11 / 63
11 井の中の蛙
しおりを挟む
パーティでは予想通り、多くの要人達に取り囲まれる事になった。アレンが影武者と知っているベルーガ帝国以外の国々の貴族や高官の相手が主だった。レミリアは王太子の婚約者としてそれなりにパーティには出慣れているつもりだったが、これほど多くの国から人々が集まっているのは見たことがなかった。
(井の中の蛙だったってことね)
前世の記憶があるからといって油断してはいけないと改めて自戒したのだった。
予想外だったのは、アルベルトの父、現マリロイド国王ギルバートがレミリアの姿を見て腰を抜かさんばかりに驚いた事だ。アルベルトがひた隠しにした為、王にまで彼女の情報が伝わっていなかった。
「こんな重要な情報すら入手出来ていないなんて」
各国から集まった貴族や高官達がヒソヒソと話す声を聞いて、ギルバートは恥と怒りで顔が真っ赤になっていた。しかし人々のヒソヒソ話はなかなか納まらない。
「何ですあの恰好は。ルヴィア様が亡くなったことご存知ないのかしら」
「あれじゃあまるで娼婦じゃないか」
「昨日公爵家の宝石店で暴れていたらしいですわ」
「まぁなんて野蛮な……やはり魔物の森に取り囲まれていると中の住人も凶暴になるのかしら」
アルベルトもユリアもなんともこの場にそぐわないド派手な恰好をしていた。2人とも白い衣装で合わせていたが、おそらく婚約したことを国外へアピールするためだったのだろう。ユリアに至っては胸も背中も足もかなり露出されており、会場中の視線を悪い意味で独り占めしていた。
「フフ! 皆芋臭いドレスね」
「……。」
流石にアルベルトとグレンは自分達が場違いな恰好をしてきたとわかったようだ。自分達以外誰もいつものパーティのように煌びやかな服装をしていない。あえて暗いカラーのドレスを着て、露出を控えているのがわかる。喪に服しているのだ。第二王子は今回のパーティを欠席していた。
「第二皇子の婚約者ルヴィア様が最近お亡くなりになったそうです」
グレンがアルベルトにそう告げると、額に手を当ててため息をついた。
「どうして俺達には知らされていなかったんだ」
「それが……ユリア様にはお知らせしたと言われました……」
彼らは予定より1週間も早くベルーガ帝国に来ていた。図々しくも皇宮の来賓室に居座り好き勝手観光していた。たまたまアルベルトとグレンが席を外している際に、ルヴィアが亡くなったことを知らされたユリアは、
「ふーん。わかったわ」
と答えたそうだ。
「ユリア、なんで教えてくれなかったんだい?」
「え? だってパーティとは関係なくない?」
本当にわからないという表情だ。彼女は今日のパーティを楽しみにしていた。各国のイケメン達をまた自分の虜に出来ると思い込んでいる。
「ねえ見て、皆こっちを見てる……なんでだろ?」
目をパチパチとさせてアルベルトとグレンに尋ねる。いつものように、君が誰よりも可愛いからさ、と言ってくれるのを待っているが、2人は答えない。
大方のお偉方との挨拶が終わったレミリアは、今度は若い男性に大人気だった。ほとんどが他国の王族や高位貴族の息子だった。これほど男に取り囲まれたことは前世でも今世でもない。
(モテ期キターーーーーー!)
内心ウハウハとした高揚感に溢れていたが、彼女が長年培ってきた『王太子の婚約者である公爵令嬢』という今はない肩書による自制心が働き、見事な立ち振る舞いが周囲の評価を高く上げた。
「やはり婚約破棄は王太子側に原因があったのですね」
「あの国の司法はどうなっているんだ……あんな素晴らしい令嬢が国外追放だんて」
「やはり大賢者の弟子ともなるとかなりの力量があるのだろうな」
「美しい上になんて聡明な方なんだ」
マリロイド王国から来た者達は、皆一様に恥ずかしい思いをしていた。乙女ゲームの登場キャラ以外、でかい魚を逃したことがわかっていたから、なおのこと悔しい思いもあった。
アルベルトが父親に呼び寄せられ、アレンとレミリアが別々の場所でそれぞれ対応し始めたころ、ついにあの女が動く。そう乙女ゲームのヒロイン、ユリアだ。
「ねぇねぇ大賢者様~少しお話いたしませんかぁ?」
「私達、並ぶと絵になるんですって。どう言う意味かなぁ?」
「きゃっ! ヒールに慣れてなっくて……ごめんなさぁい」
(あんのクソアマ!!!)
アレンの腕に胸を押し当て始めたユリアをみてレミリアが駆け寄ろうとしたところ、アレンの方が手を上げて制した。そしてウィンクする。口元をキュッときつく結び、笑うのを我慢しているのがわかった。
(あ……面白がってる)
「ねぇ! 魔法にて照らされた庭園がとても綺麗なんだって! あっちで見ましょうよ!」
そういって、アレンの腕を引っ張って強引にバルコニーへと連れて行った。
(井の中の蛙だったってことね)
前世の記憶があるからといって油断してはいけないと改めて自戒したのだった。
予想外だったのは、アルベルトの父、現マリロイド国王ギルバートがレミリアの姿を見て腰を抜かさんばかりに驚いた事だ。アルベルトがひた隠しにした為、王にまで彼女の情報が伝わっていなかった。
「こんな重要な情報すら入手出来ていないなんて」
各国から集まった貴族や高官達がヒソヒソと話す声を聞いて、ギルバートは恥と怒りで顔が真っ赤になっていた。しかし人々のヒソヒソ話はなかなか納まらない。
「何ですあの恰好は。ルヴィア様が亡くなったことご存知ないのかしら」
「あれじゃあまるで娼婦じゃないか」
「昨日公爵家の宝石店で暴れていたらしいですわ」
「まぁなんて野蛮な……やはり魔物の森に取り囲まれていると中の住人も凶暴になるのかしら」
アルベルトもユリアもなんともこの場にそぐわないド派手な恰好をしていた。2人とも白い衣装で合わせていたが、おそらく婚約したことを国外へアピールするためだったのだろう。ユリアに至っては胸も背中も足もかなり露出されており、会場中の視線を悪い意味で独り占めしていた。
「フフ! 皆芋臭いドレスね」
「……。」
流石にアルベルトとグレンは自分達が場違いな恰好をしてきたとわかったようだ。自分達以外誰もいつものパーティのように煌びやかな服装をしていない。あえて暗いカラーのドレスを着て、露出を控えているのがわかる。喪に服しているのだ。第二王子は今回のパーティを欠席していた。
「第二皇子の婚約者ルヴィア様が最近お亡くなりになったそうです」
グレンがアルベルトにそう告げると、額に手を当ててため息をついた。
「どうして俺達には知らされていなかったんだ」
「それが……ユリア様にはお知らせしたと言われました……」
彼らは予定より1週間も早くベルーガ帝国に来ていた。図々しくも皇宮の来賓室に居座り好き勝手観光していた。たまたまアルベルトとグレンが席を外している際に、ルヴィアが亡くなったことを知らされたユリアは、
「ふーん。わかったわ」
と答えたそうだ。
「ユリア、なんで教えてくれなかったんだい?」
「え? だってパーティとは関係なくない?」
本当にわからないという表情だ。彼女は今日のパーティを楽しみにしていた。各国のイケメン達をまた自分の虜に出来ると思い込んでいる。
「ねえ見て、皆こっちを見てる……なんでだろ?」
目をパチパチとさせてアルベルトとグレンに尋ねる。いつものように、君が誰よりも可愛いからさ、と言ってくれるのを待っているが、2人は答えない。
大方のお偉方との挨拶が終わったレミリアは、今度は若い男性に大人気だった。ほとんどが他国の王族や高位貴族の息子だった。これほど男に取り囲まれたことは前世でも今世でもない。
(モテ期キターーーーーー!)
内心ウハウハとした高揚感に溢れていたが、彼女が長年培ってきた『王太子の婚約者である公爵令嬢』という今はない肩書による自制心が働き、見事な立ち振る舞いが周囲の評価を高く上げた。
「やはり婚約破棄は王太子側に原因があったのですね」
「あの国の司法はどうなっているんだ……あんな素晴らしい令嬢が国外追放だんて」
「やはり大賢者の弟子ともなるとかなりの力量があるのだろうな」
「美しい上になんて聡明な方なんだ」
マリロイド王国から来た者達は、皆一様に恥ずかしい思いをしていた。乙女ゲームの登場キャラ以外、でかい魚を逃したことがわかっていたから、なおのこと悔しい思いもあった。
アルベルトが父親に呼び寄せられ、アレンとレミリアが別々の場所でそれぞれ対応し始めたころ、ついにあの女が動く。そう乙女ゲームのヒロイン、ユリアだ。
「ねぇねぇ大賢者様~少しお話いたしませんかぁ?」
「私達、並ぶと絵になるんですって。どう言う意味かなぁ?」
「きゃっ! ヒールに慣れてなっくて……ごめんなさぁい」
(あんのクソアマ!!!)
アレンの腕に胸を押し当て始めたユリアをみてレミリアが駆け寄ろうとしたところ、アレンの方が手を上げて制した。そしてウィンクする。口元をキュッときつく結び、笑うのを我慢しているのがわかった。
(あ……面白がってる)
「ねぇ! 魔法にて照らされた庭園がとても綺麗なんだって! あっちで見ましょうよ!」
そういって、アレンの腕を引っ張って強引にバルコニーへと連れて行った。
45
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
追放された悪役令嬢は、辺境の谷で魔法農業始めました~気づけば作物が育ちすぎ、国までできてしまったので、今更後悔されても知りません~
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リーゼリット・フォン・アウグストは、婚約者であるエドワード王子と、彼に媚びるヒロイン・リリアーナの策略により、無実の罪で断罪される。「君を辺境の地『緑の谷』へ追放する!」――全てを失い、絶望の淵に立たされたリーゼリット。しかし、荒れ果てたその土地は、彼女に眠る真の力を目覚めさせる場所だった。
幼い頃から得意だった土と水の魔法を農業に応用し、無口で優しい猟師カイルや、谷の仲間たちと共に、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。やがて、その成功は私欲にまみれた王国を揺るがすほどの大きなうねりとなり……。
これは、絶望から立ち上がり、農業で成り上がり、やがては一国を築き上げるに至る、一人の令嬢の壮大な逆転物語。爽快なざまぁと、心温まるスローライフ、そして運命の恋の行方は――?
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる