【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

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28 公爵家の長男

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 ロニー・ディーヴァは公爵家の長男だ。母親は男爵家の1人娘で、新婚のディーヴァ公爵を誘惑し彼の子を産んだ。
 彼女にとって幸運なことに、ライバルである正妻が若くして亡くなったので、すでに子を産んでいた彼女が繰り上がりで公爵家に入ることが出来た。
 更に有難いことに、義理の娘は継母に全く無関心だった。だがその継母がレミリアを邪見扱い、王都の屋敷から追い払おうと画策するとそれはすぐにバレ、逆に継母の方が危うく追い出されてしまうところだった。
 
 幼いレミリアに泣いて謝る母親を見て、ロニーは酷くショックを受けた。自分と同じ年の少女に懇願するように泣き縋らなければならないのは、母の身分が低いせいだと思い込んだ。

「レミリアには気を付けなさい」

 ロニーはいつも母親にそう注意されていた。

「僕は母上と違って半分は公爵家の血が流れているから」

 それが彼の大切なアイデンティティになっていた。だがそれは、両親ともに公爵家のレミリアには到底かなわないものだった。

「またレミリアに勝てなかったのか……お前は将来この家を継ぐんだぞ?」

 たまに実家に帰っても父親は成績の件をチクリと言うだけ。いつものように姉と比べてガッカリされるだけだった。母は自分のせいだと、自分の生まれのせいだと嘆くようになっていた。それはロニーが自ら招いたものだ。小さなころからいつだって上手くいかないことは全て母親の出身のせいにしていた。

「母上が下級貴族出身のせいだ」

 レミリアはその言い訳を聞くたびにウンザリという顔をしていた。
 
(いったい何の関係が?)

 それにこだわっていたのはロニーだけだったのに。
 
 そんなロニーが平民の女の子に恋をした。彼女はいつも彼を頼ってくれた。いつも褒めてくれた。姉への嫉妬心も認めてくれた。彼の実力がわかっていない両親に対して一緒に憤ってくれた……。

(身分なんて関係なかったんだ)

 そう気が付き始めた時、ユリアは聖女の力に目覚めた。そうして王と同じ唯一無二の存在となってしまった。これまで平民だと馬鹿にしていた連中が途端に黙って彼女に道を譲るようになった。ユリアも譲ってもらうのが当たり前という態度を取るようになった。

(なんだ……やっぱり身分なんじゃないか)

 そうして彼女は彼らの中で一番身分の高い男を選んだ。

 だが彼女は良い事もしてくれた。あの鬱陶しくてしかたなかった姉レミリアを国外へ追いやってくれた。これで家では父の次に身分が高いのは自分になった。
 なのに、いつまで経っても姉と比べられ続けた。

 ロニーの姉は他国に居ながら……国外追放された身でありながらこの国を疫病から救ったのだ。

 だから今はいない姉の痕跡をおった。どんな生活をしていたのか興味が湧いたのだ。

(どうせ優雅で華やかな公爵令嬢らしい生活だろ)

 姉を上げ、自分を下げ、そうしてまた自己憐憫に浸ろうとしていたのだ。

 部屋に入ったら書物で溢れかえっていた。雑然としていて、完璧だと思っていた姉の部屋だとは思えなかった。床には衣類が脱ぎ散らかされたままだった。

「少しは片付けて出てけよ……」

(……そんな暇はなかったか)

 魔術で失敗したせいだろう、一部のドレスに燃えた跡があった。公爵令嬢らしくない平民が着ているような衣類も沢山あった。メイドによると、暇を見つけては孤児院へ行ったり平民向けの学校に顔を出していたらしい。

「あーーー! レミリア様の馬車だあ!」

 孤児院へ行ってみると、ディーヴァ家の馬車を見て子供達がわらわらと集まってきた。相手は公爵家だというのに少しもかしこまる雰囲気がない。ここでレミリアは子供達に読み書きを教え、一緒に遊んでいたのだ。

「レミリア様の授業、厳しかったなぁ……でもまた来て欲しい……」

 子供達はレミリアがどうなっているのか、なんとなくわかっているようだった。レミリアは自分がいなくなった時のことも考え、新しい先生を手配していたし、それとなく子供達にはいつか自分が来なくなる日が来ると伝えていたのだ。

「今度からはロニー様が来てくれるの?」

 期待するような顔がたくさん見え、ロニーは動揺した。これまで誰もそんな目で自分を見なかった。公爵家の長男に畏まることも、出来のいい姉と比べて値踏みされることもなかった。

「まったく……姉上は大切なことを教えていないじゃないか! 目上の者に対するマナーや礼儀を知らないのか!」
「申し訳ありません……! まだ幼い子供達でございます……何卒お慈悲を!」

 この孤児院を取り仕切っていた神官が焦っている。レミリアが特殊なだけであって基本貴族というのは身分の低い者への態度は厳しい。

「し、仕方ないから僕が全部教えてやる! 姉上より厳しいからそのつもりでいるように!」
「へ? あ……ありがとうございます!」

 ロニーは心臓がドキドキしていた。自分がこんなことを言い出すなんて思わなかったのだ。

(なんで……)

 自問しながらも、ここで過ごせば自身の心にこびりついた、『身分』という概念を再び変えられるという、勘に近い何かを感じたからだった。
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