ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-38

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 仲間たちの身を案ずればこそ、共に戦う事が最良と二人には思えたが、カドウィードはその優しさを突き放すが如く、

『迷っている場合かァ! もとい、場合じゃなくてよ!』
「でぇすでぇすゥ!」

 パストリスも同意を示し、
「パパ! ママ! がんばってなぉ♪」
 チィックウィードも天使の笑顔を見せると、
「そぅッスよ兄貴、姉さん、俺らを信じるっス! 突破口なら俺らが作って見せるっス!」
 ターナップの後押しに、もはや二人は躊躇している場合ではなかった。
 ためらいを覚えていると言う事は、仲間たちのチカラを信用していないのと同意であると理解したから。

 二人はチィックウィードの小さな体をそっと優しく抱き締め、抱き締め合い、再び会える誓いを立てるかのように、
「僕は(いつもの逃げ腰じゃなく)、チィちゃんに誇れる戦いをしてくるね♪」
「パパ……」
「私も貴方のママとして、軟派男の性根を「叩き直して来ます」ですわ♪」
「ママ……」
 今の時を惜しむかのように抱き合う三人と、そんな三人を護る様に、周囲のキマイラ達に切っ先を向け接近を牽制しつつ、温かく見守るニプル達。

 しかし、いつまでも留まっている訳にはいかず、ニプルは小さく息を吐くと凛然とした表情でカッと両目を見開き、

『それじゃ行くさァ!』

 気合いの入った声に呼応し、
「「「ッ!」」」
 凛と身構える、パストリス、ターナップ、カドウィード。

 ラディッシュ、チィックウィード、ドロプウォートの三人も、名残惜しみながら離れると、ニプルは掛け声の勢いそのままに、 
≪天世より授かりし恩恵を以て我らは戦う!≫
 その身を白銀の輝きに包み、ターナップ、カドウィード、チィックウィードも白銀の輝きを放ち、パストリスは地世のチカラを解放。漆黒の輝きを放ちながら、耳と尾を出現させて本来の姿に戻り、五人は数頭のキマイラが立ち塞ぐ、ハクサンが逃げた方へ向かって、

≪天雷夜行(てんらいやぎょう)さァアァ!≫
≪天水連弓(すいてんれんきゅう)!≫
≪地技! 黒焔双波(こくえんそうは)なのでぇすぅ!≫
≪天技! どきやがれぇオラるぁあっぁぁあ!≫
≪≪みちをあける(なのぉん・なおぉん)!≫≫

 放出系の御業を使って強制的に退かせ、ハクサンの後を追える通り道が出来ると、

『行きますよラディ!』
『うん、行こうドロプさぁん!』

 二人は仲間たちに一瞥もくれずキマイラの群れの間を駆け抜けた。
 必ず、再び会えると信じて。

 一方の天世では「ハクサン蜂起」の急報と、それを裏付けする観測班からの、王都アルブレスにおける「強大な地世のチカラの大量発生」の速報により、
「奴め、ついに本性を現しおったか!」
「よもや天世に直攻撃などあるまいな!」
「アルブル国が滅んでしまっては地世と戦えぬぞ!」
「早急に「部隊の編制」を行い、向かわせねばならぬぞぉよ!」
 今更ながらの、右往左往。
 
 相も変わらず危機感が薄く、有事が起きてから動いていては遅いのである。
 しかし、そんな御歴歴の「慌てふためく姿」を陰ながら嘲笑うスパイダマグの姿は、いつもの物陰に無かった。
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