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⑤
しおりを挟む「貴方みたいな人でも精液って臭いんですね」
「あ、え、」
「まあ、流石にいい匂いな訳ないか」
「え、あ、ご、ごめん……」
「何謝ってんですか? 果実の香りでもしたらそれはそれでおかしいでしょうが。てか早くズボン履いてくれます?」
落第劣等生でも、水魔法は使えなくもない。僕は自力で顔と手を綺麗にした後、未だにちんぽが丸出しのルネに冷たく言い放った。
何やら戸惑った様子のルネはしばらく僕を──というより僕の股間を物欲しげに見ていたが、やがて諦めたように下着を身につけて、ズボンを履いた。
挿れる訳ないだろうが。挿入中なんて一番無防備になる。そんな時にあいつらが出てきて殴られでもしたら堪ったもんじゃない。というか、今日も何処かで見てるんじゃないのか? 結構な趣味だな。
さっさと帰ろう。明日の予習もまだだし。
溜息すら吐きたい気分で立ち上がった僕は、そこで何やらもじもじしているルネに呼び止められた。
「グレンくん、あの、明日も会える?」
「は? なんだってわざわざ僕に言うんです? 暇潰しなら他探してくださいよ」
「え。でも、だって、こ、恋人だし」
ルネは心底狼狽えた様子で呟いた。何をそんなにこだわる必要が、と呆れかけて、一つ思い当たる。
どうやら取り巻きの奴らはこの程度の罰ゲームでは満足していないらしい。恐らくルネは下着を取られたことを話したくないために、ちゃんとした報告はしていないのだろう。
そうなると、初日に気配がなかったことにも納得が行く。上手く隠れてるのだとばかり思ってたが、見物にまでは来てないっぽいな。
『恋人』を続行させようとしている以上、しばらく付き合ってから手酷く振って笑い物にする気なんだろう。
でもそれって僕が惚れること前提なんだよな。どれだけ信奉してんだよ、誰も彼もが女神様が好きな訳じゃないぞ。
付き合ってやるのも馬鹿らしいのたが、此処で振ったところで引かなそうだ。変に渋ったせいで別の嫌がらせに切り替えられても困る。
「明日は無理です。来週末ならいいですけど」
「本当? じゃあ、寮の俺の部屋でも、いいかな?」
「…………いや、僕の部屋で」
個室にいきなり呼び出されるのはキツい。待ち伏せされていたらどうしようもないし、事勿れ主義の教師たちは報告したところで証拠がないからと碌な対応もしてくれやしない。
その点、僕の部屋ならまだマシだ。流石に部屋まで押しかけてきたら正当な理由で仕返しが出来るし。
「本当? 行ってもいいのかい?」
「ええまあ、どうぞ」
とりあえず貴重品はちゃんと別の場所にしまっとかないと駄目だな、なんて思いながら呟いた僕に、ルネはなんだかとても嬉しそうに頷いた。
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