4 / 11
4 デート2
しおりを挟む
アリスが攻略キャラであるダグラスの方に行かなかった理由はわかっている。『知能』が圧倒的に足りないのだ。その状態で彼に近づくと好感度が下がってしまう。ここはゲームではなく現実世界だからパラメータこそないが、現実の彼の反応もおそらく変わらない。
「それよりメル! 久しぶりに手合わせしようぜ!」
「……いいわよ」
(ヨッシャー!)
心の中でガッツポーズだ。学園に入学すると、女子は剣術の授業がないので本当に久しぶりになる。
「そんな! 私とのデート中なのに!」
「……デート? 平民の女の子は剣の稽古もデートになるのか?」
確かに。でもゲームではデートカウントだったんだよね、訓練場で剣の訓練……。攻略キャラに何気なくそんな疑問を投げかけられると、ヘビーユーザー的に心にくるものがある。
「まあ俺達の手合わせ見とけって! 参考になるからよ」
「……もういい」
そう言うと1人で帰って行く。それをジルは止めることなく、
「おう! うまく教えられなくて悪かったな!」
と言って見送った。
ギリッと歯軋りの音が聞こえた。
「やっぱ俺、人に教えんのうまくねーわ」
「そーかもね」
(そう思うなら二度と訓練場にアリスを連れて来んなよ!)
手合わせの方は地道に剣の訓練をしていたおかげで、悲惨な結果にはならなかった。
「6 対 4かよ~もう少し引き離せると思ったんだがな」
「次は勝ち越すからね!」
「はぁ~剣術くらい譲れよな~!」
(もっと練習量増やさなきゃ……)
成長期とは恐ろしい。圧倒的に力負けし始めてしまっている。これが筋肉の差……もっと技術を磨かなければ。
「……手首、大丈夫か?」
気づいてくれていたのか。最後の手合わせでジルの剣をうまく受けられず少し痛めてしまったのだ。
「このくらい大丈夫よ」
手をヒラヒラさせてみせる。
「あ! こら動かすな!」
そう言って腕を掴まれた。今回、ジルの手は冷たくて気持ちがいい。
「こ、これは治療だからな!」
「わわわかってる!」
氷の魔法で冷やしてくれた。冷たさの加減がうまいのは、いつも自分で冷やしているからかもしれない。しょっちゅう訓練しているし。
「ジルにとってデートってどんなんなの?」
触れ合ったまま、なんだか間がもたなくて聞いてみたが、我ながら踏み込んだ質問かもしれない。
「そんなもんに興味があんのかよ」
ニヤつきながら顔を覗き込んでくる。なんだか少し嬉しそうだ。
「だ、だって、さっきジルはデートじゃないって言ってたけど、女の子を訓練場に連れてきてるの初めて見たし……邪魔されたくないって言ってたじゃん」
ジルはモテる。ゲームでも現実でも、訓練場に行きたがる女子はこれまでも大勢いたが、集中したいからと全て断っている。だからゲーム内のヒロインは特別だった。ジルにとって大切な空間を共有できる相手なのだ。
「あー……最近、ルークのやつが付き纏われて大変だって言うから代わってやったんだよ」
「そうなの!?」
「そーだよ。リーシャから聞いてねーのか?」
首を横に振る。何も聞いていない。リーシャも知らないのだろうか。
リーシャの婚約者である第二王子ルークは優しく穏やかだ。争いは好まない。『ラブコレ』内では2番目に攻略が簡単なキャラだ。同じく王族の第一王子との関係に戸惑っていた。彼らは腹違いの兄弟なのだ。
「デートか。したことねーからわかんねぇけどよ。誰とするかが1番大事なんじゃねーの」
「ありきたり~」
「あ! なんだそれ! 人が真面目に答えたのに!」
真面目な答えだったのか! と言うことは、好きな人と一緒にいることが大事ってことか?
(私のこと好きになれ~好きになれ~)
こっそり何度も心で唱える。せっかく手に触れてくれているし。
「じゃあメルはどうなんだよ!?」
「えっ」
「えっじゃねぇ! ちゃんと答えろよ」
どうしよう。ジルがいてくれたらどこで何してもいいんだけど。って、それじゃあジルと同じじゃないか!
「す、好きな人との楽しい時間って感じ?」
(うわー! 恥ずかしいー!)
「オレとほとんど一緒じゃねーか」
「私の方がちゃんとしてまーす!」
「どこがだよ!」
そう言って笑った。ああ、いつまでもこんなくだらない会話をしていたいな。
「それよりメル! 久しぶりに手合わせしようぜ!」
「……いいわよ」
(ヨッシャー!)
心の中でガッツポーズだ。学園に入学すると、女子は剣術の授業がないので本当に久しぶりになる。
「そんな! 私とのデート中なのに!」
「……デート? 平民の女の子は剣の稽古もデートになるのか?」
確かに。でもゲームではデートカウントだったんだよね、訓練場で剣の訓練……。攻略キャラに何気なくそんな疑問を投げかけられると、ヘビーユーザー的に心にくるものがある。
「まあ俺達の手合わせ見とけって! 参考になるからよ」
「……もういい」
そう言うと1人で帰って行く。それをジルは止めることなく、
「おう! うまく教えられなくて悪かったな!」
と言って見送った。
ギリッと歯軋りの音が聞こえた。
「やっぱ俺、人に教えんのうまくねーわ」
「そーかもね」
(そう思うなら二度と訓練場にアリスを連れて来んなよ!)
手合わせの方は地道に剣の訓練をしていたおかげで、悲惨な結果にはならなかった。
「6 対 4かよ~もう少し引き離せると思ったんだがな」
「次は勝ち越すからね!」
「はぁ~剣術くらい譲れよな~!」
(もっと練習量増やさなきゃ……)
成長期とは恐ろしい。圧倒的に力負けし始めてしまっている。これが筋肉の差……もっと技術を磨かなければ。
「……手首、大丈夫か?」
気づいてくれていたのか。最後の手合わせでジルの剣をうまく受けられず少し痛めてしまったのだ。
「このくらい大丈夫よ」
手をヒラヒラさせてみせる。
「あ! こら動かすな!」
そう言って腕を掴まれた。今回、ジルの手は冷たくて気持ちがいい。
「こ、これは治療だからな!」
「わわわかってる!」
氷の魔法で冷やしてくれた。冷たさの加減がうまいのは、いつも自分で冷やしているからかもしれない。しょっちゅう訓練しているし。
「ジルにとってデートってどんなんなの?」
触れ合ったまま、なんだか間がもたなくて聞いてみたが、我ながら踏み込んだ質問かもしれない。
「そんなもんに興味があんのかよ」
ニヤつきながら顔を覗き込んでくる。なんだか少し嬉しそうだ。
「だ、だって、さっきジルはデートじゃないって言ってたけど、女の子を訓練場に連れてきてるの初めて見たし……邪魔されたくないって言ってたじゃん」
ジルはモテる。ゲームでも現実でも、訓練場に行きたがる女子はこれまでも大勢いたが、集中したいからと全て断っている。だからゲーム内のヒロインは特別だった。ジルにとって大切な空間を共有できる相手なのだ。
「あー……最近、ルークのやつが付き纏われて大変だって言うから代わってやったんだよ」
「そうなの!?」
「そーだよ。リーシャから聞いてねーのか?」
首を横に振る。何も聞いていない。リーシャも知らないのだろうか。
リーシャの婚約者である第二王子ルークは優しく穏やかだ。争いは好まない。『ラブコレ』内では2番目に攻略が簡単なキャラだ。同じく王族の第一王子との関係に戸惑っていた。彼らは腹違いの兄弟なのだ。
「デートか。したことねーからわかんねぇけどよ。誰とするかが1番大事なんじゃねーの」
「ありきたり~」
「あ! なんだそれ! 人が真面目に答えたのに!」
真面目な答えだったのか! と言うことは、好きな人と一緒にいることが大事ってことか?
(私のこと好きになれ~好きになれ~)
こっそり何度も心で唱える。せっかく手に触れてくれているし。
「じゃあメルはどうなんだよ!?」
「えっ」
「えっじゃねぇ! ちゃんと答えろよ」
どうしよう。ジルがいてくれたらどこで何してもいいんだけど。って、それじゃあジルと同じじゃないか!
「す、好きな人との楽しい時間って感じ?」
(うわー! 恥ずかしいー!)
「オレとほとんど一緒じゃねーか」
「私の方がちゃんとしてまーす!」
「どこがだよ!」
そう言って笑った。ああ、いつまでもこんなくだらない会話をしていたいな。
21
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる