魔王が多すぎるこの世界では

蒼月 梨奈

文字の大きさ
6 / 18
勇者御一行の大奮闘編

それでも一応、調律はとれてい“た”

しおりを挟む
「すげえええええ!!」
「流石ルー!!」
「えっ、嘘、本当に!?」
「後から『嘘ぴょーん♪』とかないですよね!?」
現在、パーティー全員でルーを絶賛しています。レナとミーちゃんは半分疑ってるっぽいけど仕方ない。何故なら!!

「68万体位までに絞れたわ!最強魔王中じゃなくて、全魔王中!!」
という驚きの発言をしたからだ。最強魔王中でもそこまで絞れるのは既に奇跡の域なのに、それが全魔王中!!全世界の全種族が拍手喝采して、更にファンファーレ吹きまくる位の奇跡だ。え、俺?楽器出来ないから取り敢えず跳んどくよ☆タンバリンすらまともに演奏できない人が此処にいますよ~っと。まあそれは、箱詰めして袋で包んで川の上流から流すとして。

「【キング・オブ・情報通】と名高い魔王からその肩書きに恥じない、有力な情報を大量にゲットしたわ!」
「……魔王にもいるんだね。そういう奴…………」
うん、あるあるだよね。異様に情報持ってる奴が友人の中の誰かにいるの。しかもまるで図ったかのように絶妙なタイミングで、その中の必要としている情報だけを厳選してそれを提供する……怖っ!よく考えたら超怖いんだけど!?あの人達いったい何者!!?

「まあ、大変なのはここからだよね……」
「68万体の魔王…………虱潰ししらみつぶしに訪ねてまわるしかありませんしね……」
「めんどくせぇ……心の底からめんどくせぇぇえええ!!」
「ジル、黙れ。煩い。耳障り。イラつきが増す!」
レナ……今のは流石に酷いよ……流石のジルも今のは傷付いて…………
「だってよ~めんどくせぇじゃんかよ~!!」
ない!?ジルのメンタルは武器屋で売られてる武器並か!?あれら伝説の武器とかでもないのに絶対に壊れないよね!どうやって作ってるんだろうね!!

「はい、これ絞った魔王68万体の場所を示した地図。この赤いバツ印の付いた所にいるから、その辺りを探せばいいわ」
「ありがとう!助かった~っ!!」
いやー、あの王様よりよっぽど助かった!!この国に住みたいなあ……政策もルーならテキトーにせずちゃんとやってくれそう。きっと消費税も、ルーレットで決めたりしないに違いない。

「よーっし!じゃあ皆!頑張って悪い魔王を倒そう!!」
「おおーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「と、その前に話があるの、ディル!」
「へ?」
せっかくかけ声したのに……どうしたんだろ、レナ。
「……魔王退治を忘れてたことに対して何か言い訳はある?幼馴染みのよしみとして、聞いてから燃やしてあげる♪」
「あ」
忘れてたあああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!




バタバタとけたたましく足音を立てて出ていった勇者達。その後ろ姿が見えなくなってもなお、魔王の少女はクスクスと笑っていた。
「ああ、可笑しい。相変わらずディルは面白いわ」
ひとしきり笑った少女は、笑い疲れたのかゆっくり息を吐いた。そして、ふと真剣な表情に変わる。
「にしても、脅威をもたらす魔王、ねぇ…………」
彼女は玉座から立ち上がり、窓の方へ歩み寄ると、シャッ、と真紅のカーテンを開いた。月の光が差し込み、ルーナシアの髪は銀色に煌めく。

「……この世界は、魔王が多すぎる世界。人類の代表とも言える、勇者とのバランスが全くと言っていい程取れていない」
彼女は窓を開け、星の輝く夜空を見上げる。
「……それでも、魔王達は人々と友好関係を築いたり、国同士で不可侵条約を結んだり、互いに敵対し合わないことでそのアンバランスさを無理矢理とはいえ釣り合わせていた」

「なんだかんだ、調律は取れていた
魔王はため息を1つ吐くと、決意のこもった表情かおで一匹の召還獣を呼び出した。
「我が友よ。汝と盟友の契約を結びし我の元へ姿を現し給え。我は汝の為に魔力を与えん。汝は我の為に力を貸さん。汝の名は────────シュメ」
彼女の前に現れたのは、紅く美しい鳥。彼女が自分の召還獣に何かを命じると、その鳥は窓から羽ばたき飛んで行った。

「頼んだわよ。このままでは──────────


────────────────────いずれ調律が崩れ、本当に世界が壊れてしまうかもしれない」

少女は窓を閉めると、はた、と何かに気付いたように動きを止めた。






「ディル達が来たのって、昼と夕方の間位の時間よね?今………………思いっきり真夜中なのだけれど」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...