【完結】予定通り婚約破棄され追放です!~せっかく最強賢者に弟子入りしたのに復讐する前に自滅しないで!?~

桃月とと

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58 昔々

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「もう千年くらい前の話なんだけど……」

 ジークボルトの話はマリロイド王国の建国史に近いものだった。

「そこの地竜から死んだ後のこと頼まれてさ」

 部屋の中心に横たわっていた地竜は、先ほどより随分小さくなっていた。ユリアがこの部屋に辿り着く前、魔石と合わせて結界の修復を試みていたのだ。

「ちょうどマリロイドの初代国王からも、ベルーガ帝国と魔物の森から国民を守るための方策の相談もうけてて」

 マリロイド王国はベルーガ帝国から分離して出来た国だった。だから言語も慣習も似ている所が多い。

「あの頃帝国はあっちこっちに勢力を伸ばそうと戦争ばかりでね。それを嫌がったその時の王弟が一部の国民を引き連れてここに国を作ったんだ」

 魔物の森の中心部は地竜のおかげで他の魔物は寄り付かなかった。そしてベルーガ帝国からの盾にもなった。だからその土地にマリロイド王国を建国したのだった。
 
「地竜はさ、死んだらその肉を魔物に食わせるんだ。そしてその血肉を得た魔物を苗床にして何度も復活するんだよ。記憶も能力も引き継いでね……」

 少し寂しそうに地竜をさすりながら話す。

「でももうこの地竜はこれ以上生きたくないんだって……だから全ての力を使い切ることにした。死後も残る魔力を全て放出して朽ち果てるのを待つと」

 同じく長く生きるジークボルトもそんな事を考える事があるのかと、レミリアは少し不安になった。

「では結界のエネルギーはこの……」

 レミリアはかねてから疑問だったのだ。どれだけの魔力があれば国中に高度な結界が張れるのか。前聖女はともかく、ユリアのレベルでもある程度結界を維持出来ていたのが不思議で仕方なかった。

「そう。聖女の役割は地竜のエネルギーを結界本体と繋ぐことなんだ。地竜の強大な魔力エネルギーを一気にこの魔道具システムに流し込むわけにはいかなくてね。日に一度、聖女の祈りによって仲介してもらってたんだ」

 話を理解してもらえて安心した顔をしていた。

「まだ魔道具も作り始めたばかりだったから、誰でも使えるような技術がなくてね。エネルギーの繋ぎになる人間を国内からランダムに選ぶことにしたんだ」

 遠い昔の記憶を思い出しながら、懐かしそうに話した。

「そうよ! 私は選ばれし聖女なの!」

 ここぞとばかりにユリアは声を上げた。

「そうだね。くじ引きに当たったようなものかな。あまり魔術に適性がない人間もいるし」

 カイルの方を見て言った。

「国民の8割くらいの人間から1人だからなかなかの確率だよね」

 彼にしては冷たい言葉だった。

「だから別に君の代わりはいくらでもいるんだよ」

 レミリアより付き合いの長いアレンでもこんなジークボルトは初めて見た。古い友人地竜の最期の願いが汚されたように感じたせいで、久しぶりに嫌悪感を思い出したようだ。

「僕もあえて祈らない人間が出ることは想定してなかったんだけど、ちゃんと結界は維持できるよう動いたみたい」

 ジークボルトの作ったこの魔道具は、聖女の能力に陰りが見えたり、一定期間祈りがささげられなかった場合、自動的に次の聖女を選出するように作られていた。彼は突発的な事故で聖女が亡くなった場合を想定してこの条件を組み込んでいた。祈らない聖女は想定外ではあったが、無事緊急事態に反応したようだ。

「もう君は唯一の聖女じゃないよ。すでに新たな聖女が誕生している」

 ジークボルトはいつもの笑顔に戻ってレミリアを見ていた。レミリアの体が白く光り、パチパチと小さな花火が飛び散っていた。

「これって!」
「聖女誕生の光……」

 アルベルトが呟いた。ユリアの時も同じ現象が起こっていた。レミリアのよりもかなり地味だったが。

「こういうの見ると、運命って言葉を信じたくなっちゃうよねぇ」

 ジークボルトは嬉しそうにレミリアを手招きした。

「でも……もう結界は破けちゃってるし……今更張り直しても中には魔物が……」
「あれ? この情報はもう引き継がれてないのかな? 結界の位置は移動できるんだよ」

 アルベルトとレミリアには思い当たる節があった。300年ほど前、王都が大火に見舞われてあらゆるものが炎に包まれたのだ。

 さあ祈って! っとジークボルトが急かす。

「魔物の大群が迫ってる。まずは王城の周りに結界を張って、少しずつ追いやろう」

 言われるがまま、レミリアは地竜の側で膝をつき、目をギュッとつぶって、震えながら祈りのポーズをとった。

(お願いお願いお願いお願いお願い……!)

 レミリアは必死に祈った。この祈りでスタンピードを止めることができるなら願ってもないことだ。部屋中の魔法陣が光始めた。眩しい光が辺りを包む。

「できた……」

 レミリアは確かな手ごたえを感じた。

 そうしてパッと顔を上げた瞬間、目の前にいたのは小さなナイフを構えたユリアだった。
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