小町のひとりごと

夢酔藤山

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……萌える情熱(3)

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 在原業平さまの祖父は平城天皇。そう、この御方も、世が世であるならば、帝への門が開かれていた御方なのです。その点でいえば、宮様と同じ境遇でした。
 ただ少しだけ違うのは、在原業平さまは賜姓貴族という御立場にあることです。
 賜姓とは、天皇家とは別の、一家を興した一族ということになります。
 藤原の一族にとって、もはや取るに足らぬ存在であり、特段、政治的な警戒もされない。
 わたしはこの稀人である在原業平さまが、なんとなく好きでした。
 細やかな気配りと物腰し。多くの都人はこの御方を〈色好み〉と囃したそうですが、まことにそうだと思います。本当の風流を解する色好みとは、女性のみならず、男性にも心を配れるのではありますまいか。祖父帝も父宮も、辛酸を舐め尽くして逐われた在原業平さまだからこそ、人の境遇に涙し、痛みを我が事のように感じられるのでしょう。
 この殿方が、わたしの愛しい宮様にもお優しいのは、その麗しき色好みのなせる振る舞いと存じます。
 小耳にはさみました。
 このころ在原業平さまは、激しい恋に身を焦がしておられるということを。涼やかな立ち振る舞いの内側に秘めた、情熱の炎。その情熱のためなら、たとえ火の中にも水の底にも飛び込んでしまわれる。色好みと囁かれる由縁は、そうしてしまうだろうと万人が思いこんでしまわれる、溢れんばかりの雰囲気にあるのでしょう。
 その恋を貫くために、一九も年下の宮様に
「この歌なら心に響きましょうかの」
などと真面目に相談しているのです。
 おかしなものでしょう?
 そのような情熱を傾けるお相手とは、権中納言藤原長良の御三女・高子と申される、見目麗しい御方と漏れ聞いておりました。
 わたしは藤原の者を嫌悪しておりましたが、さすがは色好みの御方
「生まれや育ちはその人に選べぬことゆえ、気になどいたさぬ」
と、業原行平さまは申されました。
 この色好みの美男と見目麗しい姫が結ばれることを、当時のわたしは、我が事のように願ったものでした。
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