【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

文字の大きさ
29 / 63

29 お土産

しおりを挟む
 
「ロニー様大変です! 公爵様が不敬罪で牢に……!」
「なんだって!?」

 彼の穏やかな日々は長くは続かなかった。ディーヴァ公爵が王と大喧嘩をして自ら牢に入ってしまったのだ。

「父上も怒りっぽいからなぁ……」

 不機嫌な時はあの姉とよく似ていると思っていた。自分にはそれが似なくて良かったとも。

「陛下、手紙の件は父ではなく私の失敗にございます。どうか罰するなら私を……」

 ロニーは生まれて初めて人のせいにしなかった。姉がいなくなり次は父、ディーヴァ家は大きな柱をなくし不安定になり始めていたのだ。

「フン……牢から出たければ出ればよいのに。お前の父親は意地を張って居座っているだけだ」
「さ、左様でございますか……」

 公爵は公爵で王からの謝罪を牢の中で待っているのだ。

「陛下、私は姉に直接謝罪に向かおうと思います。どうかそのお許しを」
「……許す」

 ロニーはまもなく正式な謝罪文が再び出ることは知っていた。グレンから聞いていたのだ。彼は学園であった全てのことを正確に王に伝えたと言っていた。

「悪いが君のこともだ」
「……かまわないよ」

 孤児院の一画で、グレンは少し申し訳なさそうにロニーに伝えた。彼がレミリアと同じように孤児院に通っていた事を知らなかったのだ。

「ここにきて気が付いたんだ。自分は勝手に拗ねていただけの子供だったってね」

 小さな子供達と関わっていると、その姿が自分と重なることが多かった。
 子供同士で喧嘩をするとどちらも相手のせいにして、それを先生という立場にいるロニーに判断してもらいにきたのだった。だがロニーは困ってしまった。なんと答えたらいいのかわからなかったのだ。

「いいから仲良くするんだ!」

 柄にもなく叱っても、なかなか上手くいかなかった。

「えー! だってこいつが悪いのに!」
「お前が先にやったんだろ!」
「だってそれはお前が……!」

 素直にうん、とは皆言わなかった。

「お前達書き取りは終わったんだろうなー!? 早く終わらなきゃブラウニーはなしだぞ!」
「やだやだ!」
「ロニー様ってやっぱレミリア様の弟だよなぁ~怒り方一緒じゃん!」

 そういえばレミリアとはこんな姉弟喧嘩もしたことがなかったと、屋敷での生活を振り返った。いつも一方的に喧嘩を売っていただけだった。
 
 どうせ自分は孤児だからと卑下する子もいた。

「どうせ私はドジで間抜けで馬鹿な孤児だもの……こんな問題解けるはずない」
「そんなの関係ないよ。足し算は上手くできただろ? やってないうちから諦めたら出来るわけないじゃないか」
「無理だもん! できないもん! ロニー様はお貴族様だからそんなこと言えるんだ!」

 そう言って自分を卑下しながらシクシク泣き始める幼い女の子を一生懸命慰めた。

(ああ、今ならあの時の姉上の表情が理解できる)

 でも、あんなに鬱陶しそうな表情しなくていいじゃないかとも思ったのだった。

「君はマナーの授業はあんなに熱心に受けるじゃないか。あれだけキチンと出来ていたら、将来どこかのお屋敷で働けるようになる。その時少しでも他に勉強が出来ていたらもっと屋敷内でいい立場に立てる。だからもう少し頑張ろう?」
「……はい」

 ロニーは子供達に根気よく接していた。だから子供達はいつもロニーがやってくるのを楽しみに待つようになっていた。

 
 孤児院の窓から笑い声が漏れている。それを聞きながらロニーはグレンの目を真っすぐに見つめた。

「でももう僕は大人だから……甘んじてその報いを受け入れなきゃ」

 グレンは黙って頷いた。自分に対しても言っているのだとわかっていた。

 

 執務室からの帰り道、騎士団の訓練場が見える廊下を歩きながら、ロニーはカイルのことを考えていた。

(謝罪文のこと……知ってるのかな?)

 グレンはカイルには伝えていないと言っていた。

「カイルはまだ、学生時代のままだったよ」

 残念そうな声だった。

「ロニィー!」

 少し前まではこの声で呼ばれるのが嬉しくて仕方なかった。ドレスを着ていることなど無視してこちらへ向かってかけてくる。

「なんだいユリア?」

 すでに王太子の婚約者となっているユリアはそっとロニーの服の袖をつかんだ。

「ベルーガ帝国へ行っちゃうって本当なの?」

 いったいどこで聞きつけたのか、ついさっき王の執務室から出てきたばかりだと言うのに。

「そうだよ」
「何しにぃ~? あ! 大賢者様に会いに行くの!? 私も行きたい!」
「ちょっとね」

(行けるわけがないだろう。君は聖女じゃないか! その身分を使って僕の姉を追い出したんだろ)

 だが決して顔には出さないよう注意する。

(追い出したのは僕も同じか……)

 ユリアは彼の予定などどうでもいいようで、一方的に話し始めた。

「寂しいなぁ~いつ帰ってくるのぉ?」
「まだわからないよ」

 いつもと同じ笑顔になっているだろうか。ロニーは少し自信がなかった。

「じゃあ私を連れていけない罰としてお土産買ってきてよ!」
「罰?」

(君がくだせる立場だというのか?)

 彼の目はもう笑ってはいなかった。

「帝都に大きな宝石商があってねぇ~そこにあった青い石がとっても綺麗だったの!」
「……そういうのは婚約者に買ってもらわなきゃ」
「だって……ロニーからもらいたいんだもん……」

 そう言って更に体を寄せてこようとした瞬間、ロニーは急いでその場を立ち去った。

(はは……グレンの言った通りの行動だな)

 ワンパターンだ。それにまんまと心をときめかせていたのは自分だが。

(そうだ。孤児院になにかお土産を買って帰ろう)

 彼らの喜ぶ顔を思い浮かべると、先ほど聖女に汚されてしまった心が浄化されるようだった。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...