【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

文字の大きさ
62 / 63

62 お別れ

しおりを挟む
 アルベルトの目に光はなかった。アレンは目を伏せ、そっとレミリアを自分の方へと引き寄せる。

「クソ女ぁぁぁ! はーなーれーろぉぉぉ!」

 ユリアはこの期に及んでアレンに執着していた。だが、目の前にアルベルトが立ち塞がる。

「どけ! どけよ!!!」
「さようならユリア」

 何の感情もこもっていないような声だった。

 そうしてアルベルトがユリアの肩を押した。

 そのまま後ろに倒れた彼女がアルベルトに怒りの言葉をぶつけるより前に、憎しみに満ちた表情の人々が彼女に群がった。

「イギャァァァァ! 痛い! 痛いよぉぉぉ! やめてぇぇぇ! ヤダヤダヤダァァァ!!!」

 短剣で刺す者、杖で叩きつける者、拳で殴りつける者、足で踏みつける者、ただひたすら聖女ユリアを傷つけるために一心不乱に暴力を振るった。その内回復魔法も追いつかなくなったようだ。

 聖女ユリアの叫び声は止まった。

 ユリアだった者の残骸は大広間に横たわっていた。顔はもう性別の区別もつかない。手足がありえない方向へ向き、美しかった衣類はボロ雑巾のように千切れ、血と内臓が飛び散っていた。

「帰ろう」

 アレンがレミリアに声をかけた。



 それからしばらくして、マリロイド王国はベルーガ帝国へ併合された。各地に爵位を持つレミリアの旧友達がいたことや、ベルーガ帝国へ恩を感じる民が多かったこともあり、大きな混乱はなかった。

 帝国と併合したことにより、マリロイドは急速にかつての姿を取り戻し始めていた。

 レミリアはジークボルトとの約束通り、聖女としての務めを果たした。アレンとフロイドは頻繁にを訪れた。復興と再建の為と理由を付けていたが、単純にレミリアに会いたかったのだ。

「レミリア様、お役目が終わったら必ず戻ってきてくださいね!?」
「もうここも帝国の一部じゃないの」
「それはそうですけど……気持ち的にこう……」
「フロイドがそんなこと言うなんて珍しいわね!」
「あの後私、なかなか大変だったんですよ!?」

 辺境伯からもヨルムからもいいようにこき使われた上、その後帝国へレミリアを連れて戻らなかったことで大目玉をくらったらしかった。

「ごめんごめん! 約束通り戻るわ。私だってあの家が好きだもの」
「ならいいんですけど……」

 いつものように困ったように笑うフロイドを見て、レミリアは安心した。

「魔物の森、結界用の魔道具の設置は進んでるってよ」

 珍しくジークボルトが積極的に動いて、聖女の結界……地竜の魔力が尽きるより前にマリロイドを囲む魔物の森を抑え込むために動いていた。

「いっそのこと魔物の森を消滅させる手もあるんだけど。ここはもう資源だから」

 ジークボルトの言う通り、最近では辺境領に世界中から冒険者達が集まり始めていた。魔物の森で育つ植物や魔物からとれる素材に価値が出始めているのだ。

「ガハハハッ! ここにきて笑いが止まらんですわ!」

 自領がかつてない活気にあふれ初め、辺境伯は上機嫌だった。そしてその辺境伯の元では、グレンがその力を発揮させ始めていた。そこにはロニーの姿もあった。
 ロニーは母を失った男爵領から王都に戻る気には到底なれず、魔物から命からがら生き残った人や子供達を守りながら辺境領を目指していた。ちょうどレミリア達に助けられた一団と合流し、無事に辺境領へたどり着いた後、難民達を上手く取りまとめていた。

「ロニーがねぇ」

 その話をフロイドから聞いたレミリアは、以前と違い不快感が襲ってこなかったことに気が付いた。

「しばらく泣かせに行く必要はなさそうね」

 レミリアは満足そうに呟いた。

「それにしてもお前、本当に国を潰しちゃったなあ」
「え~ほとんど自滅じゃない。もっとこう……やってやった! って手応えを求めてたんだけど」

 マリロイド王国とベルーガ帝国併合の橋渡しはレミリアがおこなった。マリロイド王国にはもう国を復興させる財源も人材もなかった。どの道王国は帝国に頼らないのならもう滅ぶしかなかったが、彼女のおかげて実にスムーズに、なおかつ王国民は君主が変わる以外特段大きな変化はなかった。

「そういえばカイルが師匠のとこに挨拶に来たってよ」
「私の所にも来たわ」

 カイルは国を出た。自分で自分を国外追放にしたのだ。
 彼の母親はスタンピードの後も生き残っていた。そして息子が生きているのを確認した後、自死したのだった。

「殺してくれ~って言われたんだろ?」
「そんな後味の悪いことやらせんな! って怒鳴ってやったわ」

 カイルにはそれ以上の責任の取り方がわからなかったのだ。

「それではどのように責任を取ればいいのでしょうか……」
「知らないわよ! 自分で考えろって前も言ったでしょ!」

 カイルは言われた通り自分であれこれ考えた結果、レミリアと同じ罪状である国外追放を自分に課すことにした。

「もう二度とレミリア様の前には現れません。本当に申し訳ございませんでした」

 深く深く頭を下げた。

「自分で自分を許せたらまた戻ってくればいいわ。その時まだ自分でなんにも考えられないような人間だったら、今度は私がちゃんと国外追放にしてやるから」

 カイルはきょとんとしていた。

「言葉の意味は国を出てから考えて」

 レミリアは呆れ顔でカイルを部屋から追い出した。



「随分優しいじゃん」

 その話を聞いて、ニヤリと笑いながらアレンが茶化した。

「まあ、命の恩人といえば恩人だからね」

 ユリアに刺されそうになった時、カイルが反応してくれていなかったら実際どうなっていたかわからないのだ。その出来事が悔しくもあったが、同時にレミリアはもうこれ以上カイルを傷付けたいと思わなくなっていた。

「大賢者様、よろしいでしょうか」
「ああ。行くよ」

 お付きの者が大賢者を呼びに来た。アレンもマリロイド領で忙しく働いている。

「あーあ。お前に会いに来る口実にしてるからっていいように使ってくれるよ」
「ちゃっちゃと働いてちょうだい」

 今度はレミリアがニヤリと笑顔で送り出した。

「早く帰って来いよ~」
「わかってるって!」

 こうやってしょっちゅう誰かが会いに来てくれるので、レミリアは生まれて初めてマリロイドの地で楽しく暮らしていたのだ。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

婚約破棄されたので、慰謝料で「国」を買うことにしました。~知識ゼロの私ですが、謎の魔導書(AI)に従ったら、いつの間にか王家のオーナーに~

ジョウジ
ファンタジー
「セレスティア、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーで王子に断罪された公爵令嬢セレスティア。 慰謝料も貰えず、腹いせに立ち寄った古道具屋のワゴンセール。 そこでたった銅貨数枚(100円)で買った「黒い手鏡(スマホ)」を起動した瞬間、運命が変わる。 『警告。3年後の国家破綻およびマスターの処刑確率は99.9%です』 「はあ!? 死ぬのは嫌! それに、戦争が起きたら推し(アルド様)が死んじゃうじゃない!」 知識ゼロ、あるのは魔力と行動力、そして推しへの愛だけ。 パニックになった彼女は、スマホに宿るAI(ジェミニ)の極悪な経済作戦を、自分に都合よく「超訳」して実行に移す。 「敵対的買収……? 要するに、お店の借金を肩代わりして『オーナー』になれば、商品は全部タダ(私のもの)ってことね!?」 これは、内心ガクブルの悪役令嬢が、AIの指示を「素敵なお買い物」と勘違いしたまま国を経済支配し、 結果的に「慈悲深い聖女」「経営の天才」と崇められていく、痛快・勘違い無双コメディ! ※全10話の短期集中連載です。お正月のお供にどうぞ! ※テンポを重視してダイジェスト10話版となります。反響があれば長編の執筆を開始します! ※本作は、物語の構想・執筆補助にAI技術を活用し制作されました。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

婚約破棄されたので隣国で働きます ~追放侯爵令嬢、才覚だけで王妃候補に成り上がる~

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王宮改革は、英雄の一声では成し遂げられない。 王太子に招かれ、王宮顧問として改革に携わることになった ルビー・エルヴェール。 彼女が選んだ道は、力で押し切る改革でも、敵を断罪する粛清でもなかった。 評価制度の刷新、情報公開、説明責任、緊急時の判断、責任の分配―― 一つひとつの制度は正しくても、人の恐れや保身が、改革を歪めていく。 噂に揺れ、信頼が試され、 「正しさ」と「速さ」、 「個人の覚悟」と「組織の持続性」が、幾度も衝突する。 それでもルビーは、問い続ける。 ――制度は、誰のためにあるのか。 ――信頼とは、守るものか、耐えるものか。 ――改革者は、いつ去るべきなのか。 やがて彼女は、自らが築いた制度が 自分なしでも動き始めたことを確かめ、静かに王宮を去る。 残されたのは、名前の残らない改革。 英雄のいない成功。 だが確かに「生き続ける仕組み」。 これは、 誰かが称えられるための物語ではない。 考えることを許し、責任を分かち合う―― その文化を残すための、40話の改革譚。 静かで、重く、そして誠実な “大人のための王宮改革ファンタジー”。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...