奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_26

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 昼休み―――
 ヒカリ、サクラ、ツバサの三人はハヤテに導かれ、とある部屋の扉の前に立っていた。
「ハーくん、ここ?」
 昼休み前の笑顔から一転、怪訝な顔をするヒカリ、サクラ、ツバサ。
 しかしハヤテは女子三人の憂いなど、どこ吹く風。
「あぁ。ここに秘密兵器が居るんだ」
 笑顔を見せるのは、保健室の扉の前であった。
「確かにボクとハーくんは、何かと保健室に縁がある学校生活を送って来たけど……」
「私は小学校時代のお二人しか知らないのでよく分かりませんが、確かに保健室の先生殿は他の先生殿と違って、しがらみが少なそうではありますが……」
 不安を滲ませるヒカリとツバサ。
 幼少期の軟禁生活で、世間と言うものをあまり知らないサクラでさえ不安を覚え、
「ハヤテくん……その……」
「なんだ、サクラ?」
「安易過ぎない?」
 おおむね不評の女子三人に、事情を説明していないからとは言え、真意を理解されないハヤテは困り笑顔で、
「今のうちに、好き勝手言ってろぉ」
 扉をノック。
「はぁ~~~~~~い。どぉ~ぞぉ~~~」
 おっとりした女性の声が扉の向こうから聴こえ、
「失礼しまぁーーーす!」
 ハヤテが扉を開けると、窓辺の椅子に、聞こえた声からイメージした通りの、ホンワカした空気を醸し出す、赤いタートルネックが印象的な、メガネに白衣の女性がユルイ笑顔を浮かべ、膝を揃えてチョコンと座っていた。
「どぉ~したのぉ~? 怪我でもしちゃったぁ~? 風邪ぇ~? でも、四人とも元気そうに見えるけどぉ~?」
 癒し系ではあるが、急いでいる時にはご遠慮願いたい、会話も手間取りそうな話し方である。
 生徒会とこれからひと悶着起こそうかと言う写真部顧問には、あまりに脆弱な印象であり、ヒカリは一歩違えば年下に見えかねない養護教諭の姿に不安が増し、ハヤテの上着の裾を引っ張り、顔を寄せると小声で、
(ちょっと、ハーくん! 確かにこの先生なら頼み事を断らなそうだけど、無理だよ! 先生、心労で倒れちゃうよぉ)
 顔を寄せていたサクラとツバサも無言でコクコク頷いたが、ハヤテは「まぁ見てろ」と言わんばかりのニヤニヤ笑顔を返し、改めて養護教諭に向き直ると、
「先生、お久し振りです!」
「「「「はぁ!?」」」」
 唐突な挨拶に驚く、ヒカリ、サクラ、ツバサ、そして養護教諭の女性。
 女性は戸惑いながら、
「な、何を言ってるのかしらぁ~私は「東 アイ(ひがしあい)」よ~、誰かと勘違いを~」
 するとサクラがすかさず、
「先生……ウソを言ってる……」
 学校の公職に就きながら偽名を語るアイに、驚いた声をポツリと漏らすと、アイは更に狼狽し、
「な、な、な、な、な何を言ってるのぉ~!」
「んん? 言われてみれば、なんか見た事がぁ……」
 疑惑の眼差しでアイの顔をガン見するヒカリ。
「な、何かしらぁ~~~」
 冷や汗を流しながら視線を逸らすアイであったが、突如おしとやかな表情が一変。ヤンキーばりのイキ顔で激高し、
「黙りなァ!」
 机の上の何かを勢いよくバシッと叩き、
「アンタはいつも一言多いんだよ!」
 手をどけると、そこには一枚の名刺が置かれていた。
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