ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

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 出されたラディッシュの料理の美味さに思わず素が出てしまい、集中的に凝視され、

(しぃっ、しまったのじゃ! あまりの美味さにワシとしたことが! 正体が!)

 かつてない焦りを覚えたアブダであったが女性陣は、

『『『『でぇしょぅ~♪』』』』
(へぇ?!)

 自分たちの手柄のような喜びようで、ラディッシュも照れ笑い。
 八部衆が一人アブダは首の皮一枚とも言える綱渡り的な中で安堵を覚えたが、その得も言われぬ緊張感を強いられた報酬として、

(…………)

 生まれて初めて「楽しい食事」と言うモノを味わった。
 気の置けない笑顔の会話が飛び交う、穏やかな光に照らされているかのような食事の時間。

 自然な笑みが思わずこぼれる彼女の脳裏に浮かんで消えるのは、先代コマクサの下で、小間使いとして働かされていた日々。
 彼女は天世人でありながら、生まれながらにして地世の因子を有していた。

 本来ならば失われた先人の英知により構築された自動システムにより、廃棄物として有無を言わさず地世送りになるところ、システム管理の権限を持つ先代コマクサが何の気まぐれか、生まれたばかりでありながら廃棄寸前であった彼女をサルベージ。
 一見すると救われたように思えるが、実際は使用人や小間使いと呼ぶにも程遠い「下僕の扱い」であった。

 そこには正常な主従関係や、信頼関係も無く。

 幸いであったのは彼に、幼女を弄ぶ性癖が無かったこと。
 とは言え成長に合わせ豹変する可能性もあり、戦々恐々とした日々を送る中で、彼女の体はとある特徴的な反応を見せた。

《成長の停止》

 幼女の姿まで成長した時点で、彼女の成長は止まってしまったのである。
 心と体の防衛本能が成しえた奇跡か。

 喜ぶべきか、忌むべきか、賛否は分かれるところであるが、姿は幼女のままでも年を重ねると知識量が豊富となり、やがて彼女は当代コマクサが幼少であった頃、先代より教育係兼世話係を命ぜられた。
 だからと言って冷遇に変化はなく、単に仕事が増やされただけではあったが。

 ラディッシュ達と暖かい焚火を囲み、
(心まで温まるようじゃのぉ……)
 食事を楽しみ、会話を楽しみ、頬は意図せず緩んだが、安らぐ気持ちと同時に、

(もしワシがこの地区の担当である八部衆などでなく、真に生き残りの少女であったなら……この胸の痛みも無かったやも知れぬのじゃ……)

 心優しき者たちを前に噓を吐いている罪悪感が。
 見た目が幼女の小さな体に抱えた大きな悩みに、気付けなかったラディッシュ達は食事が終わると片付けや拠点の撤去も早々に、移動を再開した。
 目指すはヒレンが向かったと思われる、

《元老院対抗組織が陣を置いていた場所》

 そこには組織のメンバー達が居る筈であり、

「みんな、無事で居て欲しいのしぃ……」

 祈るように呟くリンドウ。
 無論、ケンカ別れしたヒレンを含めた想いであり、勇者組の誰もが心を同じく祈っていたが、

(無理じゃろぅな……)

 人知れず諦めを思うは、八部衆が一人アブダ。
 否定を口にこそしなかったが、

(天世の世界は元々、攻め込まれるを想定しておらなんだ……ゆえに軍備は脆弱そのもの。天世の宮(みや)である天宮(てんきゅう)や、門前町の聖都プロンズアルピニスならいざ知らず、中央から離れれば離れるほどに被害は……)

 そして迎えた現実はラディッシュ達やリンドウに、
「「「「「…………」」」」」
 過酷を見せつけた。

 彼女が想定した通りの。

 一方的に蹂躙されたと思われる先の村とは流石に違い、この場に居たのは戦闘集団であり、激戦の真新しく生々しい傷跡や痕跡がそこかしこに見られ、惨状を目の当たりにしたアブダは、

(憐れなるかな天世人……私欲に満ちた怠惰の先に、いったい何を求めたのじゃ……)

 いつか天世が迎えるであろう終末を見た気がした。
 死傷者の存在は、

「「「「「「…………」」」」」」

 皆無で、

《喰い尽くされたか、合成獣化したか》

 類推可能な結末を、誰も口にしなかった。
 放心と悲嘆に暮れるリンドウの、平時の明るさからは到底想像できぬ姿を見せられては。
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