ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-45

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 大司祭は僧侶の身でありながら心は常在戦場、常に体内に戦闘用の天法を蓄積していた。
 それが詠唱無しに天技を発動させたからくりであり、蓄積する天法を消費しながら天世の恩恵も受ける、言わばエンジンを二つ搭載したかの状態で戦うのが彼の戦闘スタイルであった。

 故に戦闘力は単純計算で二倍。

 しかも大司祭は「七草」である。
 七草のチカラが二倍ともなれば、そのチカラは強大。

 とは言え、今回は戦っているのを周囲に悟られないようにする為に施した結界があり、その内側では天世からの恩恵が受けられない状態である。
 天技を発動させるに当たり蓄積した天法を消費するより他に無く、チカラは半減であったが、天技を発動させられる「七草の大司祭」と、天世からの恩恵を受けられず、天技を発動できないターナップ。

 戦いの行く末は「火を見るよりも明らか」の筈であった。
 筈であったが、実際は、

(天世の恩恵も纏わずワシを何故に上回れる!)

 防御に徹しながらも隙あらば反撃を繰り出しターナップを観察し、

(なんと!)

 とある事実に気が付いた。
 天世のチカラを纏っていないと思われたターナップが、天法を使って身体能力の底上げを図っていたのである。
 しかも「天法のチカラの源」は「天世から降る恩恵」ではなく、

(周辺の全てからじゃとぉお?!!!)

 大地や草木、建物など、戦いの広がりに備え大きく取った結界内の、ありとあらゆる物たちから。
 天世からの恩恵を浴びているのは、人だけではない。
 動物、植物、水や建物、有機物無機物問わず、中世にある全てである。

 ターナップは、それら全てから少しずつ天法を分けてもらいながら戦っていたのである。

 会話を交わせない現時点で彼が、それを意識的、無意識的に行っているかは不明であるが、一か所から大量に奪わないのは恩恵を失ったことにより発生するであろう弊害を恐れてと思えた。

 その総量は如何な「七草」と言えど、個で保有できる蓄積を軽く上回り、

(長引かせてはワシの恩恵が枯渇してしまう!)

 戦いながら内心で慄くと同時、焦りを覚えた次の瞬間、
(!)
 体が急に、鉛を抱えたように重く。
 それは生きとし生ける物の全てが抱える宿命の、

(若い時宜(じぎ)であったら、この程度ぉ!)

 加齢による体力の衰え。
 緊張を過度に強いる戦いの中で、精神的にも、肉体的にも、疲労が首をもたげ始めたのである。

 戦士としてのブランクである「実戦からの遠ざかり」も二次的要因と言えたが、一級同士の戦いにおいて「その差」は致命的。
 動きが鈍った所へ容赦なく、

『ウゥラアァアァーーーーーーッ!』

 天法により底上げされたターナップの剛腕による直撃が、

『クゥッ!』

 反射的に両腕でガードするも、

 パァパアァキィーーーーーーン!

 付与した天法ごと両腕の骨を打ち砕かれ、

「ぐぁあぁ!」

 殴り飛ばされ地を転がる大司祭。
 勝敗は決し、ターナップも手傷は負いつつ仁王立ち。

 大地に伏す祖父を、
「…………」
 悠然と見下ろした。

 そこはかとなく、悲し気に。

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