せっかく手に触れてくれているし。

「じゃあメルはどうなんだよ!?」
「えっ」
「えっじゃねぇ! ちゃんと答えろよ」

 どうしよう。ジルがいてくれたらどこで何してもいいんだけど。って、それじゃあジルと同じじゃないか!

「す、好きな人との楽しい時間って感じ?」

(うわー! 恥ずかしいー!)

「オレとほとんど一緒じゃねーか」
「私の方がちゃんとしてまーす!」
「どこがだよ!」

 そう言って笑った。ああ、いつまでもこんなくだらない会話をしていたいな。
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