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第4話

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「ふーん。それじゃ、こうすれば、私から離れることができないね」
「ふぉ」

 変な声が出てしまった。
 だが、それは仕方のないことと思ってくれ。
 なぜなら、急にエリカが俺の右腕にだきついてきたからだ。予想外の出来事には、誰だって驚いてしまう。

「なぁ、恥ずかしいんだけど」
「この既成事実を作っておけば、シュウが私以外の女にとられることはないわ。もし、女が近づいてきたら、私が……どこかに行かせるから」
「そんな怖いこと言うなよ」
「怖いこと言ってる? 女の子なら誰しもが持つ感情だと思うけど」
「そんなことないよな。絶対にないよな。男、怖がるぞ。俺、怖くて、泣いちゃうぞ」
「そんなふうには、ならないわ」
「その心は」
「私がシュウをしっかりと調教———じゃなくて、メロメロにさせるから、他の女が来ても、大丈夫」
「なぁ、エリカ。はっきり言って怖いぞ」
「ん? なんか言った?」
「いえ、なにも」

 口元は笑っているが、目は笑っていない。
 これが俗に言う、ヤンデレというやつなのだろうか。
 ヤンデレを愛する人たちが、この世にはいるときく。ヤンデレが好きな人はドMなのだろう。俺にはそうしか思えない。
 女の子から怖いことを言われて悦ぶ人間。そういうことだ。
 
 歩きづらいのを我慢して、歩いていると、パッとエリカは俺のうでを解放した。少し圧迫されていたのか、腕がジンジンしている。

「おはよう、恵梨香。一緒に学校行こ」
「うん」

 スタスタとエリカは友達と行ってしまった。さっきまでの行動の影は一切見られない。普通に可愛い女子高校生だ。
 エリカは俺と二人きりのときにしか、ああいった態度は見せない。学校内では、基本的に知らんぷりの関係だ。
 小中高と一緒だが、これまでずっとそのような生活。そのおかげで、俺とエリカが幼馴染ということ、付き合っているという噂は一切流れたことがない。
 というより、普通、誰と誰が幼馴染だということは知らないと思う。知っているやつは、多分、男か女かは知らないが、どっちかが好きなやつなんだろう。そうじゃないと、他人の関係なんか知らない。
 そのまま生徒の流れにのって自教室へ。
 用意を終えたのを見計らってなのか、いつも絡んでいるクラスメイトがやってきた。正しくいうと、絡まれているんだが。

「おいっすー」
「なんだ、いつもより、ちょと高い声での、そのあいさつは。おまえが言うとキモイから、やめとけ」
「それもそうだな。それなら、言い直そう。おっす、オラ―――」
「なんかもうちょい、面白いのないのか。さすがにそれは、ベターすぎる」
「それなら」
「お」
「どもども」
「で、今日布教する予定のラノベ、マンガはなんだ」
「今日はこれだ」

 と絡んでくるのは、去年同じクラスで今年も同じクラスになった、籠野《かごの》武蔵《むさし》だ。
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