ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 鼻歌まじりの上機嫌ドロプウォートを先頭に森を行く四人――

 やがて森が終わり、明らかに人の手により整備された小道に出ると、今度は道なりに更に北上し、程なく四人の前に豊かな穀倉地帯が姿を現した。
 道を挟んで両側に、小麦であろうか、どこまでも黄金色にたわわに実る穀物畑に確かな手ごたえを感じつつ、意気揚々歩みを進め、 小高い丘の頂に立った四人は、

「「「「!!!」」」」

 両眼をカッと見開き、打ち震えるほどの感動で、

「つ、着いたぁよぉ……」
「着きやがったぁねぇ……」
「着きましたでぇすわぁ……」
「着きましたでぇすぅ……」

 未だ距離はあるものの、生活感あふれる家々の姿を目の当たりに、

『『『『着いたぁああぁぁああぁぁーーーーーーーーーーーー♪』』』』

 一斉に走り出した。
 満面の笑顔のラミウムを背負ったまま、笑顔全開疾風の如く駆けるラディッシュと、追いつけ追い越せの笑顔で後を追い走る、ドロプウォートとパストリス。
 歓喜に満ちた四人は村へと駆け込み、

 ガシャァーーーン!
「「「「なんでぇ???」」」」

 獄中に居た。
 地下に造られた石造りの薄暗い牢獄の中、キョトン顔で首を傾げる四人に対し、

『「なんで」じゃないだろぅ!』

 牢の外から容赦なくツッコミを入れたのは、素人目から見ても「村民の一人」と分かる牢番の男。
 男は怒りで血相を変え、
「国が大変な時に「天世様と勇者様、四大様のフリ」なんかしやがってぇ!」
 見下す眼差しに、

「ちっ、違いますよ! だから僕達はぁ!」

 ラディッシュは何度となく訴えた弁明を繰り返そうとしたが、
「黙れぇ! この恥知らずの「火事場泥棒」共がァ!」
 聞く耳を持たれず、呆然と立ち尽くしていると、

『止めときぃなや、ラディ。何を言っても無駄さぁねぇ』

 ラミウムが、座っていた粗末なベッドの上にゴロリと寝転がり、
「時間と体力のムダさぁね」
 いつもの涅槃図姿でフッと小さく笑い、
「それに捕まってりゃぁ、ご丁寧に「城まで送って(護送して)くれる」ってんだぁ。まったく有難い話じゃないさぁねぇ」
「そっ、それはそうかもだけどぉ……」
 どの様な扱いを受けるか不安なラディッシュが困惑声を上げると、

『ラディの言う通りですわぁ!』

 同意のドロプウォートも怒りの地団駄踏みながら、
「犯罪者として城に護送されるなど、私は「お父様とお母様」にどんな顔向けしたら良いですの!」
 そこへパストリスも参戦し、
「このまま捕まってぇしまったら、父さんの名誉がぁ!」
 詰め寄る三つの顔にラミウムは、

「あぁ~もぅ暑っ苦しいぃねぇ! ウッサイたらぁありゃしないさぁね!」

 辟易顔を返すと、上階から、
『どうされたんですか若司祭様、この様な場所へ?』
 入口を警備していると思われる男の声がし、
『はい。国が定めた「不可侵領域」から村に入り、あまつさえ天世様の仮装までして村に侵入した「不届き者が居る」と聞きましてね』
 若司祭と呼ばれた男の返す口調はどこまでも平静で、穏やかであり、その様な人物に対して警備の男は呆れ交じりに、
『そぅなんですよ「今回の連中」はぁ。ではまさか、そんな連中の為にも説教を?』
『その様なものですね』
 静かな頷き声に、警備の男は感動した様子で、

『分かりましたぁ!』

 畏敬を抱いた返事を返すと、
 ガシャ!
 施錠が外される金属音と共に、木戸が「キィ」と開く音が聞こえ、

『コチラです』
『ありがとうございます』

 石段を一つ一つ踏み鳴らす木靴の音が近づき始め、やがて四人の前に、白装束を纏った司祭が、穏やかな微笑みを浮かべて降りて来た。
 就任して間もないのか「若司祭様」と呼ばれていただけあって、見た目年齢的にはラディッシュ達と変わらない感じであったが、その落ち着き過ぎる物腰は、初対面ながらもむしろ不相応に思えた。

 若司祭は変わらぬ笑みのまま、ラディッシュ達が捕えられた牢の鉄格子に歩み寄ると、
「例え生活に困っていたとしても、この国難と言う非常時に、勇者様と四大様のフリまでしての「たかり」とは、いけませんねぇ」
見た目通りの柔らかな物言いに、ラディッシュは「話が通じる相手」と感じ、

『ちっ、違うんです司祭様ぁ!』

 村人たちに聞いてもらえなかった弁明をしようと、
「本当に僕たちは!」
 声を上げたが、若司祭は二の句を遮る様に、
「しかも今回は「天世様のお姿」まで真似るとは……」
 悲し気に首を振り、仮面の様な変わらぬ笑顔で、
「天罰が下りますよ」
「!」
(あ……ダメなんだ……この人も……)
 思い知り、天国から地獄。

 ラディッシュが肩を落とすと、ベッドに横たえたラミウムが唾棄する様に、
「止めときぃなや、ラディ。ソイツ等の「作り笑い」なんぞに、ほだされるじゃないよ」
 しかし若司祭は「売り言葉」を気にする素振りも無く、作り笑顔さえ崩すことなく、
「おやぁおやぁ随分な物言いですねぇ」
 黙考し、

「そうですか。貴方が「頭目」なのですねぇ?」
「ッ!」

 カチンと来たのは、むしろドロプウォート。
(司祭ともあろう者が人の話に耳も貸さず、手前勝手な決めつけでぇ人を見下すなどぉ!)
 苛立ちを露わに、

『私はオエナンサ家の一人娘「ドロプウォート」ですわ! 私の身元ならばスグに確認も出来ましょう!』

 怒りを以て言い放ったが、若司祭の「作った笑み」は変わらず、
(ラミィのからかい以上に、何だかとても「腹の立つ笑顔」ですわぁ!)
 内心で苦々しく思っていると、
「確かにそうですね」
(!)
 交渉の余地が見え、
「ではさっそく確認を!」
 薄っすら差した希望の光にドロプウォートが身を乗り出したのも束の間、若司祭はまたも変わらぬ笑みのまま、

「ですが残念ながら、城から派遣され、村の警備に当たっておいでの騎士様方が「あの様な女騎士は見た事がない」と申しておりました」
「なっ?!」

 思いがけない言葉に、絶句するドロプウォート。
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