【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

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 アランが馬車を降りると、豪華な外観の店からこれまた高そうなジャケットを着た店主が飛び出してきた。ここはどうやら有名な宝石商の店らしい。店内は広く、大きなウィンドウガラスには煌びやかな宝石がディスプレイされ、中にいる人達の装いも美しかった。

「大賢者様! ようこそいらっしゃいました! 大変光栄にございます」
「急に悪いな。可愛い弟子に帝都土産をと思って寄らせてもらった」

 そう言ってアランは馬車から降りるレミリアの手を取った。嫌がっていた割に、大賢者の役が板についている。

「おお! こちらが噂の一番弟子レミリア様でございますか! お伺いしていたよりずっとお美しい!」
「恐れ入ります」

 この店主の言葉が本心かおべっかかはわからなかったが、レミリアは確かに誰が見ても美しい女性だった。
 ジークボルトが用意してくれた衣装も令嬢が着るようなドレスではなかった。しかし賢者の弟子に相応しい装いで、ローブには細かな金の刺繍が施され、胸元には大きな宝石が輝き、一目で一流のものだとわかった。

(流石帝都は噂が回るのが早いわね~)

 どうやら既にこの街ではレミリアのことは知れ渡っているらしい。おそらくこの間来た高官達が前もって情報を流したのだろう。アレンはジークボルトの影武者なので世間的には弟子とカウントされていない。彼女は大賢者の一番弟子として、この国で一躍時の人となっているのだ。

「おい! 不敬だぞ店主! あの方をどなただと……なっ!?」

 店に入った途端に文句にやってきたのはアルベルトの従者グレンだった。どうやら主人のアルベルトを放って別の客の接客に行ったのが気に入らなかったらしい。

(本当は城の大広間でバーン! って登場してやりたかったところだけど……)

 ニヤケ顔のアレンを見て、つくづくアレンはジークボルトの弟子なのだと実感した。

「あら、相変わらず怒りっぽいのねグレン。それだから聖女様に選ばれなかったのではなくて?」
「お知り合いで?」
「ああ、気になさらないで。貴方もこのような人達を相手にするなんて大変ですね」
「いやぁ~はは!」

 店主は笑って誤魔化した。どうやら偉そうにアレやコレやと注文をつけていたらしい。少し離れた所にいる店員は苦笑していたし、遠巻きにアルベルト達を見ている客も眉間に皺を寄せていた。

「ど! どどどっ! どうしてここに……!?」

 やっと絞り出した言葉がそれだった。レミリアは自分の嫌味が不発に終わって少々悔しい。

「どうしたんだグレ……!!?」
「ねぇねぇアル~あそこの青い石綺麗……えっ!!?」

 揃いも揃って同じ反応だ。口をぽかんと開けて固まっている。

(あーいいねいいね! この間抜けづら!)

 チラリと横目で見るとアレンが唇を噛み締めて震えている。期待通りだったらしい。

「貴様! 何故ここに!? 何故生きている!?」

(コイツこんなに馬鹿だったっけ?)

「私の学園での成績をお忘れですか? あの国を追放されたからといって魔物の森で死ぬとでも? だいたい飛竜に乗ってたの見えていませんでしたか?」

 呆れ顔をしたレミリアの応答にアルベルトはワナワナと震え始めた。聖女ユリアはアレンの顔をじっと見つめている。彼女の好みなのだろう。彼と目が合うとぽっと頬が赤くなっているのがわかった。

「ああそうか、君が噂の……プッ……」

 アレンが口を抑えて笑いを堪えている。最初は相手を煽ろうとしたのだろうが、途中で本気で面白くなってしまったらしい。

「フッ……まあいい。それよりレミリア、何か欲しいものはあるか? 店主、悪いが彼女に似合いそうなものを見せてもらえるかな?」
「はい。とは言ってもレミリア様の美しさがあればどの宝石も見劣りしてしまいそうですが」

 そう言ってマリロイド王国組を無視して移動しようとした。

「な、なんて店だ!!! 俺達を苔にする気か!」
「恐れ入りますが、お客様は当店と相性が悪いようですのでお引き取り願えますでしょうか」
「なんだと!?」

 店主はかなり強気の態度だ。一国の王子に対して大丈夫なのかと心配になる。

「そうだな。私も……他の客達も見ていて不快な連中だ。さっさと出ていってもらおう」

 アレンはそう言って指をくるりと回した。

「な! なんだこれは!?」
「きゃあ!」

 アルベルト、グレン、それにユリアの体が操り人形のような動きで出口に向かって言った。

「こ! 後悔させてやるからな!!!」

 最後のセリフがいかにもショボい悪役のそれで、またアレンの口元が笑いを堪えて歪んでいた。
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