16 / 63
16 条件
しおりを挟む
「いいよいいよ~! 好きにして!」
(ノリ軽!)
通信用のネックレスを使ってジークボルトに連絡を取ると、例の如く軽く許可がおりた。と言うより、そんなことなどどうでもいいのだろう。
「もう君は自由だ。好きに生きていいんだよ?」
「え?」
「君は僕の弟子だけど、君は自立した1人の人間だ。僕は君を信用しているし、君の判断に任すよ」
「そ、そんな裁量……前世でも貰ったことないです……」
それもこんな国のトップが喉から手が出るほど欲しがっているものを、自分の心一つでどうするか決めるなんて。この大きな決断が、レミリアは少し怖かったのだ。
「アハハ! 前世まで出てくるのか! それならまあ今世の修行だと思って頑張ってよ!」
「……はい」
(これも修行か……)
そう考えると、根が真面目な彼女はなんだか少しこの問題に向き合うやる気が出てきた。
「何も悪いことをするわけじゃないんだから。ね?」
「いえその……」
「ん? ああ! ハハ! それも含めて好きにしなよ!」
レミリアは薬を渡す条件を色々と、それはもう色々と考えていたのだ。
「それなりに条件をだそうかと……謝罪文とか謝罪文とか謝罪文とか……」
「ああ~彼らはなかなか自分達の非を認められない人種だからねぇ~」
ジークボルトにガッカリされるかと心配していたが、そんなことは今後も本気で必要がないようだ。
「僕はてっきりあの王太子の命の1つでも差し出せっていうのかと……」
「待ってください! 私は先生からしたらそんなこと言う人間に見えるんですか!?」
まさに悪役令嬢……いや、それってもうただの悪女じゃないかとレミリアは焦った。
「いやぁ~あの啖呵の切り方や煽り方をみたらそれぐらいの条件出して取引でもするのかと思ってね!」
だがどうやら冗談だったらしく、大笑いしている。ついでに近くで聞いていたアレンもエミリアに指をさしてわらっていた。真に受けてしまった彼女は顔を赤らめた。
(この師弟は~!!!)
「ごめんごめん! 君のその真面目さも僕はとっても愛おしいものだと思っているよ」
「面白い要素くらいにしか思ってないでしょう」
「あはは!」
そう言って笑ってごまかされた。
少々腹立たしいが、悪い気はしない。それどころか幸せな気分だった。
(愛に飢えてたのねぇ私……)
同時に自分が思いのほか他人からの愛を求めていたことにも気づいたのだった。
翌日、再びギルバート王と話し合いの場を持った。もちろん、非礼を詫びたりしないし、相手もそれを持ち出すことはなかった。
「薬の製造方法をお渡しします」
「おぉ! そ、そうか!!!」
王はあからさまに喜んでいた。またレミリアから厳しい言葉を投げかけられることを覚悟していたからだ。
だがもう彼女がどうにかしてくれなければ、いけ好かないベルーガ帝国の皇帝へ頭を下げ、大した条件なく領土への侵入を許すことになる。側近達からの進言もあり、今日の王はどんなにキツイことを言われようが、耐えるつもりだった。
「ただし、いくつか条件があります」
王は息をのんだ。彼女が王国にいい感情を持っていないことは明らかだ。
「私と私の師の功績をマリロイド王国の国民に広く知れ渡るよう発表すること」
「それはもちろん!」
ホッと息をはきながら、王は胸をなでおろしていた。ジークボルトの名は王国でも知れ渡っている。彼の作った薬と聞けば、皆安心して服薬もできるだろう。レミリアのことが話題にもなるだろうが、彼女が帝国で大賢者の弟子という名誉ある立場にいるとわかれば、王太子との婚約破棄に反発していた国民の気持ちも収まるかもしれない。
「同時に、陛下の息子が私に対しての間違った発言を全て訂正いただきます」
「な、それは……!」
「間違いを認め、私への謝罪文を全ての国民へ配ってください」
レミリアは何の抑揚もなく話を続ける。
王太子の、未来の王の間違えを認めるのは王国にしてみたら具合が悪い。
「すぐにアルベルトを連れてきて謝罪させよう!」
「心無い謝罪ならムカつくだけなので結構です」
間髪入れずに言葉を返され、王は次の言葉が出てこない。王太子の謝罪で十分じゃないか。それだって然う然うあることではない。王にとってもこれは最大限の譲歩だったのだ。
「嫌なら帝国へすぐにお願いするのがよろしいかと」
「う……それは……」
ギルバート王はベルーガ帝国の皇帝を一方的にライバル視していた。同時期に即位したが国としての規模が違う。ならば王としての力量は勝っていたかった。そのように世間からも思われたかった……。
「このお話はなかったことに」
それでは。とレミリアが席を立つと、王は慌てて返事をした。
「わかった! それで構わない!!!」
「約束ですよ?」
能面のような顔つきだったレミリアがやっと笑顔になった。
(絶対にいつか泣きながら謝罪させてやるんだから!!!)
それまでは精々、国を滅ぼさないように頑張ってもらわなくては。
(ノリ軽!)
通信用のネックレスを使ってジークボルトに連絡を取ると、例の如く軽く許可がおりた。と言うより、そんなことなどどうでもいいのだろう。
「もう君は自由だ。好きに生きていいんだよ?」
「え?」
「君は僕の弟子だけど、君は自立した1人の人間だ。僕は君を信用しているし、君の判断に任すよ」
「そ、そんな裁量……前世でも貰ったことないです……」
それもこんな国のトップが喉から手が出るほど欲しがっているものを、自分の心一つでどうするか決めるなんて。この大きな決断が、レミリアは少し怖かったのだ。
「アハハ! 前世まで出てくるのか! それならまあ今世の修行だと思って頑張ってよ!」
「……はい」
(これも修行か……)
そう考えると、根が真面目な彼女はなんだか少しこの問題に向き合うやる気が出てきた。
「何も悪いことをするわけじゃないんだから。ね?」
「いえその……」
「ん? ああ! ハハ! それも含めて好きにしなよ!」
レミリアは薬を渡す条件を色々と、それはもう色々と考えていたのだ。
「それなりに条件をだそうかと……謝罪文とか謝罪文とか謝罪文とか……」
「ああ~彼らはなかなか自分達の非を認められない人種だからねぇ~」
ジークボルトにガッカリされるかと心配していたが、そんなことは今後も本気で必要がないようだ。
「僕はてっきりあの王太子の命の1つでも差し出せっていうのかと……」
「待ってください! 私は先生からしたらそんなこと言う人間に見えるんですか!?」
まさに悪役令嬢……いや、それってもうただの悪女じゃないかとレミリアは焦った。
「いやぁ~あの啖呵の切り方や煽り方をみたらそれぐらいの条件出して取引でもするのかと思ってね!」
だがどうやら冗談だったらしく、大笑いしている。ついでに近くで聞いていたアレンもエミリアに指をさしてわらっていた。真に受けてしまった彼女は顔を赤らめた。
(この師弟は~!!!)
「ごめんごめん! 君のその真面目さも僕はとっても愛おしいものだと思っているよ」
「面白い要素くらいにしか思ってないでしょう」
「あはは!」
そう言って笑ってごまかされた。
少々腹立たしいが、悪い気はしない。それどころか幸せな気分だった。
(愛に飢えてたのねぇ私……)
同時に自分が思いのほか他人からの愛を求めていたことにも気づいたのだった。
翌日、再びギルバート王と話し合いの場を持った。もちろん、非礼を詫びたりしないし、相手もそれを持ち出すことはなかった。
「薬の製造方法をお渡しします」
「おぉ! そ、そうか!!!」
王はあからさまに喜んでいた。またレミリアから厳しい言葉を投げかけられることを覚悟していたからだ。
だがもう彼女がどうにかしてくれなければ、いけ好かないベルーガ帝国の皇帝へ頭を下げ、大した条件なく領土への侵入を許すことになる。側近達からの進言もあり、今日の王はどんなにキツイことを言われようが、耐えるつもりだった。
「ただし、いくつか条件があります」
王は息をのんだ。彼女が王国にいい感情を持っていないことは明らかだ。
「私と私の師の功績をマリロイド王国の国民に広く知れ渡るよう発表すること」
「それはもちろん!」
ホッと息をはきながら、王は胸をなでおろしていた。ジークボルトの名は王国でも知れ渡っている。彼の作った薬と聞けば、皆安心して服薬もできるだろう。レミリアのことが話題にもなるだろうが、彼女が帝国で大賢者の弟子という名誉ある立場にいるとわかれば、王太子との婚約破棄に反発していた国民の気持ちも収まるかもしれない。
「同時に、陛下の息子が私に対しての間違った発言を全て訂正いただきます」
「な、それは……!」
「間違いを認め、私への謝罪文を全ての国民へ配ってください」
レミリアは何の抑揚もなく話を続ける。
王太子の、未来の王の間違えを認めるのは王国にしてみたら具合が悪い。
「すぐにアルベルトを連れてきて謝罪させよう!」
「心無い謝罪ならムカつくだけなので結構です」
間髪入れずに言葉を返され、王は次の言葉が出てこない。王太子の謝罪で十分じゃないか。それだって然う然うあることではない。王にとってもこれは最大限の譲歩だったのだ。
「嫌なら帝国へすぐにお願いするのがよろしいかと」
「う……それは……」
ギルバート王はベルーガ帝国の皇帝を一方的にライバル視していた。同時期に即位したが国としての規模が違う。ならば王としての力量は勝っていたかった。そのように世間からも思われたかった……。
「このお話はなかったことに」
それでは。とレミリアが席を立つと、王は慌てて返事をした。
「わかった! それで構わない!!!」
「約束ですよ?」
能面のような顔つきだったレミリアがやっと笑顔になった。
(絶対にいつか泣きながら謝罪させてやるんだから!!!)
それまでは精々、国を滅ぼさないように頑張ってもらわなくては。
36
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
婚約破棄されたので、慰謝料で「国」を買うことにしました。~知識ゼロの私ですが、謎の魔導書(AI)に従ったら、いつの間にか王家のオーナーに~
ジョウジ
ファンタジー
「セレスティア、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーで王子に断罪された公爵令嬢セレスティア。
慰謝料も貰えず、腹いせに立ち寄った古道具屋のワゴンセール。 そこでたった銅貨数枚(100円)で買った「黒い手鏡(スマホ)」を起動した瞬間、運命が変わる。
『警告。3年後の国家破綻およびマスターの処刑確率は99.9%です』 「はあ!? 死ぬのは嫌! それに、戦争が起きたら推し(アルド様)が死んじゃうじゃない!」
知識ゼロ、あるのは魔力と行動力、そして推しへの愛だけ。 パニックになった彼女は、スマホに宿るAI(ジェミニ)の極悪な経済作戦を、自分に都合よく「超訳」して実行に移す。
「敵対的買収……? 要するに、お店の借金を肩代わりして『オーナー』になれば、商品は全部タダ(私のもの)ってことね!?」
これは、内心ガクブルの悪役令嬢が、AIの指示を「素敵なお買い物」と勘違いしたまま国を経済支配し、 結果的に「慈悲深い聖女」「経営の天才」と崇められていく、痛快・勘違い無双コメディ!
※全10話の短期集中連載です。お正月のお供にどうぞ!
※テンポを重視してダイジェスト10話版となります。反響があれば長編の執筆を開始します!
※本作は、物語の構想・執筆補助にAI技術を活用し制作されました。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
婚約破棄されたので隣国で働きます ~追放侯爵令嬢、才覚だけで王妃候補に成り上がる~
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王宮改革は、英雄の一声では成し遂げられない。
王太子に招かれ、王宮顧問として改革に携わることになった
ルビー・エルヴェール。
彼女が選んだ道は、力で押し切る改革でも、敵を断罪する粛清でもなかった。
評価制度の刷新、情報公開、説明責任、緊急時の判断、責任の分配――
一つひとつの制度は正しくても、人の恐れや保身が、改革を歪めていく。
噂に揺れ、信頼が試され、
「正しさ」と「速さ」、
「個人の覚悟」と「組織の持続性」が、幾度も衝突する。
それでもルビーは、問い続ける。
――制度は、誰のためにあるのか。
――信頼とは、守るものか、耐えるものか。
――改革者は、いつ去るべきなのか。
やがて彼女は、自らが築いた制度が
自分なしでも動き始めたことを確かめ、静かに王宮を去る。
残されたのは、名前の残らない改革。
英雄のいない成功。
だが確かに「生き続ける仕組み」。
これは、
誰かが称えられるための物語ではない。
考えることを許し、責任を分かち合う――
その文化を残すための、40話の改革譚。
静かで、重く、そして誠実な
“大人のための王宮改革ファンタジー”。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる