【完結】悪役令嬢はヒロインの逆ハールートを阻止します!

桃月とと

文字の大きさ
10 / 11

10 やぶれかぶれ

しおりを挟む
 暑さも弱まり、そろそろ本格的な秋が始まる。あの事件からもう1ヶ月以上が経った。あれだけ騒ぎになった事件だが、内容が内容だけに真実が公表されることはなかった。

「あんた! 転生者でしょ!!!」

 私になら理由を話すと言ったアリスに呼び出される形で、彼女と2人きりの部屋にいる。一応、彼女の腕は魔法避けのロープで結ばれたままだ。

「こんなことしていいと思ってんの!?」
「……こんなこと?」

 『こんなこと』をやらかしてるのはコイツ自身だと思うが。

「原作ゲームへの冒涜よ!!? わかってるの!?」
「は?」
「大人しくしょっぱい悪役令嬢演じてなさいよ!」

(マジで何言ってんの?)

 さっきから薄ら笑いを浮かべているアリスの顔から狂気を感じ、今の台詞が本気なのだとわかった。

「それで何故あのようなことをされたのですか?」
「はぁ?」
「それを聞くために呼ばれたのですが」

 あの後、攻略キャラクターはメンタルがボロボロになってしまって大変だった。あまりにもショックが大きかったのだ。
 彼らだってその手の教育を受けてこなかったわけではない。来たるべき日のためにある程度知識は持っている。
 だがそれは、ある日呼び出されたと思ったら睡眠薬を嗅がされ、縛られた上でよく知らない女が裸で迫ってくることを想定したものではない。

(原作の冒涜? コイツがやったことの方が冒涜だっつーの)

 健全乙女ゲームだぞ。それを全裸で迫るなんて……大事な世界観を壊しておいてどの口が言ってるんだ。

「あんただってわかるでしょ!? 逆ハールートは難しいのよ!……それでちょっと焦っただけよ」
「焦った?」
「だってゲームの4分の1終わったっていうのに誰もプレゼントくれないんだもん!」

 『ラブコレ』ゲーム内では、各キャラクターの好感度が上がるとプレゼントをもらえるのだ。ほとんどがパーティで身に着けるようなアイテムで、誰からもらった物を付けていくかによってキャラクターの好感度が変わっていくというものだった。

(逆ハールートはそのバランスが難しいのよね)

 全員の好感度を上げないといけないが、なんせ人数が多い。基本的には初期にエドワードのような攻略しやすいキャラクターの好感度を上げておき、あとから一気に難易度の高いキャラクターを攻めるのだ。
 焦って全裸なんて、やぶれかぶれにしても酷すぎる。

「プレゼントが欲しくって全裸で殿方に迫ったのですか?」
「私とヤッて落ちない男なんていないわよ。手っ取り早く全員の好感度上げようと思っただけ」

 好感度って何か知ってる? どういう思考回路でこの結論にいたったのか。

「だいたいエドワードレベルで全然私に落ちないなんて変なのよ!」
「それは貴女に魅力がないからではないですか?」
「はあ? そんなわけないでしょ!? この顔にこの能力! 私はこの世界のヒロインなのよ!?」

 どうやらそのに全幅の信頼をおいているようだ。

(私が悪役令嬢やってない時点でその設定は変えられるものだって気が付くべきよね~)

 私が全く理解できないという表情をしているからか、アリスはどんどんイラついてきたようだ。

「だいたいあんたがまともに悪役令嬢やらないからでしょ!?」
「私に悪役令嬢になって欲しいのですか?」
「当たり前でしょ! 全然可哀想なヒロインになれなかったじゃない! どれだけ自分がイベント潰したかわかってるわけ!?」

 これを本気で言っているから恐ろしい。椅子から立ち上がって顔を歪ませ怒鳴り散らし始めた。

「エドワード達が私を愛するチャンスをあんたが奪ったのよ!!! 今からでもどうにかしろ!!!」
「どうにかしろと言われましても。皆様、貴女に怯えていらっしゃいますし」
「そんなわけない! 皆私に会いたいのにあんたが邪魔してるんでしょ!!?」
「あら、それは貴女の望む悪役令嬢がしそうなことではないですか」

 いい加減、こいつと話すのは無駄なようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる! 前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。 「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。 一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……? これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...