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続章_2
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決意の夜から一夜明けるも、サクラのボッチ生活は尚も続き、そんな日が続いたある日から、サクラの身の回りで不思議な事が起こる様になり始めた。
休憩時間にトイレから戻り、次の授業の用意をしようと机の中に手を入れるが筆箱が無い。その日は家に忘れたのかと思い学校の購買で「ペンと消しゴム」だけ買って一日過ごし、帰るが家には無く、次の日登校すると机の中にある。
(私って、そそっかしいからなぁ~)
自分のうっかり加減に呆れ笑いを浮かべ、そんな事が筆箱に限らず数度続いたある日、
昨日行方不明であった数学の教科書が、机の中に入っていた。
(またかぁ~)
一人小さく笑みを浮かべていると、
『よく見つけて来るわぁ』
モノクロの教室の背後から、女生徒の小声と共に、赤く、ドス黒い煙の様な物がサクラの身にまとわりついた。
(この色の声……)
聞こえた声にではなく、見えた色に ビクリと身を震わせるサクラ。
これこそが、彼女が地元に居られなくなった理由である。
彼女は人が話す言葉に含まれる感情などを、色として認識する能力を有していた。
故にサクラは話している相手の、言葉の裏に隠した感情や、近しい死期まで色として認識することが出来たのである。
幼少期からこの様な能力を持ったサクラが、排他的特性の強い彼女の生まれた集落において、他の子供達と同様の扱いを受けられる筈も無く、サクラは「忌み子」として屋敷から外に出してもらえず、屋敷内で半監禁状態の生活を送っていた。
その結果、サクラは目の前にいる話し相手の顔を見たり、話す内容を聞くのではなく、話す言葉の色ばかり見て、その人物が自分にとって有益な人物か否か、嘘つきか、下心を秘めていないかなど、話し相手を分類し、カテゴリ分けする癖が付いてしまい、心を閉ざした彼女の目に、いつの頃からか世界はモノクロでしか映らなくなっていた。
クラスメイトと極力話さないのも、その様に人をカテゴリ分けする自分がイヤで会話を避けている為であり、伏し目がちであるのも、色を見ない様にしている為であった。
東京に出て来た複数ある理由の一つに、環境が極端に変われば、そんな自分も「変わるかも知れない」との思いもあったが、未だ彼女の目に映る世界は、モノクロのままであった。
数々の業を背負ったサクラに向けられた、負の感情。
当然振り返り確認する勇気などある筈も無く、物が無くなっては見つかる日が更に続いたある日の昼食時間―――
立ち入り禁止となっている屋上の物陰で、ひっそり昼食を取るのが日課となっていたサクラが、いつもの様に物陰に入り込み、教室内に居た時のストレスから解放された笑みを浮かべて弁当を広げていると、屋上に上がって来る数人の気配がした。
(!)
咄嗟に動きを止め、息を殺すサクラ。
物陰から、そっと様子を窺う。
休憩時間にトイレから戻り、次の授業の用意をしようと机の中に手を入れるが筆箱が無い。その日は家に忘れたのかと思い学校の購買で「ペンと消しゴム」だけ買って一日過ごし、帰るが家には無く、次の日登校すると机の中にある。
(私って、そそっかしいからなぁ~)
自分のうっかり加減に呆れ笑いを浮かべ、そんな事が筆箱に限らず数度続いたある日、
昨日行方不明であった数学の教科書が、机の中に入っていた。
(またかぁ~)
一人小さく笑みを浮かべていると、
『よく見つけて来るわぁ』
モノクロの教室の背後から、女生徒の小声と共に、赤く、ドス黒い煙の様な物がサクラの身にまとわりついた。
(この色の声……)
聞こえた声にではなく、見えた色に ビクリと身を震わせるサクラ。
これこそが、彼女が地元に居られなくなった理由である。
彼女は人が話す言葉に含まれる感情などを、色として認識する能力を有していた。
故にサクラは話している相手の、言葉の裏に隠した感情や、近しい死期まで色として認識することが出来たのである。
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その結果、サクラは目の前にいる話し相手の顔を見たり、話す内容を聞くのではなく、話す言葉の色ばかり見て、その人物が自分にとって有益な人物か否か、嘘つきか、下心を秘めていないかなど、話し相手を分類し、カテゴリ分けする癖が付いてしまい、心を閉ざした彼女の目に、いつの頃からか世界はモノクロでしか映らなくなっていた。
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(!)
咄嗟に動きを止め、息を殺すサクラ。
物陰から、そっと様子を窺う。
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