機人転生 転生したらターミネーターになってしまったんですけど、どなたか人間に戻る方法、知りませんか?

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第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。

no.010 ONE/BILLION 1st

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 龍の逆鱗に触れるを地でいった結果、ミスリルドラゴンは当然のようにブチ切れた。先程までの牙や爪による攻撃は手心を加えられていたのだと、コウタは痛感していた。ミスゴンが大口を開けたその中に、煌々と輝く小さな太陽のような恐ろしげななにかが見えているからだ。


「なんだあのヤバそうなの」
『高熱源反応感知! ドラゴンからです! そして魔素の流動が激しくなってます!』
「つまるところ?」
『魔法的効果のあるブレスが飛んできます! 下がってください!』
「脚、抜けろ……抜けた!」
『全力ダッシュです!』


 コウタは地面を蹴っ飛ばし、全速力で駆ける。そのすぐ後、ミスゴンは己の逆鱗諸共、コウタのいた場所を焼き尽くした。


「ドラゴンブレスだ! すごい!」
『感心してる場合じゃないですよ! ただ火を吹くだけならともかく、竜種は魔法効果のあるブレスを使えるのもいるんです! ミスリルドラゴンもその一種で、ミスリル化の魔術反応を引き起こします! ほら、せっかく逆鱗をぶち抜いたのにブレスで回復してます! ちなみにバリアは使えません!』
「え、バリア使えないんですか!? 僕の唯一の魔法っぽい技が!」
『コウタさんのバリアは生じたエネルギーを奪えても、本来持つエネルギーや性質は奪えないんです! 化学反応で生じたぶんのエネルギーは奪えますが、化学反応そのものを阻害することや、原子間に働く力を止めることは出来ないんです! それは魔術反応でも例外ではありません!』
「???」


 ドラゴンの放つブレスは内部の魔素袋と脳波を反応させ、魔術反応を起こしている。学会によれば魔法に近しいもの、あるいは魔法を使っているのではないかとされている。ミスリルドラゴンの放つそれは、触れたものを準ミスリルに変換するという効果の魔導現象を引き起こす。それはバリアを形成している粒子も例外ではない。


「つまりどういうことですか?」
『ミスリル化そのものは防げないんです!』
「な、なんだってー!」
『どうしましょう! 逃げるか耐えるか……! アルヴェニウムは当たってもミスリル化はしないでしょうが、熱によるダメージは免れませんし、関節とかにミスリルの粉末が詰まったら洗うの大変ですよ! 動きも鈍くなりますし!』


 全ての物質がミスリル化するのではなく無論例外もある。たとえばコウタのボディを構成するアルヴェニウムはもろに直撃したとしてもミスリル化はしない。しかし、それはあくまで起きる現象に限った話だ。ブレス本来の熱や衝撃のダメージはある。


「熱いのはもう当分嫌ですね。あと動けなくなると戦えなくなるのでそれも却下ですね……この辺りか?」
『じゃあ逃げつつ避けつつ様子を……ってなんで止まるんですか!? ヤケになるのは早いですよ!』
「まぁ見ててください。機式剛術、岩返し!」


 ミスゴンからある程度距離を取ると、コウタは立ち止まってしまう。そして右足を強く踏み込んだ。
 すると、岩盤がおよそ2メートルほど抉り返される。それは立ちはだかる壁となり、ミスリルブレスを遮った。


「バリアを添えて……と」


 岩の表面は瞬時に準ミスリルと化し、どろどろに溶けこそはしていないが、それでも削り壊されるのは時間の問題だ。そこでコウタは、バリアを掘り返した岩にそっと添えた。


「よし、これでどうですか?」
『今のなんですかコウタさん! カッコイイです!』
「ハーク隊長に教わった技のひとつです。脚力を活かせと。なんかこういい感じに力を加える梃子の原理的なアレです。隊長は何気なくやってましたけど力加減が難しくて……。これ出来るのにまる三日かかりましたよ」
『私としては全部活かして欲しいですが、これならなんとか……! それにバリアに触れさせて間接的にエネルギーを奪うってのもなかなかいいアイデアだと思います。メニカちゃんの言ってたのを利用したんですね。このお岩さんも長持ちするはずです!』
「まぁ言わばウィンウィンの関係ですね」
『お岩さんからすれば勝手に叩き起されて勝手に盾にされて勝手にエネルギー奪われてるんですけどね』
「資本主義なんてそんなものでしょう。偽りの価値を押し付けて対等に見せるだけで、その実搾取されているだけってのはもはや基本となりつつあります」
『急に何を言い出すんですか。そんなんじゃありませんよ多分』


 ミスリル化を岩に受け持ってもらうことでバリアの崩壊を防ぎ、かつバリアでエネルギーを奪い続けることで岩を長持ちさせる。メニカがコウタに提唱した【AFBの性質を応用した装甲強化プラン】を参考にしたものだ。彼は当初こそ彼女らの呪文の前には虚空を眺めるしか出来なかったわけだが、一ヶ月も聞かされ続けると存外少しは把握できるようになっていた。


『コウタさんどうですか、勝てそうですか?』
「勝てるイメージはわかないですね。そもそも硬すぎる。逆鱗は結局突いても怒らせただけで大したダメージはなさそうですし、なんなら治ってます。結構強めに蹴ったのに。速さは今のところ勝ってますが、入り組んでるから飛べてないだけで走って逃げようものなら凄まじい速さで飛んできそうです。参考までにドラゴンの時速どのくらいですか?」
『そうですね、種類によってまちまちですし鋼龍は遅い方ですが、それでも飛行時は亜音速に近いですね。飛び方も魔力を推進剤にしてるとかで飛行機に近いです』
「……ガス欠狙いの泥仕合になりそうだなぁ」


 やがてミスリルブレスが止むと、コウタはバリアを消してそろりと岩陰から顔を出す。しかしすぐさま、またもや警告音が轟いた。


『高熱源反応!? しかもさっきより温度が高いです!』
「もう!?」
『回避不能、衝撃に備えてください!』


 満足に回避もできず、炎球がコウタを飲み込んだ。炎が散らず一点に集中するそれは、熱が篭もり纏わり付く魔術式が組み込まれている。


「熱っっっつ!!」
『瞬間温度摂氏三千度オーバー! 内部冷却フル稼働です!』
「寒っっっむ!!」
『我慢してください! 温度を下げても消えない……! なら、洗浄水!』


 コウタは冷却機能と馬鹿げた耐久力によりダウンを免れ、ボディ用の洗浄水によりなんとか鎮火する。しかしミスゴンの猛攻は終わらなかった。


『高熱源反応、またまた来ます!』
「またぁ!?」


 薙ぎ払うように炎が放たれると、岩は溶けだし溶岩となり、まるで地獄の様相を見せた。温度とは初撃に及ばないが、燃焼時間と延焼範囲が大きい。初撃の速さと範囲では不意打ちでなければ当たらないと悟っているからだ。しかしコウタは今度は焼かれず、炎の隙間を走り抜けてまたも岩陰に隠れた。


「不意打ちじゃなければ避けれるけど、こう連発されちゃ近付けるものも近付けない……!」
『……なるほど、ミスリル化を用いなければその分の魔力リソースを火力に回せますし、効果を熱源増大の単一に絞って魔術式を単純にすることでブレスの高速化を実現してるんですね』
「はやいうまいやすいってことか……」
『そういうことです』


 コウタらが隠れた岩陰は実はミスゴンに誘導させられて隠れた場所だ。ミスリルブレスで辺りの邪魔なものをミスリルにして溶けやすくし、火球で視界を狭める。間髪入れずに広範囲のブレスでミスリルを溶かし、逃げ場をひとつに絞る。そして三撃目、トドメの一撃だ。


『コウタさん、第三波が来ます! 恐らく一帯を消し飛ばすレベルの奴が来るかと! バリア再使用可能までおよそ一分半、どうにかして時間を稼いでください!』
「どうにかって……。まぁ、やれるだけやってみます」


 コウタは怒り荒れ狂い炎を撒き散らすミスゴンに対して、実はそれほど恐れていない。言うほど命の危機も感じていない。ハークと対峙した方がもっと恐ろしく、もっと危機感があるからだ。伊達に一ヶ月もの間、死線で反復横跳びをしていなかった。


「そういえば、あれは二週間前だった。実験で今みたいなうだる熱さに晒されて、その状態で隊長と組手をした。というかなんであの人は生身であの熱さに耐えてたんだ?」
『えっ!? この状況で回想入るんですか!?』


 この状況を打破すべく、コウタは呑気にも一ヶ月の地獄の、とある一幕を思い返し始めた。
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