奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_29

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 午後の授業開始時間まで、まだ若干時間があり、サクラの席を中心に時折笑顔を交え、他愛ない話に花を咲かせる三人娘。
 しかしハヤテが残された理由が気に掛かり、心ここにあらず。
 同じ気持ちの三人娘は、話しの上辺をなぞるだけの様な会話を交わしながらハヤテを待っていると、予鈴と同時にハヤテが戻って来た。
「ハーくん、何の話だったんだい?」
 声を掛けるが、タイミングを同じくしてトキが教室へ入って来て、
「ほぅら、オマエ等ぁ~席に着いて準備しろぉ~」
 ツバサはギョッとしたように、
「しまった! 私の午後の授業、理科室でした! お三方、また後ほどぉ!」
 慌てて教室を出て行き、
「俺等も準備しないとなぁ」
 ハヤテがヒカリと共に自席に戻ろうとすると、トキに呼ばれた理由がどうしても気になるサクラは、
「あ、あのぉ! ハヤテくん!」
 察したハヤテはチラリと振り返り、
「大丈夫だ。やり過ぎるなよって、念を押されただけだ」
 微かな笑みを残し自席へ戻って行った。
(ハヤテくん……ウソついてる……)
 サクラが不安気な表情でハヤテの背中を見送っていると、サクラの不安を感じ取ったヒカリが、
「ハーくんが「あんな顔」して笑う時は、いつもそうなんだ。一人で何か抱え込んでさ」
「え……」
「男の子の意地があるみたいでね、聞いても教えてくれないんだ」
「大丈夫なの?」
「まぁね。どのみち「あの顔」してる時は考えがまとまるまで、ほっといてあげるしかないんだ。へんに問い詰めると、意固地になって予計に話してくれなくなるよぉ」
 呆れた風な笑顔を残し、去って行くヒカリ。
「…………」
(何でも分かっちゃう仲なんだ……)
 遠ざかる背中に、サクラの胸の奥に小さな棘がチクリと刺さった。
(何だろ……この痛み…………私も後ろの席が良かったなぁ……)
 会話しながら午後の授業の準備をするハヤテとヒカリを見つめていると、
「九山ぁ、本鈴鳴ったの気付いているかぁ?」
「え?」
 サクラが振り返ると、目の前に、怪訝な顔したトキの顔が。
「あっ! あわぁわぁぁあわぁ! すみませぇん!」
 慌てて机の中から教科書を取り出すサクラに、
「仲が良いのは結構だが、(授業との)メリハリは付けてくれよなぁ」
 少し困った風に笑うトキ。
「は、はひぃ!」
 赤面して返事を返し、
(め、めぐせ(恥ずかしい)じゃぁあぁあぁあぁぁ~~~)
 開いた教科書で、思わず顔を隠した。
(でも…………ハヤテくん、どうしてウソ付いたんだろう……)
 チラリと後ろのハヤテを見るサクラ。

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