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続章_3
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屋上に上がって来たのは、女子生徒が一人と、男子生徒が一人。
女子生徒は屋上に上がるなり、
「こんな所に呼び出して何? アンタが告白ぅ? 超ウケるんだけどぉ」
からかう様な声であるが、サクラの目に見える色は違う感情を物語っていた。そしてサクラは、この色の持ち主を知っている。
(焦りの色に混じって、黒い色に、濁った赤……あの時の声の人だ……)
よくよく見れば女子生徒は、父親が衆議院議員である事を鼻にかけていた生徒であり、男子生徒の方はサクラと同じく、他の生徒と話している所を見た事がないクラスメイトであった。自己紹介の時にも頭を下げるだけで、一言も発しなかった生徒である。
(あの人は……何色だっけ……)
サクラにとって他者とは、未だ「何色の人」と言う存在であった。
「いい加減に止めろ」
初めて聞く男子生徒の声。
その声は静かであったが、
(スゴイ……真っ赤……本気で怒ってる……)
サクラには怒髪冠を衝くが如く激高している様に見える男子生徒であったが、女子生徒には単に物静かに語っている様にしか見えずに調子づき、
「はぁ? ナニ言ってるのぉ? 訳分かんなくて超ウケるんだけどぉ」
笑って何かを誤魔化す女子生徒。
その色は負の感情の集合体の様に、様々なよどんだ色が交わらず、うねりを上げ始め、
(き、気持ち悪い……)
サクラは思わず口を手で覆い、屈み込んだ。
しかしうねりが見えない男子生徒は、うねりを物ともせず女子生徒に歩み寄り、
「ちょ! 変な事したら承知しないわよ! パパは衆議院の!」
後退る女子生徒の横を通り過ぎ様、何かを小声で耳打ち、女子生徒はおののいた表情で立ち尽くし、
「忠告はした」
男子生徒は、そのまま階下へ降りて行った。
直感的に、「紛失事件」の首謀者が彼女であると悟るサクラ。
(あの人が取り返してくれていたの?)
お礼を言った方が良いのかとも思うが、色による「カテゴリ分け」が出来ていない人は、その人の「人となり」が分からないので怖くて話が出来ず、
(無理無理無理無理無理無理無理無理無理ィーーーッ! それに……)
教室内に戻ったサクラは自席でうつむき、チラリと教室の後ろを見る。
男子生徒は窓際の一番後ろの席で机に肘を立てて頬杖つき、無表情で外を眺めていた。
サッと前を向くサクラ。
(……なんか違う意味で、アノ人怖い……)
寡黙な男子生徒の持つピリピリとした独特の空気に、サクラは得も言われぬ恐怖を感じた。
そして、その日を境に物の紛失はピタリと止んだ。
一方、女子生徒は言うと、友達と言うより手下をはべらせていた女王様的リア充感は影を潜め、常に何かに怯えた様になり、次第に学校は休みがちになり、ついには不登校、そして一ヶ月経たずに転校して行った。
転校して明らかになる、彼女主導で行われていた陰湿なイジメの数々。
彼女は自分では手を下さず、父親の権威を学校に持ち込み、他の生徒達にいじめを強要していたのであった。
しかし変わり果て、クラスを去った彼女の残した一言が、生徒達を目に見えない何かで縛りつけた。
『アイツ(男子生徒)に関わるな』
皮肉にも彼女の言葉を証明するかの様に、彼女が転向して程なく、彼女の父親は贈収賄で職を辞し、逮捕、検挙されるに到り、この一件で男子生徒とクラスメイト達の間にあった溝は、より強固な壁となり、近づく生徒さえいなくなった。
虐げられるだけの人生を送って来たサクラでさえ、救いの手を差し伸べてくれた男子生徒を「何とかしてあげたい」と言う気持ちは抱きつつ、「目立ちたくない、平穏無事に卒業したい」と言う気持ちが勝り、他のクラスメイトと同様、見て見ぬフリを送る毎日を過ごした。
そんなある日、異変は突如として舞い降りた。
女子生徒は屋上に上がるなり、
「こんな所に呼び出して何? アンタが告白ぅ? 超ウケるんだけどぉ」
からかう様な声であるが、サクラの目に見える色は違う感情を物語っていた。そしてサクラは、この色の持ち主を知っている。
(焦りの色に混じって、黒い色に、濁った赤……あの時の声の人だ……)
よくよく見れば女子生徒は、父親が衆議院議員である事を鼻にかけていた生徒であり、男子生徒の方はサクラと同じく、他の生徒と話している所を見た事がないクラスメイトであった。自己紹介の時にも頭を下げるだけで、一言も発しなかった生徒である。
(あの人は……何色だっけ……)
サクラにとって他者とは、未だ「何色の人」と言う存在であった。
「いい加減に止めろ」
初めて聞く男子生徒の声。
その声は静かであったが、
(スゴイ……真っ赤……本気で怒ってる……)
サクラには怒髪冠を衝くが如く激高している様に見える男子生徒であったが、女子生徒には単に物静かに語っている様にしか見えずに調子づき、
「はぁ? ナニ言ってるのぉ? 訳分かんなくて超ウケるんだけどぉ」
笑って何かを誤魔化す女子生徒。
その色は負の感情の集合体の様に、様々なよどんだ色が交わらず、うねりを上げ始め、
(き、気持ち悪い……)
サクラは思わず口を手で覆い、屈み込んだ。
しかしうねりが見えない男子生徒は、うねりを物ともせず女子生徒に歩み寄り、
「ちょ! 変な事したら承知しないわよ! パパは衆議院の!」
後退る女子生徒の横を通り過ぎ様、何かを小声で耳打ち、女子生徒はおののいた表情で立ち尽くし、
「忠告はした」
男子生徒は、そのまま階下へ降りて行った。
直感的に、「紛失事件」の首謀者が彼女であると悟るサクラ。
(あの人が取り返してくれていたの?)
お礼を言った方が良いのかとも思うが、色による「カテゴリ分け」が出来ていない人は、その人の「人となり」が分からないので怖くて話が出来ず、
(無理無理無理無理無理無理無理無理無理ィーーーッ! それに……)
教室内に戻ったサクラは自席でうつむき、チラリと教室の後ろを見る。
男子生徒は窓際の一番後ろの席で机に肘を立てて頬杖つき、無表情で外を眺めていた。
サッと前を向くサクラ。
(……なんか違う意味で、アノ人怖い……)
寡黙な男子生徒の持つピリピリとした独特の空気に、サクラは得も言われぬ恐怖を感じた。
そして、その日を境に物の紛失はピタリと止んだ。
一方、女子生徒は言うと、友達と言うより手下をはべらせていた女王様的リア充感は影を潜め、常に何かに怯えた様になり、次第に学校は休みがちになり、ついには不登校、そして一ヶ月経たずに転校して行った。
転校して明らかになる、彼女主導で行われていた陰湿なイジメの数々。
彼女は自分では手を下さず、父親の権威を学校に持ち込み、他の生徒達にいじめを強要していたのであった。
しかし変わり果て、クラスを去った彼女の残した一言が、生徒達を目に見えない何かで縛りつけた。
『アイツ(男子生徒)に関わるな』
皮肉にも彼女の言葉を証明するかの様に、彼女が転向して程なく、彼女の父親は贈収賄で職を辞し、逮捕、検挙されるに到り、この一件で男子生徒とクラスメイト達の間にあった溝は、より強固な壁となり、近づく生徒さえいなくなった。
虐げられるだけの人生を送って来たサクラでさえ、救いの手を差し伸べてくれた男子生徒を「何とかしてあげたい」と言う気持ちは抱きつつ、「目立ちたくない、平穏無事に卒業したい」と言う気持ちが勝り、他のクラスメイトと同様、見て見ぬフリを送る毎日を過ごした。
そんなある日、異変は突如として舞い降りた。
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