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7 謝罪

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「この間は悪かったな」

 学園で再会するや否や開口一番、ジルが謝ってきた。あのパーティの日から会っていなかったので、一瞬なんのことか分からなかった。

「ほら! ドリンク取りに行ってそのままだったろ!」
「ああ、あのこと! ジルって律儀ね」

 そんなこと気にならないくらい、あの日はとても楽しかったのだ。ジルは私が怒っていないのが少し不満そうだった。

「気にかけてくれてありがとう。おたくの喧嘩の様子は見えていたから」

 そう伝えると、バツが悪そうに頭を掻いていた。

「大変そうだったわね」
「……そっちは?」
「家に帰って大喧嘩よ」
「やっぱりか」

 私はやはり、ジルと踊ったことを責められた。適当にあしらっていたところ、一族の裏切り者だとまで言われたので流石に頭に来た。

「私の代ではジルの家と仲良くしますからね!」

 嫡子は弟だが、私よりジルと仲はいい。それも両親は気に入らないようだった。

「そんなこと言ったのかよ!」

 声を殺して笑っていたが、とても嬉しそうなのがわかる。ジルも同じ考えのようだ。

「だってそうでしょ! 300年も前のことをいつまでも愚痴愚痴と……いい加減にしてほしいわ」

 我が家とジルの家の諍いは300年前に行われた剣術大会で引き分けに終わったことをきっかけに始まったと言われている。ハッキリ言って小さな出来事だ。それが長年どう言うわけか、ライバル心どころか敵意に近いものに変わっていった。

「そうだな。俺らの代でそれも終わりだ」

 そう言って手を差し出した。私は握手だと思ってその手を握り返す。

「なぁメル。お前俺のことどう思う?」
「へ?」
「俺が男に見えるか?」
「……? 見えるけど?」
「よかった」

 そうしてそのまま手の甲を自分の方に引き寄せキスをされた。

「っ!?」

(何!? 男に見えるかって性別じゃなくて異性としてって意味だったの!?)

 手の甲にキスって……急すぎる! 心も頭も追いつかない。

「メル……俺……」

 ドキドキも最高潮のその時、ジルの背後から甲高い声が聞こえた。

「ジルゥ~! 探したよぉ!」

 そう言ってアリスはジルと私を引き離した後、いつものように彼の腕に擦り寄る。

(んなっ! この女!)

 絶対にわかっててやっている。まあ逆ハールート成立にはジルがいるのに、そのジルが他の女に口付け(手の甲だけど)してたら焦るか。
 そう自分で考えるだけで沸騰しそうに顔が赤くなる。

「ねぇ、先生呼んでたよぉ! 一緒に行こ?」

 そのまま腕を掴んでジルを引っ張って行こうとした。
 だがジルはハッキリとそれを拒絶する。

「悪りぃけど、後で行くって伝えてくれねーか」
「ええ!? ダメだよぅ! 先生急いでたよ?」

 ジルの拒絶に全く動じることなく返事をしている。慣れているのか?

「私が怒られちゃうよぉ」

 そう言って泣くふりまでし始めてしまった。ジルは第一王子エドワードと同じく、女の子の涙に弱い。弱いと言うより扱いがわからないようだ。

「わかった。行く」

 名残惜しそうにこちらの方を向いて、

「またあとで時間いいか?」
「ひゃいっ!」

 動揺のあまり返事がおかしくなってしまった。

 そのままぼーっと2人を見送り、その後もその場で立ち尽くしてしまった。
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