機人転生 転生したらターミネーターになってしまったんですけど、どなたか人間に戻る方法、知りませんか?

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第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。

no.004 邂逅、拒絶、論破、掃射、断末魔 / 転

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 真面目に相手するだけ無駄かとコウタが思い出したその頃、メニカが耳元でぽそりと。


「コータくん、足止めをお願いしたいんだけど……大丈夫?」
「うん、無理――」
『任せてください!』
「無理ですけど!? あんなデカブツを止めろと!?」


食い気味な許諾なしのアミスの了承にもめげず、コウタは自身の意見を情けなく主張する。
体格差でも倍以上、体重差に至っては十倍ほどある。正面からのぶつかり合いは、素人のコウタからでも不利とわかるからだ。
しかし、アミスはコウタのその主張を軽く流す。


『えー? でも助けに来ましたよね?』
「助けに来たのは助けに来ましたけど、脚活かして逃げるつもりだったんですよ僕は!」
『それも手ではあったんですけど、どうせならカッチョイイ助け方したいじゃないですか』
「どうせなら!?」 

 
コウタからすれば信じ難い理由だが、アミスからすれば当然のことだ。余裕があるならばロマンを求め、手間もかけるし主に反抗もする。


『逃げなくてもコウタさんなら倒せますよ! 断然そっちのほうがカッコイイです!』
「私としても是非コータくんのかっこいい所見たいんだけど……ダメ?」
「ぐぬぬ……!」


メニカの上目遣いを用いたお願いも相まって、コウタは引くに引けぬ状況まで押し込まれてしまった。そもそも会話フェーズに入った時点で負けなのだ。


『大丈夫ですって! タイミングよくぶん殴るだけですから!』
「…………信じますよ?」


そう言う口だが、コウタは全く信用していない。しかし、彼女らに押されきっているのは事実。はぁとため息をついて、諦めたように思考を巡らせる。

 ――確かにバリアを見れば、一概に倒せないとも言いきれない。伝えてこないだけで、びっくりドッキリ機構があるのかもしれない。


「この人を信じていいのか……? いやしかし、確かに逃げるよりはカッコイイけど……」
『それじゃあお願いしますね! 私はメニカちゃんのお手伝いしますから!』
「これのどこが僕専属アシスタント……?」


 アミスはメニカの傍らに飛んでいくと、そのまま談笑もとい、作戦会議を始めてしまった。
 コウタはぽつんと一人、五体以外の武器をろくに持たず、疎外感を感じながら、エイプと正面から対峙することになった。
 わいわいと盛り上がってる女子会に対し、マシン会はとても静かだ。


「……こうなりゃヤケだ。エイプ、悪いけど実験台になってもらう!」


 コウタは意を決して一歩を踏み出した。
 一歩、また一歩と近付いてゆき、あっという間にエイプの懐へ潜り込んだ。


「喰らえ、えーと、メタルパンチ!」


 加速の勢いを乗せて、エイプの胴体に素人丸出しのテレフォンパンチを叩き込む。

 ――重い金属音と衝撃がジーンと響く。貫きこそしなかったが、エイプを少しぐらつかせた気がした。

 しかし、コウタのメタルパンチ(笑)はその無敵ボディの強みをなにひとつとして活かせていない、言ってしまえばゴミカスの一突きだ。
 エイプに少々の損傷と引き換えに、新たな情報を与えてしまう。


『再計測 脅威度D 優先排除対象を変更します』
「やべっ」


 その腑抜けすぎるパンチからコウタは取るに足らない相手だと判断し、エイプは再びターゲットをメニカに変えた。


『プラン再構築までおよそ5秒』
「行かせない!」


 成り行きとはいえ任せろと言った手前、コウタはそうはさせまいと、全身全霊でエイプに体当たりする。
 がっぷり四つとはいかないが、エイプの腰に抱きつくようにしがみつき、両脚を杭のごとく踏みしめ、身一つでその進撃の機人に抗う。


「ぐぬぬおおお……!!」


 踏みしめた足を一歩、また一歩と出し、コウタはエイプもろとも力づくで前に進む。
 その驚異的な膂力に対し、エイプはまた評価を改める。


『再計測 脅威度B 優先排除対象変更 目標拘束 無力化を開始します』
「お手柔らかに――うおぁっ!?」


 エイプは再び目標を変えると、グラップルテールを伸ばしてコウタの右脚を捕まえて宙吊りにした。
 そしてそのまま、コウタを地面に叩きつけはじめた。


「がっ、ごっ、ぎっ……!」


 200キロある金属製の剛性極まるコウタを、布製のタオルかなにかのように軽々持ち上げ、空を切って地を割らんが如くぶん回す。
 二十回ほど叩きのめすと、エイプは仕上げと言わんばかりにグルグルと頭上で回し、ついにはつるし上げた。


「あぁあぁあ目がまわわわるるるる」
『目標依然健在 無力化継続』


 そして吊し上げたままバラバラにするつもりなのか、エイプはドリルやら丸ノコやらチェンソーやら、とても抉るのが上手そうな刃物を起動させた。


「う、この音は……!」


 ――ぎゅいんぎゅいんと、歯医者のアレによく似た、本能が拒絶する不快な回転音が耳元で劈く。


「くそ、この、この!」


 なんとか逃れようと手当り次第に暴れ、殴り付けるコウタだが、エイプの拘束は緩む気配すらない。むしろ強まっている。
 そして、抵抗が収まるのを待たずして、容赦なく刃の雨がコウタに襲いかかった。


『攻撃開始』
「ぐっ……!」


 思わず想定される激痛に視界を閉ざすコウタだが、次の瞬間やってきたのは、痛みでもなんでもなかった。

 ――ばきんと、金属の破砕音が聞こえた。


「……痛くない」


 刃の群れはコウタのボディに触れた瞬間、全て砕け散っていた。依然変わらぬ、傷一つない黒いボディがそこにあるだけだ。


「は、はは……! こんなに硬いのか僕の身体は……!」


 思わず笑いが出てしまうくらいに、圧倒的な防御力。
 このかたい事実により、コウタのメンタルにいくばくかの余裕が出始めた。

 ――機銃掃射はなまじ刺すような痛みを断続的に感じたゆえに恐怖感があったものの、今回のこれはせいぜい背中をはたかれたくらいの痛みがそれも一度きりで、怖くともなんともない。


「死なないのはわかったけど、ここは脱出したいな……。どうしようか」


コウタは幾ばくかできた余裕で、ぶら下がりながら脱出方法を考えることにした。

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