機人転生 転生したらターミネーターになってしまったんですけど、どなたか人間に戻る方法、知りませんか?

靴のサイズ30㌢

文字の大きさ
11 / 30
第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。

no.005 サイボーグ部隊GIII 序

しおりを挟む
コウタの渾身のフルブラストにより、エイプは跡形もなく蒸発してしまった。その余波でロイドパークは半壊し、屋外の木々や岩まで燃えたり砕けたり溶けたりしてしまっている。
 そんな惨状を引き起こした張本人たるアミスは、なぜだか誇らしげにふふんと鼻を鳴らす。


『むふふ、どうですかコウタさん! アークの出力は伊達じゃないですよ! なにか言うことは?』


 全ては驚かせようと、喜ばせようとやった事だ。あなたのボディはこんなに凄いんですよと言葉で伝えるだけじゃ飽き足らずやった事だ。
 アミスには一厘たりとも悪気はない。
 しかしそんなことは、被害者のコウタからすれば知ったことではない。


「……クソバカボケアホアミス」
『クソバカボケアホアミス!?』


 コウタは地面に伏しながら、そのシンプルな悪態を容赦なく吐いた。

 ――30倍もの出力に排熱機能がダウンしたらしく、先程から警告音声が鳴り止まない。そのせいか、表記されている体表温度が摂氏3000度のままほとんど下がっていない。


「……クソ暑い」


 この程度でコウタが死に至ることはありえないが、平均的なホモ・サピエンス・ヒュームの体感温度に換算すると裸一貫で極暑の砂漠に放られたくらいの暑さだ。
 つまるところ、死ぬほど熱くて暑い。


「アミスさん、ひとつ聞きたいんですけど、なんでこんなにとんでもなくアホなんですか?」
『コウタさん口調丁寧なわりに意外にもお口悪いですよね』
「アミスさんは意外でもなんでもなく普通にアホ……うぷっ!?」


 ――突然、得体の知れない吐き気に襲われる。反射的に堪えるが、堪えきれる量でもない。


『あ、やっぱり酔っちゃいますか。そのまま吐いて大丈夫ですよー』
「なにこれ……おろろろろ」


 決壊寸前のコウタダムが案の定決壊し、虹色の何かが流れ出た。そこにタイミングよくメニカがやって来た。


「派手にやったねぇ。眩しかったからほとんどなにも見えてないけど。跡形も……ホントになにもない」


 メニカは目の前の惨状にワクワクが抑えきれない軽快な足取りだったが、やがてコウタに近付くにつれ大きくなる熱気に、その数メートル前で立ち止まった。


「……熱いね?」
『あ、メニカちゃん。今コウタさんの排熱機能がダウンしてるので、あまり近付かないでくださいねー』
「なるほど、そういうわけかこの熱気は。なるほど……で、コータくんはなんで吐いてるの?」
『エネルギー酔いですね。あまりエネルギーを一気に吸い取ったり流したりすると、酔っちゃうんですよね。だからああして一旦エネルギーを空にしてるんです』
「初耳おろろろろ」


 ボディそのものは激しいエネルギーの流動にも耐えうる構造をしているが、コウタ本人はその限りではない。
 エネルギーの奔流にメンタルが耐えられないのだ。故に一度エネルギーを空にし、正常な流れに戻さなければならない。


「うーん、勿体ない。今度コータくん用の外付けエネルギー貯蔵庫作ってあげるね。あ、これじゃオートノイドじゃなくて嘔吐ノイドだね」
『うまい!』
「じゃあ私は迎えを呼んでくるね。冷めたら教えてね」
『はいはーい』
「おろろろろろろ」


 コウタが吐き続けて十五分、ようやく酔いと熱が収まってする。その間にメニカはアミスと仲睦まじく情報交換をし、既に彼よりもボディについて詳しくなっていた。


「ふたりとも、これからどうするの? とりあえずは事故の参考人として着いてきてもらうことになるけど」


 手元のデバイスでコウタをスキャンしたり写真を撮ったりしながら、メニカはそう言った。

 ――アミスから違法に忍び込むという策は出たが、そんなものは策とは呼べない。実質ノープランには変わりないが、ひとつだけハッキリしていることがある。


「とりあえずこのバカをアシスタントの座から引きずり下ろす策を考える」
『何を言ってるんですか? コウタさん。私たちは一心同体の一蓮托生ついでに比翼連理ですよ? 切っても切れないニラのような関係なのです』


 言ってやったりとでも言いたげな表情を浮かべながら、アミスはふふんと上体を逸らしてコウタにドヤる。
 それに対するコウタの返答は、実にシンプルなものだった。


「だまれ」
『黙りません。音声アシスタントが黙るのは職務に反します!』
「ずっと反してろばーか」
「仲良いねぇ」
『ですよね!』
「どこが……?」


 ――しばらくして、救助隊が到着した。
 廃墟と化した実験所内に作業員がぞろぞろと入ってきて、先頭にいた男がメニカに声を掛けた。


「パーク博士。お迎えにあがりました」
「ご苦労さま。ほとんど消し飛んじゃったけど、解析のち修復を頼むよ」
「承知しました。……そちらのオートロイドは? 登録にないようですが」


 ――ちらと向けられた視線には友好的な意思はひとつもなく、警戒、疑念、不明といった感情が含まれていた。無理もない。

 コウタは特に何も言うつもりはなかったが、メニカはそれに納得がいかなかったようで、鋭い目付きで男を睨みつけた。


「失礼を言わないで。彼はオートノイドのコータくん。私の恩人だよ」
「オートノイド……それは大変失礼致しました。コータクン殿、非礼をお詫び申し上げます」
「いや、非礼という程では……。こんなナリですし、間違えられるのは仕方ないかと。頭を上げてください。それと僕の名前はコウタです」
「はっ、失礼致しました。パーク博士、コータ殿。ヘリを待機させておりますので、ご自由なタイミングでご出立ください。それでは」


 男は綺麗なお辞儀をひとつすると、振り返って作業員にてきぱきと指示を出す。
 それを眺めながら、コウタたちは厳つい見た目のヘリに乗り込み、飛び立った。

 ――飛んでから数分して、ふと気になったことを聞いてみた。


「メニカって偉い人なの?」


 博士と呼ばれるからにはなんらかの博士号的な類の称号を持っているのはコウタでもわかる。
 だが、それだけではあの作業員たちの丁寧すぎる態度に説明がつかない。ただの上司にする態度にしては、明らかに行き過ぎていた。


「ん? そりゃあ私はえらいよ。なんたって天才だからね。ほら、もっと褒めて! なでなでも可だよ!」
「……すごいね」


 どうやら詳しく話すつもりはないようだと、コウタはそれだけ悟るとそれ以上は何も言わなかった。

 ――数十分ほど中身のない雑談を広げていると、やがてヘリが大きな屋敷に降り立った。だいぶ郊外らしく、辺りには隣家と呼べるものはない。少し離れたところに街並みが見える程度だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...