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第七章
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夕闇から夜へと時間が移る村の中を走るラディッシュ達――
辿り着いたターナップの家は扉が無防備に開け放たれたままであり、勢いそのまま飛び込むと、
『頼むジジィ! オヤジの遺した本を見せてくれぇ!』
ターナップが額を床に擦り付けんばかり、大司祭の前で土下座をしていた。
恥も外聞もかなぐり捨てた彼は、祖父の答えを待たず続けざま、
「負けておきながらの頼みは道理に反してるのも分かってる! だが今の俺にぁ、俺たちにはその本が必要なんだ!」
懇願からはほど遠い、脅すような物言いであったが、曲がった事が大嫌いな孫の、筋を曲げてまでの願いに祖父は静かに、
「どうしても必要なのか?」
(!)
孫は熱く、
『是が非でも中を確認しなくちゃなんねぇんだ!』
「…………」
伏しての即答に、祖父はしばし黙考すると、
「…………」
戸棚に歩み寄り、引き出しを開け、その奥に隠す様にしまってあった経典並みに厚みがある一冊の本を取り出し、
「…………」
土下座を続ける孫に差し出した。
「見るが良い」
穏やかなれど、威厳を感じさせる優しい声に、
『!?』
やっと顔を上げるターナップ。
眼前に差し出されていた本に、
「こっ、これだ……間違いねぇ……」
震える両手で恭しく受け取り、
「あ、ありがてぇ……や、約束するぜジジィ! 俺ぁ今より必ず強くなってやるからよ!」
孫の決意に、祖父は「ふっ」と小さく笑って微かな喜びを示し、
「壊すでないぞぉ」
「壊す?! アハハハ♪ 何言ってんだぁ壊す訳ねぇだろぉ♪」
からかいと受け取ったターナップは笑いながら、さっそく本を開いて、
『・・・・・・』
固まった。
絶句して。
何故に絶句までして固まったのか、
「「「「「「?」」」」」」
意味が分からないラディッシュ達は彼が開いたまま固まるページを、横から恐る恐る覗き見て、
『『『『『『ぅん?!』』』』』』
書かれていたのは、
≪今日、うちの息子が初めて立って歩いた。あの歳で天才に違いない≫
≪あの歳でオネショを卒業など天才に違いない≫
≪私の言葉を既に理解しているようだ。やはりあの子は天才だ≫
親バカ目線で書かれた「ターナップの成長日記」であり、期待していた内容とのあまりのギャップに、
『なぁんじゃコリャぁあぁぁぁぁぁああぁ!!!』
絶叫のターナップ。
違うページを急ぎめくって見ても、
≪今日、うちの息子が初恋をした。あの歳でやはり天才だ≫
何ページめくって見ても、
《ウチの息子は天才だ》
書かれていたのは「父親の息子自慢」であり、本人ですら忘れていた、本人にとっては黒歴史の数々。
意地も、誇りも、外聞も、全て投げ打ち、道理を曲げてまでして手にした本の内容に、
「…………」
ただただ打ちひしがれるターナップ。
ショックのあまりに思わず、
「これじゃぁ地世に行く手掛かりが……」
口を滑らせ、
(ヤベェ!)
慌てて口をつぐんだが既に時遅し。
『今ぁ何と言ったぁ馬鹿孫がぁあぁぁああっぁあ!!!』
祖父は冷静を欠いた激昂で、
「お前の両親すら守れなかったワシにさえ勝てぬ拙(つたな)き者がぁ! 地世で何とするぅ!」
「てっ、天法の使用を禁止したからだろうがぁ! 天法さえ使えば俺ぁ、」
理由はどうあれ「負けた事」は事実で、反発に「いつものキレ」が無い孫に対し、
『この戯(たわ)けがぁあぁ!』
「あぁ?!」
「地世の世界に「天世の恩恵」が届く訳が無かろうがぁ! 天世の恩恵無しに如何に天技を発動させるつもりかぁ!」
『『『『『『『!!!』』』』』』』
それはターナップのみならず、ラディッシュ達も失念していた大事(だいじ)であった。
「…………」
返す言葉を無くして押し黙る孫を、睨むように見据える祖父。
小さく息を吐いて、猛る気持ちを形ばかりゆっくり静め、平静を装いつつ振り向きはせず、背で、
「勇者殿よ」
「…………」
凛然とした中にも立場を遵守した物言いで、
「願わくば御再考下され」
「…………」
淡々と短く一言言うと、返事も待たずに自室へ消えた。
気付かされた現実。
「「「「「「…………」」」」」」
誰も何も言えず、ただ立ち尽くす。
そんな中、
『パパ、かえろなぉ♪』
大人の沈んだ空気を気遣うように、幼きチィックウィードが明るい声で手を引き、引かれたラディッシュは、
「そう、だね……」
弱弱しい笑顔ながらも静かに頷き、
(ここに立って居ても何も解決しない……)
仲間たちに、
「今は宿に戻ろう」
「「「「「…………」」」」」
頷き合うと、ターナップの生家を後にした。
覇気なく帰路に就く勇者組。
その様を、物置小屋の物陰からジッと窺う人物が一人。
「…………」
元老院親衛隊隊長スパイダマグ。
宿に戻る失意の勇者たちを窺う彼の心中は如何なモノであるのか、一枚布で隠された素顔からでは窺い知る事は出来ない。
辿り着いたターナップの家は扉が無防備に開け放たれたままであり、勢いそのまま飛び込むと、
『頼むジジィ! オヤジの遺した本を見せてくれぇ!』
ターナップが額を床に擦り付けんばかり、大司祭の前で土下座をしていた。
恥も外聞もかなぐり捨てた彼は、祖父の答えを待たず続けざま、
「負けておきながらの頼みは道理に反してるのも分かってる! だが今の俺にぁ、俺たちにはその本が必要なんだ!」
懇願からはほど遠い、脅すような物言いであったが、曲がった事が大嫌いな孫の、筋を曲げてまでの願いに祖父は静かに、
「どうしても必要なのか?」
(!)
孫は熱く、
『是が非でも中を確認しなくちゃなんねぇんだ!』
「…………」
伏しての即答に、祖父はしばし黙考すると、
「…………」
戸棚に歩み寄り、引き出しを開け、その奥に隠す様にしまってあった経典並みに厚みがある一冊の本を取り出し、
「…………」
土下座を続ける孫に差し出した。
「見るが良い」
穏やかなれど、威厳を感じさせる優しい声に、
『!?』
やっと顔を上げるターナップ。
眼前に差し出されていた本に、
「こっ、これだ……間違いねぇ……」
震える両手で恭しく受け取り、
「あ、ありがてぇ……や、約束するぜジジィ! 俺ぁ今より必ず強くなってやるからよ!」
孫の決意に、祖父は「ふっ」と小さく笑って微かな喜びを示し、
「壊すでないぞぉ」
「壊す?! アハハハ♪ 何言ってんだぁ壊す訳ねぇだろぉ♪」
からかいと受け取ったターナップは笑いながら、さっそく本を開いて、
『・・・・・・』
固まった。
絶句して。
何故に絶句までして固まったのか、
「「「「「「?」」」」」」
意味が分からないラディッシュ達は彼が開いたまま固まるページを、横から恐る恐る覗き見て、
『『『『『『ぅん?!』』』』』』
書かれていたのは、
≪今日、うちの息子が初めて立って歩いた。あの歳で天才に違いない≫
≪あの歳でオネショを卒業など天才に違いない≫
≪私の言葉を既に理解しているようだ。やはりあの子は天才だ≫
親バカ目線で書かれた「ターナップの成長日記」であり、期待していた内容とのあまりのギャップに、
『なぁんじゃコリャぁあぁぁぁぁぁああぁ!!!』
絶叫のターナップ。
違うページを急ぎめくって見ても、
≪今日、うちの息子が初恋をした。あの歳でやはり天才だ≫
何ページめくって見ても、
《ウチの息子は天才だ》
書かれていたのは「父親の息子自慢」であり、本人ですら忘れていた、本人にとっては黒歴史の数々。
意地も、誇りも、外聞も、全て投げ打ち、道理を曲げてまでして手にした本の内容に、
「…………」
ただただ打ちひしがれるターナップ。
ショックのあまりに思わず、
「これじゃぁ地世に行く手掛かりが……」
口を滑らせ、
(ヤベェ!)
慌てて口をつぐんだが既に時遅し。
『今ぁ何と言ったぁ馬鹿孫がぁあぁぁああっぁあ!!!』
祖父は冷静を欠いた激昂で、
「お前の両親すら守れなかったワシにさえ勝てぬ拙(つたな)き者がぁ! 地世で何とするぅ!」
「てっ、天法の使用を禁止したからだろうがぁ! 天法さえ使えば俺ぁ、」
理由はどうあれ「負けた事」は事実で、反発に「いつものキレ」が無い孫に対し、
『この戯(たわ)けがぁあぁ!』
「あぁ?!」
「地世の世界に「天世の恩恵」が届く訳が無かろうがぁ! 天世の恩恵無しに如何に天技を発動させるつもりかぁ!」
『『『『『『『!!!』』』』』』』
それはターナップのみならず、ラディッシュ達も失念していた大事(だいじ)であった。
「…………」
返す言葉を無くして押し黙る孫を、睨むように見据える祖父。
小さく息を吐いて、猛る気持ちを形ばかりゆっくり静め、平静を装いつつ振り向きはせず、背で、
「勇者殿よ」
「…………」
凛然とした中にも立場を遵守した物言いで、
「願わくば御再考下され」
「…………」
淡々と短く一言言うと、返事も待たずに自室へ消えた。
気付かされた現実。
「「「「「「…………」」」」」」
誰も何も言えず、ただ立ち尽くす。
そんな中、
『パパ、かえろなぉ♪』
大人の沈んだ空気を気遣うように、幼きチィックウィードが明るい声で手を引き、引かれたラディッシュは、
「そう、だね……」
弱弱しい笑顔ながらも静かに頷き、
(ここに立って居ても何も解決しない……)
仲間たちに、
「今は宿に戻ろう」
「「「「「…………」」」」」
頷き合うと、ターナップの生家を後にした。
覇気なく帰路に就く勇者組。
その様を、物置小屋の物陰からジッと窺う人物が一人。
「…………」
元老院親衛隊隊長スパイダマグ。
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