奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_20

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 ツバサはキーボードを、超高速ブラインドタッチ。
 あまりの速さに驚くハヤテ達であったが、システムが起動させる為の、パスワードなどお決まりの文章入力なので、「当たり前か……」とも思っていると、ウェブページを閲覧する為のアプリであるブラウザーのアイコンをタッチして起動させ、お気に入りから「とあるサイト」を開け、
「これがウチの学校の裏サイトです。まぁ、あまり見る事はお薦めしませんが」
「「「?」」」
 何故そんな事を言うのか、不思議そうな顔をする三人にトップページを見せつつ、ユーザーフォームウインドの入力項目をタッチ。
「で、足が付かない様に、ここに適当に作った「ニセのIDとパスワード」で入ります。このサイトでは私達みたいなよそ者が知り得ない、地元民ならではの情報が多数集まってるんですよ。そして「絞り込み」の項目に、生徒会会長殿の名前を入れて……エンター!」
 パシリとキーボードを弾くと、画面上にはミズホのプロフィールが細かく、幾行にも表示された。生い立ちや、彼女の身に起きた出来事などを時系列に沿って並べた内容の細かさは、もはやプロフィールと言うより人気アイドルの年表である。
「すげえな……情報集めたヤツ、探貞かよ……」
 ベンチの後ろから覗き込むハヤテが、感嘆と言うよりむしろ呆れた声を漏らすと、プライバシーの侵害とも思える内容の羅列に、ツバサを左右から挟んで座るヒカリとサクラも言葉を失った。
「まぁ会長殿は特に、地元の有名人の様ですから」
「そうなのか?」
「ハヤテ君、ここに書いてある、会長殿のご両親の略歴を見て下さい」
「ん? 後ろからだとちょっと見辛いな……」
 身を乗り出して画面を覗き、文字の羅列に眉をひそめ、
「なぁツバサぁ、どこだ?」
 横を向くと、ツバサが赤い顔してうつむきフリーズしていた。
「どうしたツバサ? 熱でもあるのか?」
 心配して更に顔を寄せると、ヒカリがハヤテの後頭部にスパァンとツッコミ。
「イテッ! 何するヒカリ!」
 振り返ると、
「顔が近いの! ツバサちゃんが困ってるでしょ!」
「へ?」
 改めて見るツバサは、頭から湯気が出そうなほど耳までまっ赤に、恥ずかしそうにうつむいていた。
「ゴメンね、ツバサちゃん。ハーくんの、女子に対するボクの教育が至らなかったせいだよ」
「ううん。私こそヘンな態度を取ってゴメンなさいですよ。男子とのかかわりが少くなかったから、免疫がぁ……」
 赤面したまま、恥ずかしそうに頭を掻くと、
「悪い、ツバサ。無神経に、」
「ち、違うんですよ、ハヤテ君のせいじゃ! 高校で初めて見かけた時は、見た目の変貌振りに声を掛けるのを止めようかとも思っていたんですよ。でも今は、もっと早く声を掛ければ良かったと、ちょっと後悔してます」
 パソコンのモニタを少し潤んだ瞳で見つめるツバサは、パッと笑顔でハヤテの顔を見て、
「だってハヤテ君は、やっぱり昔のハヤテ君のままでしたから」
 ニッコリ笑うツバサの目に映る、ヒカリとサクラの疑惑の眼差し。
「え? あっ! ち、違いますよ、お二人とも! ヘンな意味では決してなく! と言うか何と言うか! そ、そんな事より、ここを見て下さい! 会長殿の御父上殿は、大手外食チェーン店の社長さんの様ですね!」
 あからさま誤魔化しつつプロフィールを見て行くと、サクラの目にとある一文が止まり、
「ここ見て!」
 画面を指差した。
  『学童写真コンクール      低学年の部     佳作受賞』
  『同コンクール    高学年の部     大賞受賞』
 代表的な賞を上げれば二つたが、そこには写真嫌いとは思えない、彼女の輝かしい戦績が羅列されていた。
「凄い経歴……」
 サクラが感嘆の声を漏らすと、画面を食い入る様に見るハヤテを見たヒカリが、悪い顔してニヤリ。
「同業者としての感想はいかがかね、ハーくん先生」
「同業者って……感想も何もスゲェとしか言えねぇよ」
プロフィールを見ただけでも分かる、ミズホの写真にかける情熱に感動する四人。と、同時に「何故写真を嫌いになったんだろう」その一文が四人の脳裏をよぎった。
 しかし、
「「「「!」」」」
 文字を辿る四人の目は、ある一行でピタリと止まった。
 ストーカー被害である。
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