ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-1

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 中世における四大大国が一つ、エルブ国南方に広がる広大な森。

 足を踏み入れた者が二度と戻る事の無い「不帰(かえらず)の森」と称して畏れられる、暗く、深き森の奥に、ひっそりと佇む石造遺跡群。

 しかし遺跡と呼ぶには真新しくも見えるその建物たちは、先に起きた「地世の七草との戦い」で完膚(かんぷ)無きまでに破壊され、その後にエルブ国の名匠たちの手により修繕を終えたばかりの、地世と繋がるゲートを守る役割を担う物である。

 建物を「新築する」のではなく、遺跡のような元の状態に「復元させた」のは、遺跡群がどの様な意味合いを持って配され、建てられていたか、先人の英知が失わた現在においては不明であったから。

 まかり現代人の感覚で新たな建物群を構築した場合、どの様な弊害が起きるか予測不能であり。

 その遺跡群の中央に座する建物内の奥に、階下へ繋がるように見える階段があり、それこそが地世に繋がるゲート。
 階下に繋がる階段のようであると曖昧な表現にとどめてあるのは、下る先が途中で漆黒の闇に包まれ視界が途切れ、階下まで視認することが出来ないから。

《深淵への入り口》

 まかり一歩でも足を踏み入れたら、何が起きてもおかしくないと感じさせる深い闇。
 その様な闇の奥から、

 カツンカツンカツン

 聴こえ始めたのは複数の足音。
 次第にハッキリと。
 そうして姿を現したのは、

「「「「「…………」」」」」

 勇者ラディッシュを先頭にした、勇者組の面々であった。

 凱旋と呼べる、地世からの無事な帰還。

 しかしその表情に喜びは一様になく、
「「「「「…………」」」」」
 複雑な表情。

 帰還を果たした顔ぶれの中に最古参のメンバーである二人の顔が無く、闇から姿を現しながらも未だ階上の光を目指し上がるラディッシュは人知れず、悔し気に、
(パスト……タープ……)
 唇の端を噛む。

 二人の身に何が起きのか。

 慙愧(ざんき)の念も露なラディッシュは魔王城謁見の間で、魔王となる道を自ら選んだパストリスが「次代の地世王」として魔王軍に受け入れられて後の光景を思い返す。


 地世王ラミウムが討ち取られ――

 討ち取ったパストリスを新王として認める雄叫びを上げる魔王軍。

 チカラこそが全ての、地世の世界。

 勝った者が正義の地世において、雌雄が決した時点で戦いの継続に意味はなく、全ての兵が矛を収め、それによりラディッシュたち勇者組も戦う必要は消滅したのだが、そこには避けて通れぬ「新たな問題」が。
 それは、

《パストリスの処遇について》

 戦いその物は一度(ひとたび)の終結を迎え、勇者組の面々が帰路に就くのに何ら問題は無かったのだが、彼女だけは話が違った。

 彼女は自ら「地世の王になる選択肢」を選び、先王ラミウムからチカラを奪って倒したのである。
 故に彼女は、

『ボクの旅は、ここまでなのでぇす♪』

 笑顔でニコリと愛らしく笑い、

「カディにもゴメンナサイなのでぇす♪ 謎の美人グルメライター姉妹もぉ「御仕舞い」なのでぇすぅ♪」

 いつもと変わらぬ笑顔で見えこそしたが、その裏に、
((((((…………))))))
 潜む、計り知れぬ寂しさを感じ取れぬ仲間たちではなかった。

 苦難を何度も共に乗り越え、血の繋がり以上の固い絆で結ばれている勇者組。

 ラディッシュ達にも彼女を連れて帰りたい気持ちは、当然強くあった。
 しかし彼女を中世に連れて帰るという事は、

《地世の世界が王を失う》

 向かうべき道を示す御旗を失った「チカラが全ての世界」がどのような末(すえ)を迎えるか、それは想像するに余りある結末である。
 
 加えて言うならば、ここは敵陣のド真ん中。

 自国の王が連れ去られそうになるのを兵が、民が、黙って見逃がす筈も無く、死に物狂いの奪還は必至。
 中座した戦いが、より熾烈を極めて再開されるのは明らかで、それら単一ではない理由の下にラディッシュ達も安易に、

《一緒に帰ろう》

 口に出来ない言葉であった。
 仲間たちの内なる葛藤に、

「寂しくないと言ったらウソになるでぇすけど♪」

 パストリスは気付いていてか、明るく気丈な笑顔の前置きをしたうえで、眼前に跪く新生ゴゼンや金狼グラン、エリート合成獣たちを前に、

「ボクは大丈夫なのでぇす♪」
((((((!))))))
「ドコまで出来るか分からないでぇすけど、地世の人達の為にガンバってぇみるのでぇす♪」
((((((…………))))))

 見せた愛らしい笑顔は気心の知れた仲間たちにとって痛々しく思える物ではあったが、彼女が語る言葉の中には地世の新たな王たる「確かな決意と覚悟」も見て取れ、その様な毅然を見せられてはラディッシュ達も、

《頑張って》

 励ます他に言葉は無かった。
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