ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-37

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 仲間たちの驚く姿を目の当たりに、ハクサンは段上の玉座の前で満足げな高笑い、

「ハァーハッハッハッ! 気付かなかったろぉ! 地世のチカラを、天世のチカラでコーティングして隠していたからねぇえ!」

 狂気に取り憑かれた笑みを見せた。
 悲鳴を上げた重鎮たちの全身が、次々地世の靄に取り込まれて行くさ中、

『ひぃいぃぃいぃ!』

 玉座まで続く赤絨毯の中央に転がり出る一人の中年男性。
 謁見の間に同席していた事から、何かしらの要職に就いている人物の筈であるが、彼だけは「合成獣化の術」が発現せず、玉座のハクサンは見知らぬ者を見つけた眼で半笑い、
「おやおや「招かれざる客」が混じって居たようだねぇ~」
 見下ろす不敵な笑いに、
「ひぃ!」
 怯えた男性が尻餅をついたまま後退ると、ラディッシュ達がハクサンの視界から彼を守る様に、壁となって瞬時に立ち並び、

『今のうちに早く逃げて下さぁい!』

「はひぃ!」

 男は礼も言わずに慌てふためき、翻筋斗(もんどり)を打つように謁見の間から駆け出して行った。
 その背を、段の上から見下ろすハクサン。
「やれやれ相変わらずぅお優しい事だねぇ~」
 皮肉交じりに呆れ笑うと、慈悲なく合成獣化していく幼王アルブルの姿を目の当たりにしたターナップが怒りを抑えきれず、

『テメェこそ、人の命を何だと思ってやがァる! 王様とは言え、そんな小さな子供にまでぇ!!!』

 こめかみの血管がキレそうな勢いで怒りを露わにしたが、
「ん?」
 彼は「それが何か」と言わんばかりに、ヘラっと一笑いしてから、
「幼児好きのキミとしては我慢ならないかぁい?」

『んなぁ!? 誰が「幼児好き」かァ!』

「でも安心して良いよぉ。だってぇ、ぼくぁ術を施すより前に壊れちゃってたからねぇ♪」
「そう言う事を言ってんじゃねぇ!」
 即座に否定したが、共に身構える仲間たちは、
((((((…………))))))
 即答で「ターナップに同意」する事が出来なかった。
 内心での正直な話、改めて指摘されて思い返してみると、ちょっと気になる節が、チョイチョイあったから。
 仲間たちから発せられる、何とも言えない微妙な空気に、

『ちっ、違うっスよぉ!』

 ターナップは少々慌てた様子で、
「確かに「子供は好き」っスけど! そう言う意味じゃねぇっスぅ!!!」
 少々狼狽した否定ではあったが、ラディッシュ達はハクサンが向けるニヤケ顔から、

((((((!))))))

 ハッと我に返り、「うっかり?」彼の口車に乗せられ大切な仲間(ターナップ)に疑いを持ってしまったのを自省する様に、
「うっ、うん! モチロンだよぉ!」
「わっ、分かっていますですわぁ!」
「でっ、でぇすぅでぇすぅ!」
「うっ、ウチ等は分かってるさぁ!」
「しっ、信用してるって、ますわよ!」
「だぁ、ダイジョウブなぉ! わかってるぅなぉ!」
 その焦り交じりの誤魔化し笑いに、

(本当っスかぁ……)

 仲間たちの目に自分がどう映っているのか、少々不安になるターナップであった。
 そんな緊張感を欠いた「コントの様な押し問答」の間にも、手の施しようのない合成獣化は進み、

『『『『『『『『『『キィッシャャアアァァッァァァ!』』』』』』』』』』
(((((((!)))))))

 獣の奇声に緊迫の現状を思い出したラディッシュ達の眼に飛び込んだのは、見上げる程の体躯の、顔と上半身に「獅子の姿」を、下半身に「山羊の姿」を、そして大蛇の尾を持った、合成獣と呼ぶに最もふさわしい、

≪キマイラ≫

 ギラつく巨大な犬歯の間から炎を吐き、彼ら、彼女たちを見下ろす。
 圧倒的存在感を放つキマイラの群れの迫力に取り囲まれ、ラディッシュ達が思わず息を呑む中、ハクサンは段の上から闇に歪んだ満面の笑顔で、

「ハァーハッハッハッ! ぼくぅの研究の成果だよォ!! 今までの合成獣と同じと思わない事だねぇええぇ!!!」

 高笑い、
「因みに、今ので城下の「一部の兵たち」も合成獣化したからねぇ♪ さぁどぅ世界を護る、勇者諸君! ハァーハッハッハッ!」
 からかいを交えた狂気染みた笑いと共に、謁見の間から駆け出して行ってしまった。
 結果を見届ける事も無く。
 思い改めさせようと、

『まっ、待ってハクさぁあぁん!』

 懸命に名を呼ぶラディッシュ。
 しかし「その想い」は、グルリと周囲を取り囲むキマイラの群れの中で埋もれて届かず、チィックウィードを背に守るターナップが苦虫を噛み潰したよう顔して、

「あぁんのヤロォ! テメェ一人でとっとと逃げやがったァ!」

 唾棄する様に吐き捨てたが、ドロプウォートは違和感を持った。
(天世に対して蜂起しておいて、彼に逃げ場など「この世界に」ありますの? いえ、それ以前に、彼の歪んだ性格を鑑みれば……)
 そして浮かんだのは、

『地下ですわァ!』
((((((ッ!))))))

 瞬時に意味を悟り、驚愕するラディッシュ達。
 ハクサンの企みが「蜂起」などと生易しい物ではなく、開発中と言っていた兵器を使った「天世の壊滅」であるのに気付き。
 するとニプル、パストリス、カドウィード、ターナップ、チィックウィードがアイコンタクトを交わし合い、同意の表情で頷き合うと、

『ラディ! ドロプッ!』
「「?!」」
「ここはウチらに任せて二人はアイツを追うのさァ!」
「「え!?」」

 ニプル達からの申し出にギョッとする二人。
 ハクサンの自信作であるキマイラの一体一体から感じるチカラは、これまで遭遇した合成獣たちの比ではなかったから。
「「…………」」
 惑う二人。

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