奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_27

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 別人の様に毒づくアイに、
「「「「…………」」」」
 集まる四人の冷ややかな視線。
 ハッと我に返ったアイは、もはや逃げ場なしと判断。
「はぁ~~~やっちまったよぉ」
 ため息交じりに眼鏡を外し、アップにした髪をほどいて振り乱し、揃えた膝を妖艶に組み直すと、肘掛けに頬杖つき、
「久しいねぇ~「東ハヤテ」と「東海林ヒカリ」。東海林、アンタは元気そうで何よりだよ。体はもう大丈夫なのかい?」
「黄(こう)先生ぇ!?」
 驚きと歓喜が入り混じった声を上げるヒカリ。
「え、えぇ~と……お三方は、お知り合い、なのですか?」
 養護教諭アイの豹変振りに、ハヤテの背に隠れていたツバサが尻込みしつつ尋ねると、同じ質問をしたかったサクラもハヤテの背から顔を出し、コクコク何度も頷いた。
 顔を見合わせる、アイ、ハヤテ、ヒカリ。
 アイは皮肉る様な微かな笑みを口元に浮かべ、
「知り合いつうより、この出会い、もはや腐れ縁かねぇ……」
 するとヒカリは、まるで自分の武勇伝を語るかの様に、
「先生は凄いんだよ! 生徒を喰い物にして私腹を肥やしてた「校長と教頭」を、全校生徒の前に引きずり出して説教して、尻を蹴飛ばして学校から叩き出したんだ!」
「「ほぉ~~~!」」
 ハヤテの背から、尊敬の眼差しを送るサクラとツバサ。
 アイ、もとい黄は照れ顔で、慌てて身を乗り出し、
「はっ、話しを盛り過ぎなんだよ東海林ィ!」
 しかしハヤテは追い打ちを掛ける様に、ニヤリと笑って、
「全校生徒の前で啖呵切ったのは事実じゃないですか」
「あ、あの時はオマエ等に乗せられて! のぼせ上ってただけでぇ!」
「でも黄先生、先生が去った後、学校は劇的に変わりましたよ。良い方に」
 微笑むハヤテに、黄は照れ隠しで不愉快そうに、
「そ、そうかよ」
 ドカリと椅子に座り直すと、赤い顔してソッポを向いた。
 うぶな反応に、クスリと笑い合うハヤテとヒカリ。
 豹変した風貌と一致しない、不器用でありながらも生徒想いの一面を目の当たりにしたサクラ。
(この先生の声の色……どこまでも優しい……)
 そう思うと、なお更偽名を使っている事が不思議に思え、
「そんなに凄い先生が、どうして保健の先生のコスプレしてるんですか?」
「コス!?」
 ギョッとする黄と、笑い出すハヤテ、ヒカリ、ツバサ。
(あれ? 私、変な事言ったかな?)
 首を傾げると、黄はムッとした表情でハヤテとヒカリを指差し、
「笑うんじゃないよ! オマエ達のせいで顔バレして本業に戻れなくなったんだろが! ほとぼり冷めるまで任務から外れろって命令だ! しかもハヤテ! オマエのせいで、アタシは未だに名刺と漫才する羽目になったんだよ!」
「アハハハハハハ。一時的に移した俺の体質が、まだ消えてなかったんですねぇ!」
 腹を抱えて笑うハヤテを尻目に、ツバサとサクラは純粋無垢な疑問の目を黄に向け、
「「本業? 任務? 命令?」」
 ハッと我に返る黄。「迂闊な事を口走った」と思い、頭を掻きむしったが、
「まぁ、良い。九山サクラと山形ツバサ、アンタ等に隠し事は通用しないからねぇ」
 能力の事を知っている口振りに、ギクリとするサクラ。
「この先生は大丈夫だよ、サクラちゃん」
「う、うん……」
 気遣うヒカリに不安を拭いきれない笑顔を返すと、ハヤテが不思議そうに、
「サクラはともかく、なんでツバサまで?」
「なんだい、アンタ等知らないのかい?」
「「「?」」」
「山形ツバサはハッキングのコンテストで何度か優勝を経験してる、そっちの業界じゃ名の知れた、「クラッカー」としての腕を持つハッカーなのさ」
「「「えぇ!?」」」
「い、いやぁ~~~。アハハハハハ」
 照れ笑いするツバサ。
「と、言う訳だから、ヘンに隠し事して痛くもない腹を探られるは本意じゃないんでぇ、九山サクラと山形ツバサ、これからする話は他言無用だ」
 二人が固唾を飲んで頷くと、
「アタシの本業は学校の不正を取り締まる、教育庁の潜入監査官なのさ」
「「!」」
 驚きのあまり、声も出ないサクラとツバサ。
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