ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第七章

7-16

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 その頃宿の階下では――

 初々しい待ち合わせの真っ最中。
 パストリスはニプルウォートとカドウィードに覗かれているとも気付かず、

「ら、ラディ……その……どぅ……でぇすぅ……」

 少し赤い顔してモジモジすると、同じ顔したラディッシュが目線を泳がせながら、

「う、うん……とっても、その……に、似合ってる……よ……」

 照れ臭そうに褒めると、

「あ、ありがと……なのでぇす……♪」

 彼女は気恥ずかしそうに、はにかんだ。
 その笑顔を、
(可愛い……)
 素直に思うラディッシュであったが、本音が顔からだだ漏れ「キモイ」と思われるのを嫌い、

「じゃ、じゃぁ、い、行こう、か……」

 即座に彼女を外へと導いた。
 緊張を纏った片言で。

「は、はい、でぇすぅ……」

 宿から出て行く、ぎこちない二人。
 すると階段の途中から様子を窺い見ていたカドウィードとニプルウォートも、

「見てるコッチの方がムズ痒くなる光景さ♪」
「げにありんすなぁ♪」

 悪戯な笑顔で笑い合い、追跡を開始。
 二人を見失わないよう、宿を後にした。
 村内をそぞろ歩く、

『『・・・・・・』』

 無言のラディッシュとパストリス。
 気恥ずかしそうな赤面顔して、うつむき加減で歩き、硬さの取れぬ二人ではあったが、それは初めだけ。
 家族並みに長い時間を過ごして来た二人が故に、次第に緊張もほぐれ、一時間と要せず、

「パストぉ、あっちの露店にも面白そうな物が売られてるみたいだよ♪」
「でぇすでぇすねぇ♪」

 自然な笑みを見せ合い、何気にラディッシュがエスコートを。
 喫茶店に入ってちょっとした休憩を取るなど、さりげない気遣いまで見せ、物陰から様子を窺っていた追跡コンビは、

((…………))

 正直、ちょっとジェラシー。
 しかし「からかい目的での追跡」を口にしている手前、嫉妬を口にするのは醜態に思え、

「ら、ラディのヤツ、何気にうまく立ち回るじゃないさぁ♪」
「か、カディ達の御蔭にぃありんしょぅ♪」

 表面上は平静を装い、日頃の付き合いを自画自賛したが、
「「それよりもぉ……」」
 急に悪い顔してニヤリと笑い合い、

『『アンタはうかうかしてて(良いのさぁ・良きにありぃんすかぇ)♪』』

 振り向いた先に居たのは、
「うっ……」
 痛い所を突かれた顔する、ターナップ。
 二人のからかいを交えた挑発に対して、彼は僧侶が信徒に説法を説くが如き「悟った語り口」で、

≪パストのお嬢が幸せならぁ、俺は何だって構わねぇのさぁ≫

 その自己犠牲とも取れる物言いに、

「「はぁ?!」」

 少しカチンと来る二人であったが、
((!?))
 永遠の真理に辿り着いた高僧のような顔をする彼の両膝が、内心の動揺を露わにカタカタと小刻みに揺れていたのに目を留め、

(格好つけちゃってさぁ♪)
(げにぃありぃんすなぁ♪)

 小さく笑い合う女子二人。
 しかし、

「「…………」」

 その言葉は二人にとって、ブーメラン。
 仲睦まじいラディッシュとパストリスの姿を改めて目の当たりに、

「「…………」」

 言い知れぬ不安に苛まれ、堪え切れなくなった二人は、

『んん?! ちょ、待てぇオマエ等ぁまさかぁ!!!』

 異変に慌てふためくターナップを置き去りに駆け出し、二人きりの世界を楽しむパストリスの下へ。
 女子二人の突然の暴挙に、

『冗談じゃねぇぞぉ!!!』

 巻き添え(パストリスの逆鱗)を恐れたターナップは一目散で、真逆方向へ逃げ出し、そうと気付かぬパストリスが露店に並ぶ珍しい商品の数々に、ラディッシュと笑顔を見せ合っていると、

『楽しそうじゃん御二人さん♪』
『げにぃありぃんすなぁ♪』

 背後から聞き覚えのある、からかい声が。
「「!?」」
 デート中であった二人は現実世界へ一気に連れ戻され、パストリスはターナップが示した懸念の通り、

『やっ、約束が違うのでぇすぅ!』

 怒りを露わ、
「今日はボクの日なのでぇすぅ! ボクだけの日なのでぇすぅ!」
 愛らしい地団駄を踏み踏み。
 往来のど真ん中で、ちょっとした修羅場を展開。
 周囲の野次馬視線は自然と集まり始め、

(僕たち悪目立ちしてないぃ?!)

 ラディッシュは「とにかくこの場を丸く収めよう」と、すっかりヘソを曲げてしまったパストリスの耳元に、

(こっ、この埋め合わせは絶対、必ずするからぁ)

 素早く耳打ち。
「「?!」」
 怪訝な顔するニプルウォートとカドウィードには、

「なっ、何でもないよぉ♪」

 愛想笑いでお茶を濁した。
 すると今しがたまで機嫌を損ねていたパストリスが、

「まったくぅ仕方が無いのでぇすぅ♪」

 密かな特別扱いに、すっかり上機嫌。
 余裕さえ窺える、緩んだ笑顔で、

「今回は四人でぇデートなのでぇすぅ♪」

 何だかんだで彼女も「恋する乙女の一人」であり、恋敵が多い中での特別扱いは嬉しいのである。
 一方、そこまで深く考えていなかったラディッシュ。
 後先を考える余裕なく放った「苦し紛れの一言」が功を奏した様子に、ほっと胸を撫で下ろし、

「じゃ、じゃあ、先ずは「みんな」で、何か食べに行こうかぁ♪ 腹が減っては何とかって言うし♪」

 これ以上こじれない為の「精一杯の笑顔」を作り、若干の不穏を残す女子三人と始めた。
 村人たちからの、

≪頑張れぇ勇者様ぁ♪≫

 無言の声援に見送られながら。
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