ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-42

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 チィックウィードは大人女子三人の魔の手からアブダを救い出し、彼女を同年代か年下と思ってか、少々お姉さん振った愛らしい笑顔で、

「アブちゃん、よろしくなぉ♪」

 手を取った。
 その時の光景を思い返し、笑顔の幼女と手を繋ぎ歩く今の自身の姿に、

(ワシながらぁ何と言う「ドヘタな名付け」だったのじゃろぉ……)

 咄嗟の判断であったとは言え、あまりに直球が過ぎる偽名に後悔を覚え、

(正体が知れる可能性は残されているが故に、接触の機会はなるだけ避けねばならぬのぉ……)

 椅子車を無防備に押す勇者の背を見つめた。
 しかし視線と言うものは「見られた側」は意外と感じるもの、

(?)

 ラディッシュは振り返り、期せずして目が合ってしまったアブダは警戒していた矢先の接触に、
(しっ、しまったのじゃ! ワシとしたことがぁ!)
 何故に見つめていたか問われるのを皮切りに色々と質問され、ボロを出しまうのを恐れたが、振り返った彼は幼女と目が合うなり優しい笑顔で、

「そろそろ休憩にしようかぁ♪」
(のぉ?!)

 さほど歩いていないにも拘わらず。
 それは八部衆アブダを普通の女児と思い込む彼の、彼女の疲労に対する気遣いから出た言葉であった。

(…………)

 想定外の肩透かしであったが、一般的天世の幼女の体力事情など知る由も無いアブダ。
 気遣いに対して、何と応えるのが正答なのか分からず、

(そ、そう言うモノなのかのぉ?! 疲労を装った方が自然なのかのぉ?)

 迂闊な拒絶は馬脚に繋がると判断し、
「ありがとうございます」
 頭を下げると、

「「「「「…………」」」」」

 ラディッシュ達は驚き顔でアブダを凝視。
 見られた彼女は、

(よもや子供らしくない反応じゃったかぁ!?)

 リアクションのチョイスミスに焦りを覚えたが、当人たちは彼女の秘めた焦燥を知ってか知らずかの感心しきりで、

「アブちゃんオトナなぉ~♪」
「ホント、しっかりしてるねぇ~エライねぇ~♪」
「アーシより、オトナなのしぃ~♪」

 手を繋ぐチィックウィードが、ラディッシュが、リンドウが褒め、
「良き御両親に育てられたでぇありぃんしょうなぁ~♪」
 カドウィードも彼女の両親を褒めると、ニプルウォートが焦りの表情で即座に、

『カディそれは!』

 苦言を呈するように名前を呼び、呼ばれた彼女も何の指摘を受けたか気付き、
「…………」
 途端に口をつぐんだ。

「「「「「…………」」」」」

 沈黙の勇者組の間に流れる、微妙な空気。
 その空気から、

(!)

 とある気遣いを感じ取るアブダ。
(ワシが遺児じゃと……両親が汚染獣に殺されたと思ぉてぇおるのじゃなぁ。勘違いはぁ好都合じゃが……)
 穏やかから一転した気マズイ空気を見回し、

(この様な気の遣われ方は、ワシの方が疲れるわい)

 とても小さな溜息を人知れず吐くと、愛らしい満面の笑顔で、

「パパとママとは、にげるとうちゅうではぐれてしまったけど、いきてるってぇ、しんじてます♪」
「「「「「!」」」」」

 幼女の笑顔に、ラディッシュ達は失言を救われた気がした。
 そもそも彼女は遺児でもないが。
 思い違いと気付かず、心持ちが幾分軽くなった一行は、近くの河原に拠点を簡易的に設営し、焚火を囲んで座り、そしてアブダは、

「…………」

 困惑顔で自身の手元に視線を落とした。
 そこにあったのは、勇者が作った料理。

「粗末な料理でゴメンねぇ♪」

 笑う彼が言う通り、その辺から集めた木の実や山菜を煮込んだ物と、川から捕って焼いた魚。
 御世辞にも豪華な料理とは言えないが、ラディッシュが手持ちの調味料を使用してひと手間加え、芳しい香りを漂わせていた。
 しかし、

(食事をしなくとも死なんというに……)

 付き合いで何か口に入れることはあっても、食事を楽しむ習慣と言うモノが彼女には無かった。
 例外はありつつ、それは基本的に天世人全般に言える話ではあるが。
 とは言え、

(食べぬは不信を招くかのぉ……)

 敵のド真ん中で不和を生むは得策でなく、顔は笑顔で内心イヤイヤ交じりに、

「ありがとうございます♪」

 一口、口に運び入れた。
 運び入れた途端、

『ぅウマぁあ!』

 思わず素が。
 その、あまりの美味さに。

(((((…………)))))

 一斉に集まる視線。
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