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27 皇帝
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ある夜、レミリアもアレンも寝支度が終わり、いつもの日課である『こんな魔法が欲しい』談義で盛り上がていた。
レミリアはこの広い屋敷の一部屋をリビングルームのような、家族が気楽に集まりくつろげるようにしたのだった。ソファーやクッションを気合いを入れて揃え、私物の本をどんどんこの部屋に持ち込んでいた。軽くつまめるお菓子類も常に置いていたので、この屋敷の片づけ専門ホムンクルスが1番時間が取られるのがこの部屋だった。
「このブラウニーうまいぞ!」
「この間フロイドが持ってきてくれたやつね」
「レミリアは食べねぇの?」
「この時間にブラウニーのカロリーはちょっと……」
ちょうどその時、2人の師匠である大賢者ジークボルトの部屋から大きな笑い声が聞こえてきた。
「お前が来てから師匠はよく笑うようになったよ」
アレンは優しい顔をした。大切な人の笑顔というのは嬉しいものらしい。
「先生がよく笑うようになったってことはアレンもってことでしょー?」
レミリアはニヤリとちょっと自信過剰な自分を演じていた。
「笑うっていうか……爆笑だな?」
「それなんか思ってる感じと違う!!!」
階段を降りる足音が聞こえたと思ったら、ジークボルトが勢いよく部屋に入ってきた。
「ねぇねぇ聞いて! ついにレミリアの国外追放は冤罪だったってギルバート王が謝ったらしいよ!」
ジークボルトは通信用の魔道具を握りしめたままだった。
『はっはっは! ジークボルト殿! 弟子たちが目玉を落とさんばかりに見開いてるぞ』
「し、失礼しました!」
「こここ、このような恰好で申し訳ございません……!」
通信は終わっていなかった。通信機の光の中にはベルーガ帝国の皇帝ダリオンがいたのだ。
(すっぴん寝間着で髪の毛も半渇きなんだけど……!)
『よいよい! 私も今ベッドの中だ。ついさっきこちらに書簡が届いたばかりなのだ。早く知りたいだろうと思ってな。明日にでもフロイドに詳細を届けさせよう』
「恐れ入ります……!」
大帝国の皇帝ともなるとどれほど恐ろしい人物かとレミリアは思っていたが、皇帝ダリオンはとても気さくで軽やかな人物だった。レミリアはこれまで二度パーティで会ったことはあったが、どちらも軽い挨拶だけで終わっていたため、こんな親戚の伯父さんのようなノリで接してくれる人物だとは思っていなかったのだ。
『ああそれと。先日はイザイルの為に手間を取らせてすまなかった。お陰でやっと立ち直れたようだ』
「とんでもございません。殿下の心が少しでも癒されたのなら我々も力を尽くした甲斐がございました」
アレンがかしこまって膝までついているが、彼も寝間着のため恰好がつかない。そのせいか案の定、ジークボルトが肩を震わせて笑っていた。
『以前より気合いも入ってたくましくなった。まだ新しい婚約者、とはいかないようだが私はそれでいいと思っている』
穏やかな微笑みは父親の愛情からくるもののようだった。
翌日、皇帝が言った通りフロイドが例の謝罪文を届けてくれた。
「うわぁ! こんな文書出して王国は大丈夫なのか?」
「王が王太子を見限ったというのは本当なのかもしれませんね」
3人で寄り集まって謝罪文を読むが、レミリアは一向に言葉を発しない。
「……レミリア?」
眉間には皺が寄り、口はへの字になっている。
「レミリア様……?」
そうしてやっと大きく息を吸い込んだ。
「ギルバート王、マジでどうしたの!? 死ぬ前の懺悔かなんか!?」
実物を見てもまだ信じられない様子で、首をかしげている。
「失礼なやつだな~いよいよ師匠の力を借りたいから玄関マットになってるお前に全力で謝りに来ただけだろ!」
「どっちが失礼よ!」
このやり取りにいつものようにフロイドが苦笑していた。
「流石に前回の対応がまずいと思われたのでしょう。今回は誠意を見せるために身を切ってでもレミリア様の機嫌を取っておきたいのだと思いますよ」
身を切る……息子と側近達の子供を名指しで批判したこの謝罪文が王国内でどのように受け止められているかレミリアは興味があった。
「聖女だけは責めてないんだな」
「今結界を張っているのはソイツでしょ? 機嫌を損ねるわけにはいかないから余計残りの男共を厳しく糾弾したんじゃない?」
レミリアはそれが面白くなかったが、仕方がないことはわかっていた。
(あの聖女なら不貞腐れて職務放棄くらいするわね)
結局それで犠牲になるのは結界の近くで生活する貧しい平民達だ。
「ま! その分息子その他をけちょんけちょんにしてるし、プラスマイナスゼロってことにしといてやるか」
落とし所というやつだ。この謝罪文を出せば王家や貴族への批判は避けられないだろう。なのにこのタイミングで謝ってきた。それだけレミリアに許しを求めているのだろう。よっぽど切羽詰まっているのがわかる。
(相変わらず一方的なところがあの王のすることって感じだけど……)
これからまた正式に大賢者への依頼が来るだろう。その時またチクチクと嫌がらせをしてやると、レミリアは少し悪い顔をした。
彼女の表情がリラックスしたものになったからか、珍しくフロイドが少し言いにくそうにレミリアに話しかけた。
「レミリア様に一つお話ししておくことがございます」
「な、なに!?」
レミリアもフロイドのいつもと違う様子にすぐに気がつき緊張した。
「弟君が帝国へおいでです……数日前から、その、菓子折りを持って……」
「まさかあのブラウニー……!」
読みもせず突き返した手紙から数ヶ月、ついにロニーが帝国までやってきた。
「今更!? 何しに!?」
あの他人に責任転嫁しかしてこない弟だ。会ったとして一体何を言われるやら……レミリアは想像したたけで気が重くなった。
「レミリアに会いたいって?」
「いえそれが……レミリア様に会うには気合いがいるからと何やら帝都を散策されているようです」
フロイドの話では帝都生活を満喫しているらしい。
「なにそれ! 観光じゃん!」
自分を出汁に楽しんでるなんて気に入らないと顔を顰め、
「久しぶりに可愛い弟の顔でも見に行こうかしらね!」
立ち上がり宣言したのだった。
レミリアはこの広い屋敷の一部屋をリビングルームのような、家族が気楽に集まりくつろげるようにしたのだった。ソファーやクッションを気合いを入れて揃え、私物の本をどんどんこの部屋に持ち込んでいた。軽くつまめるお菓子類も常に置いていたので、この屋敷の片づけ専門ホムンクルスが1番時間が取られるのがこの部屋だった。
「このブラウニーうまいぞ!」
「この間フロイドが持ってきてくれたやつね」
「レミリアは食べねぇの?」
「この時間にブラウニーのカロリーはちょっと……」
ちょうどその時、2人の師匠である大賢者ジークボルトの部屋から大きな笑い声が聞こえてきた。
「お前が来てから師匠はよく笑うようになったよ」
アレンは優しい顔をした。大切な人の笑顔というのは嬉しいものらしい。
「先生がよく笑うようになったってことはアレンもってことでしょー?」
レミリアはニヤリとちょっと自信過剰な自分を演じていた。
「笑うっていうか……爆笑だな?」
「それなんか思ってる感じと違う!!!」
階段を降りる足音が聞こえたと思ったら、ジークボルトが勢いよく部屋に入ってきた。
「ねぇねぇ聞いて! ついにレミリアの国外追放は冤罪だったってギルバート王が謝ったらしいよ!」
ジークボルトは通信用の魔道具を握りしめたままだった。
『はっはっは! ジークボルト殿! 弟子たちが目玉を落とさんばかりに見開いてるぞ』
「し、失礼しました!」
「こここ、このような恰好で申し訳ございません……!」
通信は終わっていなかった。通信機の光の中にはベルーガ帝国の皇帝ダリオンがいたのだ。
(すっぴん寝間着で髪の毛も半渇きなんだけど……!)
『よいよい! 私も今ベッドの中だ。ついさっきこちらに書簡が届いたばかりなのだ。早く知りたいだろうと思ってな。明日にでもフロイドに詳細を届けさせよう』
「恐れ入ります……!」
大帝国の皇帝ともなるとどれほど恐ろしい人物かとレミリアは思っていたが、皇帝ダリオンはとても気さくで軽やかな人物だった。レミリアはこれまで二度パーティで会ったことはあったが、どちらも軽い挨拶だけで終わっていたため、こんな親戚の伯父さんのようなノリで接してくれる人物だとは思っていなかったのだ。
『ああそれと。先日はイザイルの為に手間を取らせてすまなかった。お陰でやっと立ち直れたようだ』
「とんでもございません。殿下の心が少しでも癒されたのなら我々も力を尽くした甲斐がございました」
アレンがかしこまって膝までついているが、彼も寝間着のため恰好がつかない。そのせいか案の定、ジークボルトが肩を震わせて笑っていた。
『以前より気合いも入ってたくましくなった。まだ新しい婚約者、とはいかないようだが私はそれでいいと思っている』
穏やかな微笑みは父親の愛情からくるもののようだった。
翌日、皇帝が言った通りフロイドが例の謝罪文を届けてくれた。
「うわぁ! こんな文書出して王国は大丈夫なのか?」
「王が王太子を見限ったというのは本当なのかもしれませんね」
3人で寄り集まって謝罪文を読むが、レミリアは一向に言葉を発しない。
「……レミリア?」
眉間には皺が寄り、口はへの字になっている。
「レミリア様……?」
そうしてやっと大きく息を吸い込んだ。
「ギルバート王、マジでどうしたの!? 死ぬ前の懺悔かなんか!?」
実物を見てもまだ信じられない様子で、首をかしげている。
「失礼なやつだな~いよいよ師匠の力を借りたいから玄関マットになってるお前に全力で謝りに来ただけだろ!」
「どっちが失礼よ!」
このやり取りにいつものようにフロイドが苦笑していた。
「流石に前回の対応がまずいと思われたのでしょう。今回は誠意を見せるために身を切ってでもレミリア様の機嫌を取っておきたいのだと思いますよ」
身を切る……息子と側近達の子供を名指しで批判したこの謝罪文が王国内でどのように受け止められているかレミリアは興味があった。
「聖女だけは責めてないんだな」
「今結界を張っているのはソイツでしょ? 機嫌を損ねるわけにはいかないから余計残りの男共を厳しく糾弾したんじゃない?」
レミリアはそれが面白くなかったが、仕方がないことはわかっていた。
(あの聖女なら不貞腐れて職務放棄くらいするわね)
結局それで犠牲になるのは結界の近くで生活する貧しい平民達だ。
「ま! その分息子その他をけちょんけちょんにしてるし、プラスマイナスゼロってことにしといてやるか」
落とし所というやつだ。この謝罪文を出せば王家や貴族への批判は避けられないだろう。なのにこのタイミングで謝ってきた。それだけレミリアに許しを求めているのだろう。よっぽど切羽詰まっているのがわかる。
(相変わらず一方的なところがあの王のすることって感じだけど……)
これからまた正式に大賢者への依頼が来るだろう。その時またチクチクと嫌がらせをしてやると、レミリアは少し悪い顔をした。
彼女の表情がリラックスしたものになったからか、珍しくフロイドが少し言いにくそうにレミリアに話しかけた。
「レミリア様に一つお話ししておくことがございます」
「な、なに!?」
レミリアもフロイドのいつもと違う様子にすぐに気がつき緊張した。
「弟君が帝国へおいでです……数日前から、その、菓子折りを持って……」
「まさかあのブラウニー……!」
読みもせず突き返した手紙から数ヶ月、ついにロニーが帝国までやってきた。
「今更!? 何しに!?」
あの他人に責任転嫁しかしてこない弟だ。会ったとして一体何を言われるやら……レミリアは想像したたけで気が重くなった。
「レミリアに会いたいって?」
「いえそれが……レミリア様に会うには気合いがいるからと何やら帝都を散策されているようです」
フロイドの話では帝都生活を満喫しているらしい。
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