18 / 32
4-4
しおりを挟む
その翌朝の事だった。
昨晩は結局、リオンの幼姿に絆されまくって色んな我儘を聞いてしまった。子供たちの小さな頃の事を思い出してしまって、どうにも弱いらしかった。
ただリオンの場合、幼姿なのは体だけだ。頭の回転はもちろん大人のそれである。……このままでは本当に、子供に弱いダメ親父一直線ではないか。
そう思って、今日からはちゃんとリオンには厳しくいく。だなんて、俺は寝起き眼にそんな事を思っていたのだ。本気で、ちゃんと、まるで父親のようにそう考えていた。
そして、朝、目を開けて一番に飛び込んできたその光景に、俺は早速後悔する事になった。意識は一気に覚醒した。
同じベッドにはリオンが眠っている。昨晩、寂しいだ何だのぐずる彼に思わず、同衾を許してしまったのだ。
まぁ別に、この姿ならば子供に添い寝する親だろうと言う事で、今日だけ、という約束を交わして眠りについた。
だがもちろん、それはリオンが小さな子供の姿だったからこそ許したという話なのであって。
寝て覚めてみたら青年の姿に戻っているだなんて。一体これをどうしてくれようか。
しかも勘違いでなければ、リオンはまさかの素っ裸である。
「……」
眠っている途中で変化が緩みこんな姿になってしまったのだろうとは思うのだが。俺の上衣の中にまで手を突っ込んで幸せそうに眠る姿は、色んな意味で破壊力が抜群だった。
あんまりな光景に、俺は無言でしばらくリオンを見つめた。
「……おい、起きろリオン。お前、何でデカくなってんだよ……寝起きから台無しだ」
「うっ……ん?」
目の前にある頭を揉みくちゃにすると、リオンは身じろぎをした。かと思えば、リオンは俺の胴体へと回している腕で抱き寄せたかと思うと、その顔を俺の胸元へとぐりぐり押し付けてきたのだ。
まぁ、大人の姿でこれをやられて破壊力抜群。しかもこの時の力強さったらなかった。
「痛い痛い痛いっ、折れる! 折れる! リオン!」
「!」
堪らず目の前にあった頭を平手で叩いてししまった。だが、そのおかげで俺の体は解放される。流石にそれで覚醒したリオンは、ゆらゆらと頭を揺らしながら、ゆっくりとその上半身を起こした。
「いったーい、なにぃ? おはよう、ギルバート」
「おはよう。色々と言いたい事はあるがまずは服を着ろ。裸だぞ」
「え? あ、ほんとだ。色々変化とけちゃった。練習したんだけどなぁ……えいっ!」
ポンっと軽い音を立てて、リオンの体に服が装着される。それでようやく安堵した。
自分と同じモンぶら下がってはいるものの、なまじお綺麗なリオンは俺の目にも少々毒だった。芸術品のように整った顔立ちが自分に付き従うだなんて、何だかイケナイ事でもしている気分になる。
そんな内心を押し隠して、俺は盛大に溜息を吐く。先が思いやられた。
「まったく、寝起きに何てモン見せんだ……」
「ええー、でも僕の人間の姿、綺麗でしょ?」
「……どっからその自信は湧いてくるんだよ」
やけにハッキリと言うその物言いに、俺はチクリと小言を返した。内心では考えが覗かれたようでちょっぴりドキドキしていたりするが。
そして、その後に続くリオンの言葉に俺は耳を疑う事となる。
「色んな人に褒められたんだよ? 僕の身体綺麗だって」
その言葉に一瞬、俺は頭が真っ白になった。まさか、この純真無垢な聖獣がそんな事を言うだなんて思ってもみなくて。
俺はその場で飛び起きた。
「おいちょっと待てリオン! 色んな人に褒められるって、一体それどういう状況だ⁉︎」
内心ではまんま保護者気分だ。ほとんど叫ぶようにそう言えば、リオンはキョトンと俺を見つめながら何でもない事のように答えた。
「え? えっと……にんげんの街で誘われて?」
「……つまり、自分を買えっていうオンナにか」
「お金払うからって……おとこのひともいたよ?」
「はぁ⁉︎」
崖から突き落とされたような心境でもって、俺はリオンに掴みかかって問い詰める。そりゃもう、まんま保護者の心境だ。
今なら分かる。もし、シャロンが嫁に行くとなったらきっと、こんな心境になるのだろうけれども。状況が状況なだけに、それよりももっと悪かった。まるで、我が子の犯罪被害の告白を受けているかのような。
「だってー、どうしてもって言うから」
「ナニかされたのか」
「体ベタベタ触られたりしたけど……ヤダって言えば止めてくれたよ!」
次々に飛び出すリオンの暴露に、俺はもう呆然とするばかりだった。
あのままリオンを一人で行かせるべきではなかったんではないか。ショックで碌に働かない頭で、ぐるぐると同じ事を考えた。
「止めてくれたよってな、そういう問題じゃねぇんだよ! っとにかく、そういう人間には今後絶対ついて行くなよ!」
「えー……でもみんな色々教えてくれ……」
「よ、余計にダメだ! 何だそのっ、教えてくれるってのは!」
叫びながら言えば、リオンは頬を膨らませる。全くもって反省する様子はない。まるで、夜遊びに興じる娘を諌めるような気分だった。
いつどこで誰と何をしていたんだ! なんて問い詰めて聞きたいような聞きたくないような……。
しかし、そんな俺の心配をよそに、リオンは悪びれもせずに笑顔で言う。
「きもちいことーー」
「待てっ、やっぱり言うな! もうそれ以上何も言うな! 俺は聞きたくねぇ!」
リオンの言葉を遮りながら俺は叫んだ。
知らぬ間に経験を積んでいたリオンにショックを受けていた。……大人の階段は何処まで登ってしまったのだろうか、なんて思う。気にもなるけれども絶対聞きたくねぇ。
そんな複雑な心境で、俺はその場で頭を抱えた。
「もー、ギルバートは我儘だなぁ。あ、大丈夫だよ、心配しないで! 僕が一番好きなのはギルバートだから!」
そう、全く無邪気に言ってくれるリオンに俺は、酷い不安を覚えていた。
昨晩は結局、リオンの幼姿に絆されまくって色んな我儘を聞いてしまった。子供たちの小さな頃の事を思い出してしまって、どうにも弱いらしかった。
ただリオンの場合、幼姿なのは体だけだ。頭の回転はもちろん大人のそれである。……このままでは本当に、子供に弱いダメ親父一直線ではないか。
そう思って、今日からはちゃんとリオンには厳しくいく。だなんて、俺は寝起き眼にそんな事を思っていたのだ。本気で、ちゃんと、まるで父親のようにそう考えていた。
そして、朝、目を開けて一番に飛び込んできたその光景に、俺は早速後悔する事になった。意識は一気に覚醒した。
同じベッドにはリオンが眠っている。昨晩、寂しいだ何だのぐずる彼に思わず、同衾を許してしまったのだ。
まぁ別に、この姿ならば子供に添い寝する親だろうと言う事で、今日だけ、という約束を交わして眠りについた。
だがもちろん、それはリオンが小さな子供の姿だったからこそ許したという話なのであって。
寝て覚めてみたら青年の姿に戻っているだなんて。一体これをどうしてくれようか。
しかも勘違いでなければ、リオンはまさかの素っ裸である。
「……」
眠っている途中で変化が緩みこんな姿になってしまったのだろうとは思うのだが。俺の上衣の中にまで手を突っ込んで幸せそうに眠る姿は、色んな意味で破壊力が抜群だった。
あんまりな光景に、俺は無言でしばらくリオンを見つめた。
「……おい、起きろリオン。お前、何でデカくなってんだよ……寝起きから台無しだ」
「うっ……ん?」
目の前にある頭を揉みくちゃにすると、リオンは身じろぎをした。かと思えば、リオンは俺の胴体へと回している腕で抱き寄せたかと思うと、その顔を俺の胸元へとぐりぐり押し付けてきたのだ。
まぁ、大人の姿でこれをやられて破壊力抜群。しかもこの時の力強さったらなかった。
「痛い痛い痛いっ、折れる! 折れる! リオン!」
「!」
堪らず目の前にあった頭を平手で叩いてししまった。だが、そのおかげで俺の体は解放される。流石にそれで覚醒したリオンは、ゆらゆらと頭を揺らしながら、ゆっくりとその上半身を起こした。
「いったーい、なにぃ? おはよう、ギルバート」
「おはよう。色々と言いたい事はあるがまずは服を着ろ。裸だぞ」
「え? あ、ほんとだ。色々変化とけちゃった。練習したんだけどなぁ……えいっ!」
ポンっと軽い音を立てて、リオンの体に服が装着される。それでようやく安堵した。
自分と同じモンぶら下がってはいるものの、なまじお綺麗なリオンは俺の目にも少々毒だった。芸術品のように整った顔立ちが自分に付き従うだなんて、何だかイケナイ事でもしている気分になる。
そんな内心を押し隠して、俺は盛大に溜息を吐く。先が思いやられた。
「まったく、寝起きに何てモン見せんだ……」
「ええー、でも僕の人間の姿、綺麗でしょ?」
「……どっからその自信は湧いてくるんだよ」
やけにハッキリと言うその物言いに、俺はチクリと小言を返した。内心では考えが覗かれたようでちょっぴりドキドキしていたりするが。
そして、その後に続くリオンの言葉に俺は耳を疑う事となる。
「色んな人に褒められたんだよ? 僕の身体綺麗だって」
その言葉に一瞬、俺は頭が真っ白になった。まさか、この純真無垢な聖獣がそんな事を言うだなんて思ってもみなくて。
俺はその場で飛び起きた。
「おいちょっと待てリオン! 色んな人に褒められるって、一体それどういう状況だ⁉︎」
内心ではまんま保護者気分だ。ほとんど叫ぶようにそう言えば、リオンはキョトンと俺を見つめながら何でもない事のように答えた。
「え? えっと……にんげんの街で誘われて?」
「……つまり、自分を買えっていうオンナにか」
「お金払うからって……おとこのひともいたよ?」
「はぁ⁉︎」
崖から突き落とされたような心境でもって、俺はリオンに掴みかかって問い詰める。そりゃもう、まんま保護者の心境だ。
今なら分かる。もし、シャロンが嫁に行くとなったらきっと、こんな心境になるのだろうけれども。状況が状況なだけに、それよりももっと悪かった。まるで、我が子の犯罪被害の告白を受けているかのような。
「だってー、どうしてもって言うから」
「ナニかされたのか」
「体ベタベタ触られたりしたけど……ヤダって言えば止めてくれたよ!」
次々に飛び出すリオンの暴露に、俺はもう呆然とするばかりだった。
あのままリオンを一人で行かせるべきではなかったんではないか。ショックで碌に働かない頭で、ぐるぐると同じ事を考えた。
「止めてくれたよってな、そういう問題じゃねぇんだよ! っとにかく、そういう人間には今後絶対ついて行くなよ!」
「えー……でもみんな色々教えてくれ……」
「よ、余計にダメだ! 何だそのっ、教えてくれるってのは!」
叫びながら言えば、リオンは頬を膨らませる。全くもって反省する様子はない。まるで、夜遊びに興じる娘を諌めるような気分だった。
いつどこで誰と何をしていたんだ! なんて問い詰めて聞きたいような聞きたくないような……。
しかし、そんな俺の心配をよそに、リオンは悪びれもせずに笑顔で言う。
「きもちいことーー」
「待てっ、やっぱり言うな! もうそれ以上何も言うな! 俺は聞きたくねぇ!」
リオンの言葉を遮りながら俺は叫んだ。
知らぬ間に経験を積んでいたリオンにショックを受けていた。……大人の階段は何処まで登ってしまったのだろうか、なんて思う。気にもなるけれども絶対聞きたくねぇ。
そんな複雑な心境で、俺はその場で頭を抱えた。
「もー、ギルバートは我儘だなぁ。あ、大丈夫だよ、心配しないで! 僕が一番好きなのはギルバートだから!」
そう、全く無邪気に言ってくれるリオンに俺は、酷い不安を覚えていた。
0
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
果たして君はこの手紙を読んで何を思うだろう?
エスミ
BL
ある時、心優しい領主が近隣の子供たちを募って十日間に及ぶバケーションの集いを催した。
貴族に限らず裕福な平民の子らも選ばれ、身分関係なく友情を深めるようにと領主は子供たちに告げた。
滞りなく期間が過ぎ、領主の願い通りさまざまな階級の子らが友人となり手を振って別れる中、フレッドとティムは生涯の友情を誓い合った。
たった十日の友人だった二人の十年を超える手紙。
------
・ゆるっとした設定です。何気なくお読みください。
・手紙形式の短い文だけが続きます。
・ところどころ文章が途切れた部分がありますが演出です。
・外国語の手紙を翻訳したような読み心地を心がけています。
・番号を振っていますが便宜上の連番であり内容は数年飛んでいる場合があります。
・友情過多でBLは読後の余韻で感じられる程度かもしれません。
・戦争の表現がありますが、手紙の中で語られる程度です。
・魔術がある世界ですが、前面に出てくることはありません。
・1日3回、1回に付きティムとフレッドの手紙を1通ずつ、定期的に更新します。全51通。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる