ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-22

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 騒動が収まってしばし後――

 森に漂う、しょうゆと砂糖と、肉の脂が溶け合った甘辛い香り。
 香りだけでも十分に美味しいと分かる肉料理が、竈に置かれた持ち歩きサイズの鉄板の上で、じゅうじゅうと小気味好い音を立てている。
 空腹を誘う香りと音の中、別で炒めた根菜類を、炊いた穀物を盛ったお椀に盛る、竈係ターナップ。
 ラディッシュ先生直々の味見は済んでおり、真っ先に完成品を手渡されたのは当然、

「「♪」」

 キーメとスプライツ。

 お椀からほかほかと立ち昇る、食材が混じり合った、垂涎物の「完成形の湯気」に二人は笑顔を綻ばせ、
「「パパぁ♪」」
「ん?」
「「このリョウリのなまえは、なんなぉ?」」
「え?」
 記憶がなく、体が覚えている感覚で作ったが故に、相変わらず返答に困り、

「えとぉ……は、ハクさぁあぁん!」

 助けを求め、求められた彼は仕方が無いと言った素振りで、
「味を染み込ませた肉を焼いた料理だから……「漬け丼」? 言うなら「漬けカルビ丼」ってとこかなぁ?」
「へぇ~「漬けかるび丼」かぁ~」
 自ら作っておきながら、他人事の様な感嘆。
 違和感からドロプウォート達が苦笑していると、

『『たべてイイなぉ???!』』

 待ちきれない様子の幼子二人に、
「モチロン♪」
 ラディッシュが笑顔で答えると、二人は木製スプーンで、二人用に「小さい一口サイズ」に切り分けされた「味付きカルビ肉」をパクリ。
 少々熱かったのか、はふはふ言いながら口をモグモグさせたが、固唾を呑んで見守る仲間たちの前で、ゴクリと飲み込んだ途端、

『『おいひぃ!!!』』

 満面の笑顔で咆哮し、二口、三口と、むさぼる様に食べ始め、そのウソ偽りを感じさせない笑顔に、
「美味しく食べてくれて、ありがとうぅ♪」
 むしろ、心からの感謝を伝えるラディッシュ。

「そう言えば、ハクさん」
「?」
「地球の、僕が居た国では食事の時、何か言ったりするの? 神様に感謝、みたいな?」

 するとハクサンは、
「そうだねぇ~神様に言う人も居たけどぉ~」
 一考し、

「一般的には、自然の恵みに感謝の気持ちを込めて「いただきます」って、言ってたかなぁ? それと食べ終わった後に「ごちそうさま」って。命を頂く訳だからってさぁ」
「へぇ……「いただきます」と「ごちそうさま」か……」
 ラディッシュは教えられた言葉を反芻し、

(どうしてかなぁ……記憶は無いのに、何処か懐かしい気がする……)

 思い耽っていると、

「良き習わしですわねぇ、ラディ♪」

 ドロプウォートがニコリと笑い、同じ感想を持っていたラディッシュも、
「うん。僕も、そう思うよ♪」
 笑みを浮かべると仲間たちも笑みを見せ、ドロプウォートは食事中の二人に語りかけるように、
「キーメ、スプライツ」
 優しく声を掛けたが、二人は彼女の意図を既に察した様子でスプーンを片手に、

「「「いただきます」と「ごちそうさま」なぉ♪」」

 振り向いた天使の笑顔に、
「エライですわぁ、お二人ともぉ~大変良く出来ました、ですわぁ~♪」
 緩んだ笑顔で二人の頭を撫でくりまわした。
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