機人転生 転生したらターミネーターになってしまったんですけど、どなたか人間に戻る方法、知りませんか?

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第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。

no.011 弱者の意地 後編

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「というか事情聴取ならまず殴る前になにか聞いてくれ! 有無を言わさず十回殴られたけど!」
「ひとまずボコしてからってのが俺のやり方だ。怪しきは罰する」
「ならせめて罪状くらい読み上げてくれ……!」
「おっと、それは忘れてた。悪いな。ついさっき、この辺りから成層圏を抜けるほどの光の柱が放たれた。近くに居たのがちょうど俺だった。んで要請で調査に来たら、大量のスクラップとお前、ついでにドラゴン。荒れ果てたこの惨状を見て、唯一の生存者のお前に聴取してるって流れだな。やったろ?」
「やっ……てない」
「やってる間だな。じゃあ溶けるでも鋭く抉れるでもない損傷があるこのスクラップどもはなんだ?」


 ユーリが電磁力で浮かすそれらのスクラップは、先程コウタがエネルギーを爆裂させて吹き飛ばしたオートロイドだ。内部から無理矢理破裂されられたような損傷をしている。


「……自爆でもしたんじゃないですか? ほら、そういうのロマンらしいじゃないですか」


 コウタはそっぽを向きながら濁す。
 アークのこと、とりわけフォース技術関連はできるだけ内密にすると、メニカとアミスの両名と決めたのだ。彼が生身ならまだしも、人権が曖昧な完全機械人間だ。
 物扱いされ、国の所有物としてアーク諸共管理される可能性があるからだ。


「なにか隠してぇことがあるらしいが、とりあえずお前は証拠ロイドとして突き出す。所有者は誰だ? 製造元は何処だ?」


 ユーリは声音こそ穏やかだが、その目の奥はコウタへの疑惑で埋め尽くされている。その疑いが強まるほどに、雷の拍動は少しずつその勢いを増していく。
 コウタはそれに内心ヒヤリとしつつ、己が主張をぶつける。


「だから僕じゃない! ミスリルドラゴンがやったんだ!」
「確かにドラゴンが暴れ回ったような形跡はあるが、お前がドラゴンを触発した可能性もある。疑わしきは死刑だ」
「勇者のくせに慈悲の心ないのか……!?」
「使いどきじゃねぇからな」


 世界を救う為には倫理を完全に無視し、悪を容赦なく完膚無きまでに叩き潰すしかないと主張するイカレポンチもいる。ユーリはそれに比べれば随分と優しい方だと自負している。何故ならば、完全な独断で処刑執行なぞしないからだ。
 そんなことを思い浮かべながら、彼は言葉を続ける。


「それに――」


 勇者と称号付けられる人々は皆、ある意味では世界を救おうとする。しかしそれは人類の為でも、大義の為でも、世界の為でもない。ましてや世界を脅かす巨悪がいるわけでもない。はじまりの勇者は、自分のことを、ただそういう生き物だと評した。
 自分の起こした正義の結果からどんな批判や処罰を受けようとも彼らは絶対に止まらない。生物に生殖本能があるように、ただ自分の存在意義を確立する為、その為だけに世界を救う。あくまで一個体の存在としての本能ゆえだ。


「それを求める奴は皆、俺の敵になる」


 そう言ってユーリは一歩、脚を開く。
 ざり、という砂利を踏みつけにする音だけが静かに聞こえる。コウタには、彼の顔がどこか笑っているようにさえ見えた。


「なるほど。それなら慈悲なんて要らない。それじゃあ僕こっちだから――アディオ!」


 早口で捲し立てたついでに地面を爆裂させ、コウタは駆け出した。
 メニカの元に駆け付けたときよりも、ハークと戦ったときよりも、ミスゴンに迫ったときよりも遥かに早く、強く、地面を蹴り付けた。
 火事場の馬鹿力とでも言うべきか、初速で最高速を叩き出す必死ぶり。純然たる命の危機は、かつてないパフォーマンスを引き出させる。


「逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ……!!」


 乱れぬ筈の息を乱しながら、コウタは更なる酷使を自身の両脚に課す。
 任務を放棄して敵前逃亡とは懲罰ものだが、勇者を相手にした場合は違う。
 むしろ余計な被害を出さないため、迅速に撤退をするのだ。ハークやメニカですら、異口同音に逃げろと言う。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 コウタは滅多に感じない疲労感に膝を折り、必要もないのに全身で息を整える。大した距離を走った訳でもないのに、なぜか息も動悸も休まらない。

 ――少し遠くで雷鳴が轟く音と、ユーリの叫ぶ声が聞こえた。


「逃げることしか出来ねぇのか? いちいち隠れてめんどくせぇ。一帯丸ごと消し飛ばしてやろうか!」


 ユーリの脅しに、コウタはもはや屈しなかった。怒りを含ませながら、吼える。


「どうせ君みたいな電気使いはなんかレーダーみたいに人の場所がわかるんだろ! 逃げないからちょっと待ってろ!」


 ユーリからの返事はない。ないが、コウタはこの沈黙を肯定とした。周囲のエネルギーが特に乱れていないのも、判断材料として起因している。
 そのまま何かを探しているのか、あたりをきょろきょろとうろつき始めた。
 そして、少しして目当てのものをみつけた。


「――あった」


 ミスゴンとの一件で瓦礫に埋もれた上、色々あって吹き飛ばされて行方知れずとなっていたリュックを見つけた。ぽつんと岩肌に打ち付けられていた。
 中身を全て引っ張り出し、そこに動かないアミスをそっと入れる。


「……アミスさん、メニカならきっと治してくれます。リュックの中ですが、野晒しよりマシでしょう。待っていてください」


 相変わらずアミスはうんともすんとも言わない。コウタはそれにまたも若干心が揺らいだが、すぐに首を横に振った。そして、立ち上がって。


「いってきます」


 アミスにそう言い残し、拳を固く握った。
 気配と肌がピリピリするのを感じながら、コウタはより強く肌がピリつく方へと歩いてゆく。その先にユーリがいると確信していた。


「よう。もう済んだのか?」
「……おかげさまで」


 コウタが岩陰から姿を現すと、ユーリは仁王立ちで開けた場所に突っ立っていた。


「しっかし、二足歩行であそこまでの速度を出す意味はあんのかね。タイヤでもつけりゃもっと速いだろうに。作った奴アホか?」
「!」
「そら、間合いだ」


 何度目かになる雷拳。しかし、今度のコウタは一味違う。地面が陥没するほど踏ん張り、雷撃は歯を食いしばり気合で堪え、怒りの籠った眼差しでユーリを睨みつけた。


「……やっぱり二発だ。二発ぶん殴る」
「は?」
「フンッ!」


 震える脚を地面に叩きつけるようにめり込ませ、コウタは構える。普段はアミスのことをどうしようも出来ない厄介者扱いしているが、ほぼ一心同体の存在だ。憎みこそすれ、多少どころかかなりの仲間意識が芽生えている。


「確かにアミスさんはどうしようもなくバカで人権意識の欠片もない鬼畜オブ鬼畜の天然ボケの僕のアシスタントだし、僕より僕に詳しいのに強敵を前に居なくなるなんてアシスタント失格だけど、君にだけはそれを言わせる訳にはいかない」
「お前の方がボロカスに言ってんじゃねぇか」


 相棒が倒され、あまつさえその犯人に罵倒される。コウタは珍しく怒っていた。怒り心頭、今にも握った拳が出そうだった。
 しかし。


「しかし……そうか、そいつはお前にとって大切な奴なんだな。知りもせず悪く言ってごめん」
「……へ?」


 想像もしないユーリの素直な謝罪にコウタは毒気を抜かれてしまう。全くの予想外だった。


「なんだ、俺が人の心もなにもない鬼畜だとでも思ってたのか? 自分で言うのもアレだが俺は口が悪いだけだ。悪党はどんな事情があろうとボロクソに言ってやるが、お前は変なだけで悪くはない。だから謝った」


 その率直な謝罪により、コウタの怒りはどこかに霧散してしまう。


「だが、それはそれとしてお前は連行する」
「でしょうねっ……!」


 コウタはユーリの拳を防いだ。先程のように力づくで堪えたのではなく、しっかりと腕で阻んで防いでみせた。雷の痛みと痺れこそあるが、姿勢を崩されていない。


「僕もそれはそれとして、君のことはぶん殴るって決めた」
「上等」


 迎え撃つ拳と拳。鋼と雷がぶつかり合い、響音と雷霆が炸裂した。





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