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第十章
10-44
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ニプルウォートが天技による仮想会議を強制終了させ――
間を置かず、
『キッシッシッ♪』
独特な笑い声が響く。
魔界の王たる権威を示す兜が如き、異形を模したヘルメットを被るその者は、
『いやぁーーー愉快痛快だったさぁねぇ♪』
楽し気な声と共に脱いで素顔を露に。
声の主は言わずもがな、玉座に座る、地世王としての容姿のラミウム。
遊園地のアトラクションでも楽しんで来たかのような彼女に淡々と、
『左様でございますか』
数段下がった赤じゅうたんの上から、
「ですが御戯れも大概にして下さい。御身に何かあれば路頭に迷うは地世の民にございます」
苦言を呈すのは、軽鎧を身に付け跪く、美しき黄金色の被毛(ひもう)を持った、合成獣の人狼。
その佇まいは獣と言うより人と呼べる程であり、言い方を変えるならば「新たな人種」と呼べる程に理知的であった。
背後には似た気配を以て同様に跪く合成獣たちの姿も。
容姿だけが異形の配下の苦言を前に、玉座の地世王ラミウムは何を思ってか再び「キッシッシッ♪」と愉快げに笑い、合成獣たちの頭目と思しき金狼に、
『姿、形は変わっても、堅苦しい物言いは昔のままさぁねぇ~なぁグラン♪』
「…………」
視線を伏し、答えない金狼。
金狼は「プエラリアの策謀」により合成獣化させられたグラン・ディフロイスであった。
その彼を、彼女は玉座から愉快げに見下ろし、
「人であった頃の記憶は「自分が体験した物と感じらない」とアンタは言ってたが、十分に、」
「いえ、その通りに御座います」
金狼グランは言葉を遮り、
「人であった頃の記憶は私の中に確かにありますが、それは他人の体験を第三者的立場から見ているに等しく、自ら体験した物とは思えません。言うなれば「知識の一つ」にございます」
「…………」
「故に「以前の私」と「今の私」の立ち振る舞いが似ているとすれば、私どもは貴方様の御慈悲で自我に目覚めさせていただいた折、白紙な自我に「過去の記憶が結びついて」の事でありましょう」
「…………」
配下の合成獣たちも同意であるのか異を唱える者はおらず、置物のように微動だにしなかった。
その姿を前に、
「揃いも揃ってぇ御堅い話ぃさぁねぇ~」
呆れ笑う、地世王ラミウム。
笑う彼女自身も、思い当たる節が密かに無い訳でもないのだが。
そんな彼女に彼はおもむろ淡々と、
『僭越ながら陛下、一つ質問をしてもよろしいでしょうか?』
するとラミウムは「キッシッシッ♪」と笑い、
「プエラリアぁ昔の仲間に敬語を使わせてぇ、よくもこそばゆくなかったモンさぁねぇ~♪ まぁ良いさねぇグラン、言ってみるさぁねぇ♪」
余談を一先ず、金狼グランは感謝の意を表すかの如くに小さく頭を下げ、
『陛下は、何故に勇者ラディッシュに固執するのですか?』
「…………」
「誤解なさらないで頂きたいのですが、我らは異を唱えているのではありません。我らが主(あるじ)の決め事に「従うのみ」にございます」
「…………」
「ですが「あの男」は、私の過去の情報から見ても完璧にはほど遠く、地世王とまでなられたラミウム様が、」
「アタシも、ソレが知りたいのさねぇ」
「え?」
「アタシもアンタ達と同じ、なのさぁねぇ」
「…………」
「造られた体に、何処まで創られた分からない記憶……どうしてアタシの記憶がそこまでアレを欲するのか、直接会えば何か分かるかと……いや違うさねぇ」
地世王ラミウムは自嘲気味に不敵に笑い、
「不確かな存在の「過去の記憶のアタシ」では無く、今のアタシがアタシとして本意から欲しているのかをさぁねぇ♪ 今のアタシが「アタシであるか知る為」にさねぇ♪」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
一つの体の中に「今の自分」と「昔の自分」が、せめぎ合っている者達。
彼女の話は、配下の者達も身に覚えのある話であった。
跪く金狼グランは女王の「飾らぬ本意」に、
「差し出がましい事を申しました」
腑に落ちた様子で小さく頷いた。
それから数日は「勇者ラディッシュ出頭期限」に向け、有事にも備えた戦闘準備に入っていた魔王軍であったが、期限の一週間を前に、
『『『『『『『『『『ッ!!!』』』』』』』』』』
激震が走る。
勇者ラディッシュ一行が想定外のあらぬ方向に、突如として出現したのである。
中世の遺跡を使って地世に姿を現すと想定し、出現ポイントに布陣していた魔王軍は完全に裏をかかれた形となり、急報を聴いた地世王ラミウムは、
『キィーシッシッ♪』
玉座で大爆笑。
『笑っている場合ではありません、陛下!』
珍しくも動揺あらわに苦言を呈する金狼グランに、
「これが笑わずに居られる話さねぇ♪ アタシもプエラリアを笑えないさねぇ~♪」
からくりは不明であったが同じ轍(てつ)を踏んだ自身に彼女が笑い転げると、彼は怒りで犬歯をギリッと噛み鳴らし、謁見の間の隅に居た「謎の全身鎧」に掴み掛かり、
『キサマぁ! やはり謀(たば)ったなァア!』
すると全身鎧は、
{はぁ? 何を言ってる?!}
誰とも判別の出来ぬ籠った声で、その手を不機嫌にパァンと払いのけ、
{条件は元より五分さ。じゃないと「世界の命運をかけた戦い」にならないだろが?}
『何だと!』
{勝った方が正義なのさ♪}
『キサマ! 戦争を遊戯とでも思っているのか!』
言い争いを始め、謁見の間が不穏な空気に包まれると、
『キィーシッシッ♪』
地世王ラミウムが独特な高笑い。
{「!?」}
振り返った二人に、
「なるほどさねぇ♪ 勝てば官軍ってヤツさねぇ♪」
{理解が早くて助かるねぇ♪}
全身鎧は気を良くしたが、納得いかない金狼グラン。
同じく納得がいかない様子を窺わせる部下たちの想いも代弁するが如く、
『ラミウム様の御慈悲に感謝するのだな! だが我らはキサマが行った裏切りを決して忘れぬぞ!』
血の涙でも流しそうな形相で睨んだが、全身鎧は意に介する素振りも無く、
{ハイハイ、左様でぇ~}
軽薄な態度で受け流した。
突如として地世に姿を現したラディッシュ達。
如何にして盤石態勢を整えつつあった魔王軍を出し抜いたのか。
話は、地世王ラミウムが仮想空間における四大大国の会議をハッキングした後日に遡る。
間を置かず、
『キッシッシッ♪』
独特な笑い声が響く。
魔界の王たる権威を示す兜が如き、異形を模したヘルメットを被るその者は、
『いやぁーーー愉快痛快だったさぁねぇ♪』
楽し気な声と共に脱いで素顔を露に。
声の主は言わずもがな、玉座に座る、地世王としての容姿のラミウム。
遊園地のアトラクションでも楽しんで来たかのような彼女に淡々と、
『左様でございますか』
数段下がった赤じゅうたんの上から、
「ですが御戯れも大概にして下さい。御身に何かあれば路頭に迷うは地世の民にございます」
苦言を呈すのは、軽鎧を身に付け跪く、美しき黄金色の被毛(ひもう)を持った、合成獣の人狼。
その佇まいは獣と言うより人と呼べる程であり、言い方を変えるならば「新たな人種」と呼べる程に理知的であった。
背後には似た気配を以て同様に跪く合成獣たちの姿も。
容姿だけが異形の配下の苦言を前に、玉座の地世王ラミウムは何を思ってか再び「キッシッシッ♪」と愉快げに笑い、合成獣たちの頭目と思しき金狼に、
『姿、形は変わっても、堅苦しい物言いは昔のままさぁねぇ~なぁグラン♪』
「…………」
視線を伏し、答えない金狼。
金狼は「プエラリアの策謀」により合成獣化させられたグラン・ディフロイスであった。
その彼を、彼女は玉座から愉快げに見下ろし、
「人であった頃の記憶は「自分が体験した物と感じらない」とアンタは言ってたが、十分に、」
「いえ、その通りに御座います」
金狼グランは言葉を遮り、
「人であった頃の記憶は私の中に確かにありますが、それは他人の体験を第三者的立場から見ているに等しく、自ら体験した物とは思えません。言うなれば「知識の一つ」にございます」
「…………」
「故に「以前の私」と「今の私」の立ち振る舞いが似ているとすれば、私どもは貴方様の御慈悲で自我に目覚めさせていただいた折、白紙な自我に「過去の記憶が結びついて」の事でありましょう」
「…………」
配下の合成獣たちも同意であるのか異を唱える者はおらず、置物のように微動だにしなかった。
その姿を前に、
「揃いも揃ってぇ御堅い話ぃさぁねぇ~」
呆れ笑う、地世王ラミウム。
笑う彼女自身も、思い当たる節が密かに無い訳でもないのだが。
そんな彼女に彼はおもむろ淡々と、
『僭越ながら陛下、一つ質問をしてもよろしいでしょうか?』
するとラミウムは「キッシッシッ♪」と笑い、
「プエラリアぁ昔の仲間に敬語を使わせてぇ、よくもこそばゆくなかったモンさぁねぇ~♪ まぁ良いさねぇグラン、言ってみるさぁねぇ♪」
余談を一先ず、金狼グランは感謝の意を表すかの如くに小さく頭を下げ、
『陛下は、何故に勇者ラディッシュに固執するのですか?』
「…………」
「誤解なさらないで頂きたいのですが、我らは異を唱えているのではありません。我らが主(あるじ)の決め事に「従うのみ」にございます」
「…………」
「ですが「あの男」は、私の過去の情報から見ても完璧にはほど遠く、地世王とまでなられたラミウム様が、」
「アタシも、ソレが知りたいのさねぇ」
「え?」
「アタシもアンタ達と同じ、なのさぁねぇ」
「…………」
「造られた体に、何処まで創られた分からない記憶……どうしてアタシの記憶がそこまでアレを欲するのか、直接会えば何か分かるかと……いや違うさねぇ」
地世王ラミウムは自嘲気味に不敵に笑い、
「不確かな存在の「過去の記憶のアタシ」では無く、今のアタシがアタシとして本意から欲しているのかをさぁねぇ♪ 今のアタシが「アタシであるか知る為」にさねぇ♪」
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
一つの体の中に「今の自分」と「昔の自分」が、せめぎ合っている者達。
彼女の話は、配下の者達も身に覚えのある話であった。
跪く金狼グランは女王の「飾らぬ本意」に、
「差し出がましい事を申しました」
腑に落ちた様子で小さく頷いた。
それから数日は「勇者ラディッシュ出頭期限」に向け、有事にも備えた戦闘準備に入っていた魔王軍であったが、期限の一週間を前に、
『『『『『『『『『『ッ!!!』』』』』』』』』』
激震が走る。
勇者ラディッシュ一行が想定外のあらぬ方向に、突如として出現したのである。
中世の遺跡を使って地世に姿を現すと想定し、出現ポイントに布陣していた魔王軍は完全に裏をかかれた形となり、急報を聴いた地世王ラミウムは、
『キィーシッシッ♪』
玉座で大爆笑。
『笑っている場合ではありません、陛下!』
珍しくも動揺あらわに苦言を呈する金狼グランに、
「これが笑わずに居られる話さねぇ♪ アタシもプエラリアを笑えないさねぇ~♪」
からくりは不明であったが同じ轍(てつ)を踏んだ自身に彼女が笑い転げると、彼は怒りで犬歯をギリッと噛み鳴らし、謁見の間の隅に居た「謎の全身鎧」に掴み掛かり、
『キサマぁ! やはり謀(たば)ったなァア!』
すると全身鎧は、
{はぁ? 何を言ってる?!}
誰とも判別の出来ぬ籠った声で、その手を不機嫌にパァンと払いのけ、
{条件は元より五分さ。じゃないと「世界の命運をかけた戦い」にならないだろが?}
『何だと!』
{勝った方が正義なのさ♪}
『キサマ! 戦争を遊戯とでも思っているのか!』
言い争いを始め、謁見の間が不穏な空気に包まれると、
『キィーシッシッ♪』
地世王ラミウムが独特な高笑い。
{「!?」}
振り返った二人に、
「なるほどさねぇ♪ 勝てば官軍ってヤツさねぇ♪」
{理解が早くて助かるねぇ♪}
全身鎧は気を良くしたが、納得いかない金狼グラン。
同じく納得がいかない様子を窺わせる部下たちの想いも代弁するが如く、
『ラミウム様の御慈悲に感謝するのだな! だが我らはキサマが行った裏切りを決して忘れぬぞ!』
血の涙でも流しそうな形相で睨んだが、全身鎧は意に介する素振りも無く、
{ハイハイ、左様でぇ~}
軽薄な態度で受け流した。
突如として地世に姿を現したラディッシュ達。
如何にして盤石態勢を整えつつあった魔王軍を出し抜いたのか。
話は、地世王ラミウムが仮想空間における四大大国の会議をハッキングした後日に遡る。
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