【完結】当て馬になんてなりたくないので、幼馴染との婚約を断ったら溺愛されました【R18】

Rila

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3.ヒロインの登場

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それはある日の放課後の事だった。
今日は一日中天気が悪く、午後になると更に天候が悪化した。
帰り際には土砂降りの雨に変わっていた。

こんな日は早く帰りたかったのに、先生の手伝いを頼まれてしまった。
だけど1時間程で終わり、私は鞄を教室に置きっぱなしだったので一度教室に戻ることにした。

窓には打ち付けるような激しい雨と、時折遠くの方でピカッと光って雷が落ちる低い音が響いていた。
雷の音が聞こえる度にビクッと体を震わせてしまう。

(最悪だわ…もう早く帰ろう…)

私は急いで帰りたいあまり、教室までの最短ルートを選んでしまった。
私がいた棟と教室の棟は離れていて、それを結ぶ為に連絡通路があるのだが1階は窓が無かった。
だけど通路の距離は10m程だった為、走って通り抜けることにした。

しかし後悔した。
思いのほか風があり、数秒外に出ただけで結構濡れてしまったからだ。
それから漸く教室が見えて来て、扉の前につくと奥に人影が見えた。

天気が悪いせいで室内は暗かったけど、一人は誰かすぐにわかった。ラウルだ。
中からは話し声が聞こえて来て、もう一人は間違いなく女の子だ。

「ふふっ…そうなんですねっ…」
「分からない事があれば、俺で良ければ教えるよ」
女子生徒は楽しそうに笑い声を漏らしながら、ラウルは優しい口調で話していた。
なんだか楽しそうに話している姿を見たら私は話しかけるのを忘れていた。

「あれ…アリシア?」
そんな時、扉の前に立っている私に気付いたラウルは声を掛けた。

「あ、貴女がアリシアさんなんですねっ。私、エリカ・シュガーって言います。今日転校してきたばかりで…、ラウル様に色々学園の事を教えてもらっていたんです」
「アリシアの鞄があったから、待っていたんだ。そしたら彼女が来て、待ってる間少し話をしていたんだ…」

(今…エリカ・シュガーって言ったよね…?)

この乙女ゲームのヒロインの名前はエリカ・シュガー。
伯爵令嬢であり、この学園に転校して来る所からゲームは始まる。

「あ…エリカさん、初めまして…」
私が挨拶をした瞬間、窓の奥で再び雷が鳴った。

「きゃああっ…!」
「……っ…!」
エリカは悲鳴を上げると、隣にいたラウルに抱きついていた。
私も思わず反応してしまったが、それ以上にエリカの声に驚いてしまった。

「大丈夫か…?」
「あ、すいません。大丈夫です…」
エリカは慌ててラウルから離れた。
その光景を見た時、胸の奥がチクっと痛んだ。

エリカが現れたって事は、乙女ゲームがスタートしたと言う事。
ラウルは攻略対象の中の一人ではあるけど、メインヒーローではない。

だけどこの場面を私は知っている。
エリカとラウルの出会いのシーンは雨の日の放課後だった。

エリカは…ラウル狙いなの…?


「エリカ嬢、俺達はそろそろ帰るけど…君も早く帰った方がいいよ」
「はい、そのつもりです。ラウル様と話せて楽しかったですっ、それでは私はこれで失礼させて頂きますね」
エリカは明るい声でラウルにそう告げると、教室を出て行った。

「アリシア、俺達も帰ろう…。……アリシア…?」
私がぼーっと考え事をしていると、目の前にラウルの姿があった。

「あっ…、うん。帰ろう…」
私はラウルを避ける様に自分の席の方まで行くと、置いてある鞄を手に取った。
そして再び教室の出口の方に向かおうとすると、ラウルに腕を掴まれた。

「…な、なに?」
「アリシア…濡れてるけど、どうしたの?」
ラウルは心配そうな声で聞いて来ると、私の髪に触れた。

「1階の通路を抜ける時にちょっと濡れちゃっただけだから…大丈夫だよ」
「こんなに濡れて…、風邪を引くぞ?」
ラウルに髪を触れられて鼓動が早くなる。

「さっきの子…。エリカさんって言ったっけ…」
「ああ、今日からこの学園に転校してきたらしい。学年は俺達より一学年下みたいだ」

「ラウルの…運命の子だったりして…」
私は冗談ぽく笑って言った。

間違いなくそうなんだと思う。
だけど…自分で言って、すごく悲しい気持ちになった。

「どうして…そんな事を言うんだ?」
「だって…さっきすごく楽しそうに話してたじゃない。暗くて顔はあんまり見えなかったけど絶対可愛い子だと思うし…きっと私なんかより…ずっとお似合いだよ…」
私はなんだか混乱していた。
あまりにも突然ヒロインが現れてしまったことに動揺しているのだろうか。

「本気で言っているのか…?」
「え…?」
暗くてラウルの表情ははっきり分からなかったけど、声は怒ってるように聞こえた。

「アリシアには言葉で伝えるよりも、行動で示さないと伝わらなさそうだな」
「どういう…意味?」
ラウルは静かにそう言うと、私の頬にそっと掌を添えた。
私にはその意味が分からず、不思議そうに問いかけると暫くしてから唇に何か柔らかいものが当たった。

「俺が好きなのはアリシアだけだ。これからもそれは変わらない」
「………」
ラウルは落ち着いた声で伝えた。
私は突然の事に何も口に出来ないまま、ただ立ち尽くしていた。

一体何が起こってるの…?
今唇に触れたのって…

「アリシア、俺は絶対にアリシアと結婚する。諦めるつもりは無いよ。本当は少しずつ距離を縮めて行こうと思っていたけど、アリシアがまだそんな事を言うのなら俺はもう遠慮はしないから」
「……っ…」
私は漸く状況が分かって来て、ラウルにキスされたんだと思うと顔が熱くなっていった。
暗くて表情は見えないけど、顔は真っ赤に染まり、鼓動はおかしいくらい早く脈打っている。
私は恥ずかしくなりラウルから離れた。

「アリシア、帰ろう。送っていくよ」
「……うん」
ラウルは普段通りの優しい声に戻っていた。
私は頷いたまま小さく答えた。


どうして、私はこんなにもドキドキしているんだろう。
ラウルの事を好きになったらダメなのに…。
私はラウルにとってはただの当て馬であり、最後にラウルが選ぶのは私ではなくヒロインのエリカだ。
何度もそう自分に言い聞かせた。

だけど、ラウルの傍にいるとドキドキしてしまう。
その気持ちを押さえることなんて出来なかった。


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