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第一章 立志篇 Fräulein Warlord shall not walk on a virgin road.
令嬢以前の物語 第4話 それは女には相応しくなかったはずの仕事
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その後ろを一等陸曹、そして若手の自衛官たちがついていきます。
皆彼女のカリスマに魅入られていました。
会議室の前に着き、部下たちに部屋の前に待機することを指示して。
「会議中のところ失礼します」
三佐はノックもせずに会議室の中に入ります。
中には幕僚たちと駐屯地の最高責任者たる司令官の一佐がいました。
皆難しい顔をしながら資料を睨んでいます。
「三佐か?今会議中なんだ。後にしてくれ。すぐに下がりたまえ」
一瞥しただけで、三佐を部屋の外に追い出そうします。
「司令、避難民の収容を私の判断でもって開始したことをご報告いたします」
「なんだと?」
一佐は三佐の突然の報告に、席から立ち上がり、窓のブラインドから外を覗きます。
そこには整然と列をなして駐屯地に入ってくる人々が見えました。
「あの暴徒がなぜ落ち着いている?いったい何があった?」
「そんなことはどうでもいいことです。司令。状況は予断を許しません。ぜひ会議で何が決まったのかをお聞かせ頂きたい。一分一秒が惜しいのです。軍閥共がこの街に迫っているのですから。本国はなんと言っているのですか?我々は何をするべきなのですか?お聞かせください。今すぐに」
口調こそ丁寧で柔らかいのに、三佐の声に明らかな威圧感がありました。
それに気おされるように一佐は訥々と言います。
「街に流れる噂の真偽を現在多国籍軍が確認中だ。本国政府も事の真偽が明らかになるまでは軽挙妄動を慎み、待機するようにとの指示だ。我々の任務はあくまでも人道復興の支援であって、暴動の対処や偵察は任務の範疇ではない。待機だ。すぐに持ち場に戻り給え三佐」
「つまり何も決められないということですね。明々白々な脅威が迫っているのに、我々は指を咥えて人民を見殺しにし、そしてボーっと撃たれて死ねと。そうおっしゃるのですね」
三佐の挑発的言動に一佐は顔を真っ赤にして怒鳴りました。
「口を慎め三佐!武装勢力がここにくるという噂の真偽など当てにならん!多国籍軍からもそんな情報は来ていない。このパニックはただの一過性のものに過ぎない」
「そう自分に言い聞かせたいだけでしょう?事なかれ主義も大概にしていただきたいものだ。雁首揃えて大の男たちが会議の名目で引きこもってめそめそと現実逃避か。男らしくないぁ。残念だよ」
そう、冷たく言い放つ三佐の顔には隠しきれない侮蔑の色が混じっていました。
「いい加減にしろ三佐!パニックに当てられて我を失ったのか!だから女には向いていないんだ!化けの皮が剥がれたな小娘!貴様など所詮机上の学問と訓練だけのお嬢さんに過ぎない!」
「ふん。その小娘に挑発されただけで、怒り狂うような奴にお嬢さん扱いされるとはね。まったく、やはり貴様らではこの事態を解決することは能わずだな」
指を鳴らすと、銃を持った若手の自衛官たちが会議室に突入してきました。
銃口の先を幕僚たちと一佐に向け威嚇します。
「三佐!何をやっているのかわかっているのか!今すぐに銃を下ろせ!若者を扇動するな!クーデターごっこなど、いますぐにやめろ!」
「クーデター?違います。これは戦うための準備に過ぎません。すでに事態は如何に引き金を弾かずに済むかを論じる段階ではなく、何時引き金を弾くのかを決めるべき時なのですよ。ですからまずは無能な働き者には戦場からご退場いただきたく存じます。抵抗はしないでくださいね。あなたたちも私と同じ自衛官。情はありますとも、ご安心ください、命まではとらないので」
「戦うだと!?我々は自衛隊だぞ!武力行使を禁じら…放せ!これは反乱行為だ!むぐぅ!」
一佐はまだ何かを喚いていましたが、三佐の部下に猿轡を噛まされ会議室の外へと連れ出されて行きます。
他の幕僚たちもまた拘束されて連れていかれ行きます。
「これでこの基地の最高位は三佐ですね。今すぐご命令を」
一等陸曹が傍に恭しく侍り、命令を仰ぎます。
「総員、戦闘準備。作戦が決定しだい、我々はすぐに出撃する!」
こうして彼女は派遣部隊の実権を握ったのです。禁忌とされた戦争を遂行するために。
皆彼女のカリスマに魅入られていました。
会議室の前に着き、部下たちに部屋の前に待機することを指示して。
「会議中のところ失礼します」
三佐はノックもせずに会議室の中に入ります。
中には幕僚たちと駐屯地の最高責任者たる司令官の一佐がいました。
皆難しい顔をしながら資料を睨んでいます。
「三佐か?今会議中なんだ。後にしてくれ。すぐに下がりたまえ」
一瞥しただけで、三佐を部屋の外に追い出そうします。
「司令、避難民の収容を私の判断でもって開始したことをご報告いたします」
「なんだと?」
一佐は三佐の突然の報告に、席から立ち上がり、窓のブラインドから外を覗きます。
そこには整然と列をなして駐屯地に入ってくる人々が見えました。
「あの暴徒がなぜ落ち着いている?いったい何があった?」
「そんなことはどうでもいいことです。司令。状況は予断を許しません。ぜひ会議で何が決まったのかをお聞かせ頂きたい。一分一秒が惜しいのです。軍閥共がこの街に迫っているのですから。本国はなんと言っているのですか?我々は何をするべきなのですか?お聞かせください。今すぐに」
口調こそ丁寧で柔らかいのに、三佐の声に明らかな威圧感がありました。
それに気おされるように一佐は訥々と言います。
「街に流れる噂の真偽を現在多国籍軍が確認中だ。本国政府も事の真偽が明らかになるまでは軽挙妄動を慎み、待機するようにとの指示だ。我々の任務はあくまでも人道復興の支援であって、暴動の対処や偵察は任務の範疇ではない。待機だ。すぐに持ち場に戻り給え三佐」
「つまり何も決められないということですね。明々白々な脅威が迫っているのに、我々は指を咥えて人民を見殺しにし、そしてボーっと撃たれて死ねと。そうおっしゃるのですね」
三佐の挑発的言動に一佐は顔を真っ赤にして怒鳴りました。
「口を慎め三佐!武装勢力がここにくるという噂の真偽など当てにならん!多国籍軍からもそんな情報は来ていない。このパニックはただの一過性のものに過ぎない」
「そう自分に言い聞かせたいだけでしょう?事なかれ主義も大概にしていただきたいものだ。雁首揃えて大の男たちが会議の名目で引きこもってめそめそと現実逃避か。男らしくないぁ。残念だよ」
そう、冷たく言い放つ三佐の顔には隠しきれない侮蔑の色が混じっていました。
「いい加減にしろ三佐!パニックに当てられて我を失ったのか!だから女には向いていないんだ!化けの皮が剥がれたな小娘!貴様など所詮机上の学問と訓練だけのお嬢さんに過ぎない!」
「ふん。その小娘に挑発されただけで、怒り狂うような奴にお嬢さん扱いされるとはね。まったく、やはり貴様らではこの事態を解決することは能わずだな」
指を鳴らすと、銃を持った若手の自衛官たちが会議室に突入してきました。
銃口の先を幕僚たちと一佐に向け威嚇します。
「三佐!何をやっているのかわかっているのか!今すぐに銃を下ろせ!若者を扇動するな!クーデターごっこなど、いますぐにやめろ!」
「クーデター?違います。これは戦うための準備に過ぎません。すでに事態は如何に引き金を弾かずに済むかを論じる段階ではなく、何時引き金を弾くのかを決めるべき時なのですよ。ですからまずは無能な働き者には戦場からご退場いただきたく存じます。抵抗はしないでくださいね。あなたたちも私と同じ自衛官。情はありますとも、ご安心ください、命まではとらないので」
「戦うだと!?我々は自衛隊だぞ!武力行使を禁じら…放せ!これは反乱行為だ!むぐぅ!」
一佐はまだ何かを喚いていましたが、三佐の部下に猿轡を噛まされ会議室の外へと連れ出されて行きます。
他の幕僚たちもまた拘束されて連れていかれ行きます。
「これでこの基地の最高位は三佐ですね。今すぐご命令を」
一等陸曹が傍に恭しく侍り、命令を仰ぎます。
「総員、戦闘準備。作戦が決定しだい、我々はすぐに出撃する!」
こうして彼女は派遣部隊の実権を握ったのです。禁忌とされた戦争を遂行するために。
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