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続章_21
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サイトの記事を信じるならば、ミズホが精力的に撮影活動に勤しむ中、小学校の高学年あたりから彼女の体が年齢と不釣り合いな身体的発育をし始め、それに伴い「つきまとい」や「隠し撮り」をする輩が出始め、ついには誹謗中傷やストーカー行為に発展したとの事であった。
「なる程ですねぇ……賞を取るほどまでに写真が大好きだった会長殿は、悪い意味で撮られる側になってしまい、大好きだった分、大嫌いになってしまった訳ですね」
得心が行き、頷くツバサ。
しかしサクラは、その様な理由で写真を毛嫌いするミズホの態度に納得がいかず、
「会長さんに同情はするけど……だから写真を嫌うなんて……間違ってる」
「っと、言いますと?」
「私は写真に、心を救われたの……」
三人の視線が集まる中、サクラは意を決した表情をし、
「いつか、ヒカリちゃんとハヤテくんに話す時が来ると思っていたから話すけど……私は家で軟禁されて育ったの。理由は……ハヤテくんとヒカリちゃんは察しがついてると思うけど……ツバサちゃんには後で話すね」
「ハイでぇす」
「あの頃の私にとって家の中だけが世界の全てで、それは私自身のせいで、仕方の無い事と諦めていたの」
「「「…………」」」
黙って話を聞いてくれる三人の気遣いに、サクラは心の内で感謝しつつ、
「でもそんなある日、親の用事で家に来ていた遠縁の女の子が、宝物だと言う何枚かの写真を、私の両親に内緒でコッソリ見せてくれたの」
「それが、サクラちゃんの運命を変えた写真?」
「うん。一見何の変哲もない、人が写っていない公園の風景写真なのに、そこに写ってる遊具達が、まるで生きてるみたいに、「こっちにおいでよ! 一緒に遊ぼう!」そう言っている様に見えたの!」
世界が開けた、当時の感動の瞬間を思い起こし両眼を輝かせると、
「人にそこまで感動を与えるなんて、凄いですねぇ。ちなみにサクラさん、その写真家さんは、何て言う方なんです?」
「名前は分からないけど、その子からナイショで貰った写真に「ホームページ名」が書いてあって、「奇跡のフォトグラフ」って」
「聞いた事があるですよ! それ「奇跡のフォトグラファー」って呼ばれてた、伝説の写真家さんですよ!」
ツバサは熱を以って身を乗り出すと、
「その写真家さんはネット上でのみ活動していて、ホームページに上げる写真は、どれも命無きモノに命を与え、まるで感情を持っているかの様に見えて、謎に包まれた素性に関してネットは連日お祭り騒ぎ! だったのですが……ほんの数年活動した後、ホームページがピタリと更新されなくなって……。ですが、未だネット上に偽物が出没したりする程の写真家さんなんですよ!」
「やっぱりそうなんだ! 私、写真立てに入れて、飾ってあるんだよ!」
「その気持ち、分かりますよ!」
ガシリと固い握手を交わすサクラとツバサに、
「アハハハ……二人がそんなに熱くなるんだから、凄い写真家さんなんだろうね」
ヒカリが気圧され気味に笑って見せると、
「「凄いなんて物じゃないんだよ(ですよ)!」」
詰め寄るサクラとツバサは、
「心にうったえて来るみたいなんだよ!」
「命を宿している様に見えるんですよ!」
サクラとツバサは、熱い顔を見合わせ再びの固い握手。
女子三人をよそに、一人ソッポを向くハヤテ。
「どうしましたか、ハヤテ君? さっきから妙に静ですよね?」
「な、なんでもない! 気にするな!」
背を向けるハヤテの耳は、赤くなっている様に見え、
「ハヤテくん、どうかした?」
サクラが顔を覗き込もうとすると、ヒカリがすかさず愉快そうな顔して、
「大丈夫だから、今はそっとしてあげてね」
「「?」」
首を傾げ、キョトンとする二人。
「なる程ですねぇ……賞を取るほどまでに写真が大好きだった会長殿は、悪い意味で撮られる側になってしまい、大好きだった分、大嫌いになってしまった訳ですね」
得心が行き、頷くツバサ。
しかしサクラは、その様な理由で写真を毛嫌いするミズホの態度に納得がいかず、
「会長さんに同情はするけど……だから写真を嫌うなんて……間違ってる」
「っと、言いますと?」
「私は写真に、心を救われたの……」
三人の視線が集まる中、サクラは意を決した表情をし、
「いつか、ヒカリちゃんとハヤテくんに話す時が来ると思っていたから話すけど……私は家で軟禁されて育ったの。理由は……ハヤテくんとヒカリちゃんは察しがついてると思うけど……ツバサちゃんには後で話すね」
「ハイでぇす」
「あの頃の私にとって家の中だけが世界の全てで、それは私自身のせいで、仕方の無い事と諦めていたの」
「「「…………」」」
黙って話を聞いてくれる三人の気遣いに、サクラは心の内で感謝しつつ、
「でもそんなある日、親の用事で家に来ていた遠縁の女の子が、宝物だと言う何枚かの写真を、私の両親に内緒でコッソリ見せてくれたの」
「それが、サクラちゃんの運命を変えた写真?」
「うん。一見何の変哲もない、人が写っていない公園の風景写真なのに、そこに写ってる遊具達が、まるで生きてるみたいに、「こっちにおいでよ! 一緒に遊ぼう!」そう言っている様に見えたの!」
世界が開けた、当時の感動の瞬間を思い起こし両眼を輝かせると、
「人にそこまで感動を与えるなんて、凄いですねぇ。ちなみにサクラさん、その写真家さんは、何て言う方なんです?」
「名前は分からないけど、その子からナイショで貰った写真に「ホームページ名」が書いてあって、「奇跡のフォトグラフ」って」
「聞いた事があるですよ! それ「奇跡のフォトグラファー」って呼ばれてた、伝説の写真家さんですよ!」
ツバサは熱を以って身を乗り出すと、
「その写真家さんはネット上でのみ活動していて、ホームページに上げる写真は、どれも命無きモノに命を与え、まるで感情を持っているかの様に見えて、謎に包まれた素性に関してネットは連日お祭り騒ぎ! だったのですが……ほんの数年活動した後、ホームページがピタリと更新されなくなって……。ですが、未だネット上に偽物が出没したりする程の写真家さんなんですよ!」
「やっぱりそうなんだ! 私、写真立てに入れて、飾ってあるんだよ!」
「その気持ち、分かりますよ!」
ガシリと固い握手を交わすサクラとツバサに、
「アハハハ……二人がそんなに熱くなるんだから、凄い写真家さんなんだろうね」
ヒカリが気圧され気味に笑って見せると、
「「凄いなんて物じゃないんだよ(ですよ)!」」
詰め寄るサクラとツバサは、
「心にうったえて来るみたいなんだよ!」
「命を宿している様に見えるんですよ!」
サクラとツバサは、熱い顔を見合わせ再びの固い握手。
女子三人をよそに、一人ソッポを向くハヤテ。
「どうしましたか、ハヤテ君? さっきから妙に静ですよね?」
「な、なんでもない! 気にするな!」
背を向けるハヤテの耳は、赤くなっている様に見え、
「ハヤテくん、どうかした?」
サクラが顔を覗き込もうとすると、ヒカリがすかさず愉快そうな顔して、
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「「?」」
首を傾げ、キョトンとする二人。
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