ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-43

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 世界にバラ撒かれた黒球の機能の一つに「合成獣化を促すチカラ」があると知らされ中世が大混乱のさなか、

『怯える必要はナイさねぇ♪』

 平静を高笑いとともに促したのは、混乱を招いた張本人の地世王ラミウム。
 騒乱の中世に向け、

「余計な事さえしなければぁ防衛機能は働かないさねぇ♪」
((((((((((!))))))))))
「そしてぇ♪」
((((((((((そしてぇ?!))))))))))

 集まる視線に、

「ある「一つの条件」を満たせばぁ、黒球の機能は凍結されるされるさねぇ♪ その条件とはぁ♪」
((((((((((条件とはぁ?!))))))))))

 息を呑む世界に、彼女は「キッシッシッ♪」と笑って勿体をつけた上で、
 
『勇者ラディッシュが一週間以内にアタシの下に来ることさぁねぇ~♪』
『『『『『『『『『『ッ!』』』』』』』』』』

 驚愕する中世の世界。
 彼女は自分たちを、自分たちの世界を、滅亡から幾度となく救ってくれた英雄を差し出せと言ったのである。
 笑顔でありながら、中世の全てを人質に迫るラミウムに、

『ざぁけんじゃナイさァーーアッ!』

 即でキレたのは、ニプルウォート。
 飄々と笑うラミウムに掴み掛かる勢いで迫ろうとしたが、

「なっ?!」

 無言で制したのは意外にも、

「リブロン!」

 恋敵の一人でもある彼女であった。

 何故に止めると言いたげな眼に、彼女は静かに首を横に振って答え、
(!)
 何かに気付かされた様子のニプルウォートは悔しさを残しながらも冷静を取り戻した。

 今は全てが、中世の全世界に配信されている最中であると。
 アルブル国代表としても会議に参加している以上、公人としての立場と言うものがあり、個人的な感情を怒り任せに爆発させ、映像を見ているであろう国民に不安を与える訳にはいかないのである。
 
 するとラミウムは愉快そうに「キッシッシッ♪」と笑い、
「七草の仲間を差し出せと言ってんだからぁ当然そう言う反応になるさぁねぇ~♪」
 表面上の、薄い気遣いを口に。

 言いたい事も言えない苦悩の心中を察しているようでありながら、余裕を見せ付けるような表情で。
 
 それでいて彼女たちを「恋敵扱い」した物言いはしなかった。
 何故ななら、

(ラディも中世の何処かで見てる筈さねぇ)

 鈍い彼に、彼女たちを異性として強く認識させない為の防衛策。
 しかしその自らの行いに「今のラミウム」は、

(…………)

 表に出さない疑問も。

 自身の今の認識が、真に「今の自分の意識」によるものなのか、はたまた一部修繕を加えられた過去の記憶に「単に引きずられて」のことなのか。

 今と過去の記憶が地続きに感じられない彼女にとって悩ましい問題ではあったが、恋敵たちを、中世の指導者たちを、中世の世界の民たちを黙らせるのに成功し、集まる注目を前に「キッシッシッ♪」と不敵に笑い、
「良ぉ~く見ておくさぁねぇ♪」
 指をパチンと再び打ち鳴らし、両眼を見開いた狂気の笑顔と共に全身から地世のチカラを溢れさせ、

『これが地世王となったぁ「今のアタシ」さぁねぇーーーえ♪』
『『『『『『『『『『ッ!』』』』』』』』』』

 美しきアメジストの眼は、髪は、容姿は、唖然と見つめる中世の人々の前で、みるみるみるみる黒く濁った赤紫の魔王の眼に、髪に。
 おぞましき佇まいは映像越しからも見て取れ、人々は命を賭して世界を救ってくれた彼女が「もう居ない」のを改めて知ると同時、新たな魔王誕生に恐怖すると、

『ニプルウォート殿ぉ緊急退避をォオ! このままでは諸王の精神が汚染されてしまいますぞ!』
『分かってるさァア!』

 焦りのスパイダマグにニプルウォートも即応し、
《天世より授かりし恩恵を以て我は行使す! ディスチャージ!》
 当人を含めた参加者全てを仮想空間から強制排出。

 当然、乗っ取りを仕掛けたラミウムも。
 管理者権限とは別で、密かに設置されていた、想定外の事故を見据えた仕掛けであった。

 黒球から中世の空に投影されていた映像の全ても消え、中世の世界には、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 言葉に出来ぬ恐怖と、混乱だけが残された。
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