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第六章
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しばし後の「謁見の間」にて――
玉座から明王の如き険しい表情で何かを見下ろす、カルニヴァ王。
そんな彼の視線の先、目を伏せ跪く一人の貴族の姿が。
ラディッシュ達がカルニヴァ国に入国し、カルニヴァ王と久々となる謁見を果たした折、クルシュ達団長クラスと同席していた新参幹部の一人である。
恭しく頭を下げたままの彼の眼前に、
ゴドッ!
カルニヴァ王は玉座に座したまま「例の毒付きナイフ」を投げ置き、
「城内警備担当であるキサマの部下が持っていた物だ。何か申し開きはあるか、グラッセ」
しかしグラッセと呼ばれた新参幹部騎士は慄きもせず、たじろぐ様子も見せず、粛々と、
「不要な武器を所持していた事につきましては、私の監督不行き届き。なれど相手は大人であります。一人一人の所持品まで検査する訳には、」
「それが我が妹であり、妻である「皇女の命を狙った物」としてもか?」
平静な言葉なれど責めの口調に、
『なぁんとぉ! 我が配下にその様な不埒者が居りましたとはぁ!』
彼は即座に。大根役者の如き大袈裟な驚きを以て、
「それは誠に申し訳なく事実なれば何と謝罪を致せば良いか!」
「あくまで貴様は「知らぬ」と申すか」
「よもやぁ陛下は「私が」その様な指示を与えたとお考えでぇ?! めっ、滅相も御座いませぇん!」
「ほぅ?」
カルニヴァ王は怒りを交えた不敵な笑みを浮かべると、
「実はな、勇者殿の御仲間には「尋問の術」に長けた者が居ってなぁ」
「!」
(まさかフルール国のぉ!)
瞬時にニプルウォートの顔を思い浮かべた彼は間を置かず、
「へ、陛下は異国の者の「術を用いた尋問」が自国の臣下の言葉より信用に値すると御考えでぇ!」
早口でまくし立てると、
「ならばその短剣、俺の前で抜いて見せよ」
『ふぇ?!』
「どうした? 何を躊躇う? 剣を鞘から抜くだけの事ではないか?」
「そ、それは……」
(へ、陛下は知っているのだ!)
グラッセは内心に戦慄を覚え、
(この短剣の刀身に塗られた毒は揮発性が高く、多量に吸い込んだだけで死に至るのを!)
全てが露見している可能性を悟ると、事の次第を静観するクルシュ達幹部騎士たちをチラ見、
(なればっ!)
腹を括った面持ちでガバァっと立ち上がると、起死回生とばかり、
『陛下もお分かり筈では! このままでは王家の血が途絶えてしまうのですぞ!』
あくまで忠義心からの、止むに止まれぬ所業であったのを大々的にアピールするのに転じ、
「皆とてぇ「このままで良い」などとは思っておらぬ筈ぅ!」
(幹部クラスの中から同意を引き出し放免をぉ!)
罪から逃れようと画策すると、堪え切れぬ怒りから何者かが奥歯をギリリと噛み鳴らし、
『テメェ何ぞと一緒にしてんじゃねぇえ!!!』
激昂したのはクルシュ。
国王を拝し、厳格を求められる謁見の間にて有り得ぬ怒声を張り上げ、厳罰覚悟で他の団長たちや幹部クラスたちの想いを代弁するが如く、
『そこまでの忠義があると言うなら何でテメェの手でやろうとしなかったッ!』
「!」
彼の気質の熱量を以て、
「死罪覚悟で何故にやらなかったァ!! 討ち死に覚悟で何故にやらなかったと問いている!!!」
「いっ、いや、それではぁ、」
(このぉ脳筋団長がぁ何を言う! 高貴で有能な私が死んだら誰が王位に就くと言う!)
手前勝手な持論を抱いた所へ、
「兵士の家族を事前に拉致して脅してぇ皇女の暗殺強要ォ! 一方のテメェは高みの見物ったぁ「どう言う了見だ」ってぇ聞いてんだァ!!!」
『んなぁ!? そぉ!』
(そこまでぇ全部バレてぇるぅのねぇ!!!?)
しどろもどろになった所に止めを刺すが如く、
「国策に異があるなら! 国や民を真に想うなら! 姑息なマネなんぞしねぇで何故に陛下と真正面にぶつかろうとしなかったぁ! それこそテメェに「後ろ暗い心」があった証じゃねぇのかよォオ!!!」
「ぬぐっ!」
クルシュの「真っ直ぐな心」は、グラッセの歪んだ心が生んだ詭計を撃ち抜き、
「……くっ」
彼はついに膝から崩れ落ち、両手を床についた。
万策尽きた様子をカルニヴァ王は玉座に座したまま見据えると、隣室に向け、
『勇者殿方ァーーー!』
声を張り上げ、謁見の間と繋がる隣室の扉が開き、チカラ無く振り返った彼は、
『ッ!!!?』
かつてない驚きを見せた。
まるで心臓を握られたかの如き、慄きの表情で。
入室して来たラディッシュ、ドロプウォート、ニプルウォート、カドウィードが連行する、とある人物を眼にし。
その人物は素人目にも「仕立ての良い物」と分かる服を纏った、太鼓腹が突き出た一人の男であったが、その男の表情は暮らしの豊かさを表す衣服や体躯と相反し、まるで刑の執行を目前に控えた罪人の如くに青ざめ、小刻みに震え、
(わっ、ワイルドライスぅ!)
グラッセは愕然とした表情で後退った。
玉座から明王の如き険しい表情で何かを見下ろす、カルニヴァ王。
そんな彼の視線の先、目を伏せ跪く一人の貴族の姿が。
ラディッシュ達がカルニヴァ国に入国し、カルニヴァ王と久々となる謁見を果たした折、クルシュ達団長クラスと同席していた新参幹部の一人である。
恭しく頭を下げたままの彼の眼前に、
ゴドッ!
カルニヴァ王は玉座に座したまま「例の毒付きナイフ」を投げ置き、
「城内警備担当であるキサマの部下が持っていた物だ。何か申し開きはあるか、グラッセ」
しかしグラッセと呼ばれた新参幹部騎士は慄きもせず、たじろぐ様子も見せず、粛々と、
「不要な武器を所持していた事につきましては、私の監督不行き届き。なれど相手は大人であります。一人一人の所持品まで検査する訳には、」
「それが我が妹であり、妻である「皇女の命を狙った物」としてもか?」
平静な言葉なれど責めの口調に、
『なぁんとぉ! 我が配下にその様な不埒者が居りましたとはぁ!』
彼は即座に。大根役者の如き大袈裟な驚きを以て、
「それは誠に申し訳なく事実なれば何と謝罪を致せば良いか!」
「あくまで貴様は「知らぬ」と申すか」
「よもやぁ陛下は「私が」その様な指示を与えたとお考えでぇ?! めっ、滅相も御座いませぇん!」
「ほぅ?」
カルニヴァ王は怒りを交えた不敵な笑みを浮かべると、
「実はな、勇者殿の御仲間には「尋問の術」に長けた者が居ってなぁ」
「!」
(まさかフルール国のぉ!)
瞬時にニプルウォートの顔を思い浮かべた彼は間を置かず、
「へ、陛下は異国の者の「術を用いた尋問」が自国の臣下の言葉より信用に値すると御考えでぇ!」
早口でまくし立てると、
「ならばその短剣、俺の前で抜いて見せよ」
『ふぇ?!』
「どうした? 何を躊躇う? 剣を鞘から抜くだけの事ではないか?」
「そ、それは……」
(へ、陛下は知っているのだ!)
グラッセは内心に戦慄を覚え、
(この短剣の刀身に塗られた毒は揮発性が高く、多量に吸い込んだだけで死に至るのを!)
全てが露見している可能性を悟ると、事の次第を静観するクルシュ達幹部騎士たちをチラ見、
(なればっ!)
腹を括った面持ちでガバァっと立ち上がると、起死回生とばかり、
『陛下もお分かり筈では! このままでは王家の血が途絶えてしまうのですぞ!』
あくまで忠義心からの、止むに止まれぬ所業であったのを大々的にアピールするのに転じ、
「皆とてぇ「このままで良い」などとは思っておらぬ筈ぅ!」
(幹部クラスの中から同意を引き出し放免をぉ!)
罪から逃れようと画策すると、堪え切れぬ怒りから何者かが奥歯をギリリと噛み鳴らし、
『テメェ何ぞと一緒にしてんじゃねぇえ!!!』
激昂したのはクルシュ。
国王を拝し、厳格を求められる謁見の間にて有り得ぬ怒声を張り上げ、厳罰覚悟で他の団長たちや幹部クラスたちの想いを代弁するが如く、
『そこまでの忠義があると言うなら何でテメェの手でやろうとしなかったッ!』
「!」
彼の気質の熱量を以て、
「死罪覚悟で何故にやらなかったァ!! 討ち死に覚悟で何故にやらなかったと問いている!!!」
「いっ、いや、それではぁ、」
(このぉ脳筋団長がぁ何を言う! 高貴で有能な私が死んだら誰が王位に就くと言う!)
手前勝手な持論を抱いた所へ、
「兵士の家族を事前に拉致して脅してぇ皇女の暗殺強要ォ! 一方のテメェは高みの見物ったぁ「どう言う了見だ」ってぇ聞いてんだァ!!!」
『んなぁ!? そぉ!』
(そこまでぇ全部バレてぇるぅのねぇ!!!?)
しどろもどろになった所に止めを刺すが如く、
「国策に異があるなら! 国や民を真に想うなら! 姑息なマネなんぞしねぇで何故に陛下と真正面にぶつかろうとしなかったぁ! それこそテメェに「後ろ暗い心」があった証じゃねぇのかよォオ!!!」
「ぬぐっ!」
クルシュの「真っ直ぐな心」は、グラッセの歪んだ心が生んだ詭計を撃ち抜き、
「……くっ」
彼はついに膝から崩れ落ち、両手を床についた。
万策尽きた様子をカルニヴァ王は玉座に座したまま見据えると、隣室に向け、
『勇者殿方ァーーー!』
声を張り上げ、謁見の間と繋がる隣室の扉が開き、チカラ無く振り返った彼は、
『ッ!!!?』
かつてない驚きを見せた。
まるで心臓を握られたかの如き、慄きの表情で。
入室して来たラディッシュ、ドロプウォート、ニプルウォート、カドウィードが連行する、とある人物を眼にし。
その人物は素人目にも「仕立ての良い物」と分かる服を纏った、太鼓腹が突き出た一人の男であったが、その男の表情は暮らしの豊かさを表す衣服や体躯と相反し、まるで刑の執行を目前に控えた罪人の如くに青ざめ、小刻みに震え、
(わっ、ワイルドライスぅ!)
グラッセは愕然とした表情で後退った。
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