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第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。
no.010 ONE/BILLION 2nd
しおりを挟む「コータよ。お前のそのバリアが効かず、かつ避けることもままならない攻撃には、どう対処する?」
「寝返ります」
脳天に拳骨が炸裂し、コウタは地面にめり込んだ。
「痛い!」
「真面目に答えろ」
「えっと、うーん……。僕の場合は多分喰らいはしても死にはしないと思うので、何回もくらって死に覚え的に打開策を見つけます。それにデータさえあればアミスさんとメニカがなんとかしてくれるでしょうし、そんなヤバいやつは釘付けにするだけでも他が楽になるんじゃないかと」
「ふむ、素人上がりにしては悪くない答えだ。だがもっと確実に、かつお前一人でどうにか出来る手がある。それに特別な技術も必要ない」
部下を地面に埋めながら話を続けるハークに、それをもはや気にも留めないコウタ。頭のおかしい空間が繰り広げられているが、この後それはもっと酷いものになる。
『ふたりとも、ちょっと実験に付き合ってくれない?』
『Gシリーズ試作一号機、アミス行きまーす!』
『耐熱可動性やらを見たいから、とりあえず火の海にするねそこ』
スプリンクラーから油が巻かれ、コウタらの回りが火の海になった。有無を言わさぬ早さで火刑に処されたが、この師弟は文句ひとつこぼさない。
「暑い。というか隊長は大丈夫なんですか?」
「コータよ。筋肉があればこの世の大抵は解決出来る」
「あ、来ましたよ」
『全速前進!』
紅炎の中をアミスが操縦する試作オートロイドが駆け迫る。ハークは未だ埋まっているコウタの頭を掴むと、軽く引きずり出した。
「さて、話の続きはお前を振り回しあのマシンに打ち付けながら続きをするとしよう」
「いや振り回す意味は? 普通に戦って普通に話しましょう……なんて握力だ。取れやしない」
「コータ、コンビネーションとはこういうものだ。互いを活かすというのはこういうことだ。覚えておけ」
「絶対違うと思うんですけど。活かすどころか死にそうなんですけど」
コウタはこの二週間、否。初めの三日で既に己への雑な扱いに慣れていた。それは火の海の中鋼の機兵に向けて振り回されながらでも会話が成立する程だ。
『ダメだよコータくん。死んじゃヤだよ』
「そう思うならこの地獄をどうにかして欲しい。火はいいけどこのゴリラをどうにかしてくれ」
『コータくんが死なないためのものだからだーめ。あとそのゴリラをどうにかしたいなら強くなるしかないね』
「死なない為に死にかけるとか意味がわからないんだけど」
「何かを得るためには相応の対価が必要ということだ。歯を食いしばれ」
「……ゴリラめ」
~~~~
『いやー、あれは楽しかったですね。また操縦したいです』
「結局あの後、一人でどうにでも出来る手ってのをゴリラ隊長は教えてくれなかったんですよね」
『回想の意味は!?』
「まぁそれはさておき、僕らがこれからやるべき事が分かりました。多分脳筋ゴリラのことなので、あの時言おうとしてたのもおそらくこれです」
『ほほう。その心は?』
「言ったでしょう? 脚を活かすと!」
『つまり、いつも通りということですか?』
「そういうことですね」
『わざわざ回想聞いて損しました』
「その返答は期待通りです! コウタ行きます!」
『あーもう……! メニカちゃん特製タングステンスパイク展開!』
コウタは全裸から、靴を履くくらいの文明レベルを手に入れていた。全裸に靴のみという変態ファッションである。硬く鋭いスパイクは地面をしっかりと掴み、コウタの脚をより活かす。崩れた地面を慣れた様子で抜け、最短最速でミスゴンへ向かう。
『熱源増大! ものの数秒で発射されると推測されます! 周辺温度、一万度を超えました! ……ほんとに狙うんですか!?』
「そりゃあもちろん! あんな恐ろしいモノを止めるんですから、リスクを背負わないと!」
『……なんかコウタさんがおかしい。まるでハイになる薬でも――あっ!!』
そこまで言って、アミスは気付く。ドラゴンのブレスには魔力エネルギーがたっぷり含まれていることに。コウタはその魔力エネルギーを吸収してしまったということに。そして、彼は魔力を過剰摂取すると酔っぱらうということに。テンションが高めだったのは、魔力を摂取しすぎて酔っていたからだ。一瞬それに戸惑ったが、深く考えるのがアホらしくなったのか、思考を止めた。
『まぁいっか!』
酔っ払うといっても三半規管に影響はない。ただただ気分がふわふわして細かいことを考えられずに、めちゃくちゃ大雑把になるだけだ。コウタは酔いにより微塵たりとも躊躇する様子もなく、ミスゴンの脚元に辿り着いても走り続けた。脚に脚をかけ、そのまま力の限り駆けていく。つまり、ミスゴンの身体を走り登っているのだ。
「どおおらあぁ!」
『コウタさん、壁走り出来るようになったんですね!』
「睡眠必要ないですから!」
『答えになってませんけどまぁいいです!』
ハークとの修行は主に受け身の特訓と走り方に注力されていた。岩返しと穿脚はひとつくらい技を教えろとメニカが騒いだゆえの措置だ。不安定な地面でも一定の速度を保ち、壁さえも駆けられる様に、文字通り寝る間も惜しんでコウタは訓練した。
「喰らえミスゴン! 機式剛術!」
ほぼ直角、なんなら反り返っているミスゴンの長い頚椎を駆け、例の如くコウタは自らを弾丸と化す。そしてエネルギーを込めた右脚で、その顎を蹴り穿った。
「初動潰し !!」
雷が落ちたかのような轟音。その音と共に、ミスゴンの顎は大きくかち上げられていた。直角よりも大きな角度にならなかったのは最強種としての意地か。
「ガッ……!?」
金属製の甲殻が大きく凹み、ミスゴンの脳に決して少なくないダメージを与える。発射寸前だったブレスは制御不能のまま真っ直ぐ天に放たれ、一条の光が柱のように天と地を繋いだ。
「受け身!」
コウタはミスゴンの天に向かう死のゲロを見届けながら、こなれた様子で受け身を取る。落下程度でダメージはないので素早く起き上がる為の受け身だ。
『妨害成功です! それで、普段の前蹴りとどう違うんですか?』
「まぁ同じですね」
仰々しく技名をつけてはいるが、要はただの先制攻撃である。一応通常のそれとは違い、妨害を目的としているので相手が攻撃態勢に入った場合にのみ成立する。また、初動を潰せばいいので攻撃方法はキックに限らない。
なんにせよ、コウタの反撃が始まろうとしていた。
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