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9 不健全
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扉は鍵が掛けられていて開かない。ここで手間取っている間も扉の向こうでは揉める声が絶え間なく聞こえる。
「仕方ないわね!」
軽いボン! という音が鳴り、私は魔術を使って扉を破壊した。本当は校舎内での魔術は禁止されているのだが、緊急事態だ。
「メル!」
「リーシャ!」
音で振り向いて少し情けない声を上げたのは、ルークとジルだった。2人らしくない。
室内には他に宰相の息子ライル、生徒会長のアレックス、若手教師のリード、そして隠しキャラの学園庭師ジェイ……攻略キャラクターが勢ぞろいだ。
(あれ? エドワードは?)
「アリス様!? ななななななんて格好を……!」
私より先に反応したのは、リーシャだった。いつもの冷静なキャラクターはどこへやら、ものすごく動揺している。
攻略キャラクター達はことごとく椅子に縛られており、全員身動き一つとれなくなっていた。そしてアリス……アリスは……
「全裸って……」
乙女ゲーム『ラブコレ』は、R指定のない、健全なゲームだ。甘々なシーンは多々あれど、どのキャラクターも抱きしめてキスで終わる。裸体は出てこない。だからなのか、ここにいる男子全員、この手のことにあまり免疫がない。特にエドワードはゲーム内では純真キャラだからか、ヒロインの太ももを見るだけで顔が真っ赤になっていた。こちらのエドワードもそう変わりはなさそうだ。
「キャー! 何しに来たのよ!!!」
キャーって……この状況、自分で全部脱いだんでしょうが……。
「た、助けてくれ!」
半泣き状態のエドワードが、こちらを向いて必死に懇願している。彼は今、床に寝かせられて、真っ裸のアリスに服を脱がされている途中だった。
「エドワードどうして!? 私の事好きって言ったじゃん!」
「嫌いなんて言えなかっただけだ! いいから離れろよ!」
優しくないエドワードを見るのは初めてだ。
「離れなさい!!!」
リーシャがすごむ。
「ふん! やってみれば。魔術なんて使ったらエドワードに当たるわよ!」
なんて言っているが、かなり急いでエドワードの服を脱がし始めた。というか、破っている。どうやらこの状況でも無理やり既成事実を作るつもりのようだ。
(いったいどんな神経してたらこんなことができるわけ!?)
「うわぁあぁぁ!」
「殿下、失礼します」
エドワードの叫び声と同時に、私は思いっきりリーシャにタックルした。
「キャアッ!」
「いった……」
ドン! という音と共に、アリスと一緒に床に倒れる。そのすきにリーシャがエドワードを縛っていたロープを外そうとしたが……。
「魔法避けがしてあるのですね」
「どこでそんな」
「離しなさいよ!」
今度は私の下でアリスが叫んでいる。
(ああ、格闘術も訓練していてよかった~)
ジルと張り合うために学んでいたことが彼を助けるのに役立つとは。まあ私の場合は格闘というより護身術だけど、アリスを抑え込むことができたのでどっちでもいいか。
「リーシャ! その余ってるロープを!」
念のためにアリスにも魔法が使えないように魔法避けのロープを使う。
「痛い! 痛いってば!」
そんな言葉は無視だ。ぎゅうぎゅうに縛り上げてやった。
とりあえず、危機は去ったと言っていいだろう。アリスはまだ大騒ぎしているが。
「全員私の裸見たんだから責任とりなさいよね!」
「このこと言いふらしてやるんだから! 全員が私を裸にして迫ったってね!!」
「私は貴重な光魔法の持ち主よ! こんな風に扱ってあとで覚えてなさい!!!」
全員聞こえているが何も反応しない。私はカーテンを破って、アリスにかぶせた。そしてエドワードにも。
「すまない……」
エドワードはポロポロと涙をこぼしていた。これがトラウマにならないといいんだが。そっと涙をぬぐって背中をさすることしかできなかった。
他のメンバーも皆まだ半泣きでいる。そろいもそろって顔面が真っ青になっていた。
「メル……」
ジルもまだ不安そうにこちらを見ている。エドワードに断りを入れて、今度はジルの肩をさすった。
「情けない所みせてごめん……」
「そんなことないよ。逆の立場だったらそうは思わないでしょ?」
ジルはゆっくり頷いた。
「こっちです!」
助けを呼びに行ったリーシャの声がした。
「仕方ないわね!」
軽いボン! という音が鳴り、私は魔術を使って扉を破壊した。本当は校舎内での魔術は禁止されているのだが、緊急事態だ。
「メル!」
「リーシャ!」
音で振り向いて少し情けない声を上げたのは、ルークとジルだった。2人らしくない。
室内には他に宰相の息子ライル、生徒会長のアレックス、若手教師のリード、そして隠しキャラの学園庭師ジェイ……攻略キャラクターが勢ぞろいだ。
(あれ? エドワードは?)
「アリス様!? ななななななんて格好を……!」
私より先に反応したのは、リーシャだった。いつもの冷静なキャラクターはどこへやら、ものすごく動揺している。
攻略キャラクター達はことごとく椅子に縛られており、全員身動き一つとれなくなっていた。そしてアリス……アリスは……
「全裸って……」
乙女ゲーム『ラブコレ』は、R指定のない、健全なゲームだ。甘々なシーンは多々あれど、どのキャラクターも抱きしめてキスで終わる。裸体は出てこない。だからなのか、ここにいる男子全員、この手のことにあまり免疫がない。特にエドワードはゲーム内では純真キャラだからか、ヒロインの太ももを見るだけで顔が真っ赤になっていた。こちらのエドワードもそう変わりはなさそうだ。
「キャー! 何しに来たのよ!!!」
キャーって……この状況、自分で全部脱いだんでしょうが……。
「た、助けてくれ!」
半泣き状態のエドワードが、こちらを向いて必死に懇願している。彼は今、床に寝かせられて、真っ裸のアリスに服を脱がされている途中だった。
「エドワードどうして!? 私の事好きって言ったじゃん!」
「嫌いなんて言えなかっただけだ! いいから離れろよ!」
優しくないエドワードを見るのは初めてだ。
「離れなさい!!!」
リーシャがすごむ。
「ふん! やってみれば。魔術なんて使ったらエドワードに当たるわよ!」
なんて言っているが、かなり急いでエドワードの服を脱がし始めた。というか、破っている。どうやらこの状況でも無理やり既成事実を作るつもりのようだ。
(いったいどんな神経してたらこんなことができるわけ!?)
「うわぁあぁぁ!」
「殿下、失礼します」
エドワードの叫び声と同時に、私は思いっきりリーシャにタックルした。
「キャアッ!」
「いった……」
ドン! という音と共に、アリスと一緒に床に倒れる。そのすきにリーシャがエドワードを縛っていたロープを外そうとしたが……。
「魔法避けがしてあるのですね」
「どこでそんな」
「離しなさいよ!」
今度は私の下でアリスが叫んでいる。
(ああ、格闘術も訓練していてよかった~)
ジルと張り合うために学んでいたことが彼を助けるのに役立つとは。まあ私の場合は格闘というより護身術だけど、アリスを抑え込むことができたのでどっちでもいいか。
「リーシャ! その余ってるロープを!」
念のためにアリスにも魔法が使えないように魔法避けのロープを使う。
「痛い! 痛いってば!」
そんな言葉は無視だ。ぎゅうぎゅうに縛り上げてやった。
とりあえず、危機は去ったと言っていいだろう。アリスはまだ大騒ぎしているが。
「全員私の裸見たんだから責任とりなさいよね!」
「このこと言いふらしてやるんだから! 全員が私を裸にして迫ったってね!!」
「私は貴重な光魔法の持ち主よ! こんな風に扱ってあとで覚えてなさい!!!」
全員聞こえているが何も反応しない。私はカーテンを破って、アリスにかぶせた。そしてエドワードにも。
「すまない……」
エドワードはポロポロと涙をこぼしていた。これがトラウマにならないといいんだが。そっと涙をぬぐって背中をさすることしかできなかった。
他のメンバーも皆まだ半泣きでいる。そろいもそろって顔面が真っ青になっていた。
「メル……」
ジルもまだ不安そうにこちらを見ている。エドワードに断りを入れて、今度はジルの肩をさすった。
「情けない所みせてごめん……」
「そんなことないよ。逆の立場だったらそうは思わないでしょ?」
ジルはゆっくり頷いた。
「こっちです!」
助けを呼びに行ったリーシャの声がした。
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