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35.再会②
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余計な騒ぎは起こしたくないし、今は耐えるのが一番良い方法だと思った。
まさか婚約破棄されても尚、嫌味を言われるなんて夢にも思わなかった。
ラルスには間違いなく常識が通用しない。
「婚約破棄をしてしまったが、長い間僕の婚約者であったことは決して消えることのない事実だ。だから、お前に対して多少は情もある」
「情があるのなら、見逃してください」
私はウンザリした顔で懇願してみた。
少しでも早くこの場から立ち去りたくて、思わず発言してしまう。
「まあ、最後まで聞け。ああ、全てを失った可哀想なリリア。誰からも必要とされていない、憐れなリリア。僕が婚約破棄をしてしまったが故に、人生が狂ってしまったな」
ラルスは熱演するかのように大げさに話し始め、一人芝居でも始めるつもりなのだろうか。
しかし誰もそんなことは望んでいない。
滑稽な茶番を無理矢理見せられて、私達がしらけていることに早く気付いて欲しい。
こんなものを見せられているせいで、更に頭がズキズキと痛くなってくる。
(この人、馬鹿なの? こんなことをして恥ずかしくないのかな……)
「……あの、まだ終わりませんか?」
「まだだ。最後までちゃんと聞いていろ」
「はぁ……」
「……………」
これにはさすがのグレインもドン引きしている様子だった。
私はこんなものを数年もの間、何度も見ていたから多少は耐性があるが、初めて目にする人間からしたらかなりの衝撃なはずだ。
(こんな人が王子だなんて、国の恥よね。国王陛下がアレクシス様を離したくない理由、すごく良く分かるわ……)
「えーと……、どこまで話したか。リリアが途中で野次を入れるから分からなくなったではないかっ! 最初からやり直しだ」
ラルスは私に向けて指を指し、不満そうに文句を言ってきた。
私はげんなりした表情を浮かべ、深くため息を漏らした。
(もう、勘弁して……)
「リリア様、お顔が青ざめておりますが大丈夫ですか? すぐに屋敷に戻りましょう」
「ははっ……、そうね」
グレインに指摘されるほど、私の表情は悪いらしい。
ラルスという存在自体が、私にとっては劇薬なのかもしれない。
ここにいつまでも居座れば、もっと体調が悪くなる気がしてきた。
王子を無視するのは得策とは言えないが、勝手に去ったとしても今の私ならば罰を受けることはないだろう。
少し大袈裟な言い方をすれば、私はこの国の切り札的存在なのだから。
「おい、何を勝手に話している!」
「ラルス様、申し訳ありません。私達は失礼させて頂きます。グレインさん、行きましょう」
私達はラルスを無視して進行方向に体を戻した。
「リリアのくせに生意気だ!」
「……痛っ! 離してくださいっ」
苛立ったラルスの言葉が響いてくるのと同時に、肩を強く掴まれる。
振り払おうとするが、何故か体に力が入らなくて抵抗出来ない。
「ラルス殿下、今すぐにリリア様から離れてください!」
「はっ、執事風情が僕に命令か? 自分の立場を分かっていないようだな。それに、リリアは元々僕のものなんだ。返してもらって何が悪い」
(なにを言っているの……?)
「婚約破棄しようとしなかろうと、リリアは僕のものであることに変わりない。勝手に姿を消したと思ったら、兄上に匿われて。本当にリリアは悪い子だ。二度とそんな気を起こさないように、しっかりと躾をし直さなければならないな。そうだな。今ここで反省して謝罪の言葉を述べれば、また傍においてやろう。平民の暮らしなんてリリアには無理だし似合わない」
ラルスは不適な笑みを浮かべ、自分勝手に決めつけるような言葉ばかりを並べていく。
歪みきったその表情は、狂った人間ように私の瞳には映っていた。
同時に激しい嫌悪感に苛まれる。
私はラルスのモノなんかではない。
この男は私の事を、大人しいなんでも我慢する人形とでも思っているのだろうか。
だから私の感情を当然の様に全否定してくる。
漸く解放されたというのに、またこの男によって我慢を強いられる人生なんて絶対に嫌だ。
「リリアが素直に僕に従えば、また婚約者に戻してやってもいいと考えている。慈悲深き僕に感謝することだな」
「お断りします」
(婚約って……。そもそも新たに婚約した子爵令嬢はどうしたの?)
「はっ……?」
「ラルス様の婚約者なんて、こちらから願い下げ……っ……」
今までの私だったら、言い返す事は絶対に出来なかった。
恐らく、父が怖かったのだと思う。
だけどアレクシスの屋敷で暮らすようになって、自分の感情を表に出したり、素直な気持ちを声に出せるようになった。
今の私はラルスに恐怖心を感じない。
しかし、言いかけたところで強い目眩を感じて床に崩れ落ちる。
「リリア様っ!」
「おい、リリア!! 一体、どうしたんだ」
二人の戸惑っている声が頭上から響く。
そして、暫くしてからふわっと体が浮き上がるのを感じる。
どうやらグレインが私のことを抱きかかえてくれたようだ。
「ラルス殿下。悪いが今は貴方と口論をしている場合では無い。失礼させてもらう」
「待てっ! どこに行くつもりだ。体調が悪いなら早く休ませた方がいい」
「屋敷に連れて帰ります」
「その状態で馬車に乗せるつもりかっ!? リリアに何かあったらどうする! ここには常駐している医者もいる。今すぐ部屋を用意させるから付いてこい」
「……くっ、分かりました」
二人の言い争う声が頭の奥で響いていた。
だけど今の私は手に力を入れることも、声を出すことも出来なさそうだ。
次第に辺りが白く染まっていき、そこで意識がすーっと溶けるように消えていった。
まさか婚約破棄されても尚、嫌味を言われるなんて夢にも思わなかった。
ラルスには間違いなく常識が通用しない。
「婚約破棄をしてしまったが、長い間僕の婚約者であったことは決して消えることのない事実だ。だから、お前に対して多少は情もある」
「情があるのなら、見逃してください」
私はウンザリした顔で懇願してみた。
少しでも早くこの場から立ち去りたくて、思わず発言してしまう。
「まあ、最後まで聞け。ああ、全てを失った可哀想なリリア。誰からも必要とされていない、憐れなリリア。僕が婚約破棄をしてしまったが故に、人生が狂ってしまったな」
ラルスは熱演するかのように大げさに話し始め、一人芝居でも始めるつもりなのだろうか。
しかし誰もそんなことは望んでいない。
滑稽な茶番を無理矢理見せられて、私達がしらけていることに早く気付いて欲しい。
こんなものを見せられているせいで、更に頭がズキズキと痛くなってくる。
(この人、馬鹿なの? こんなことをして恥ずかしくないのかな……)
「……あの、まだ終わりませんか?」
「まだだ。最後までちゃんと聞いていろ」
「はぁ……」
「……………」
これにはさすがのグレインもドン引きしている様子だった。
私はこんなものを数年もの間、何度も見ていたから多少は耐性があるが、初めて目にする人間からしたらかなりの衝撃なはずだ。
(こんな人が王子だなんて、国の恥よね。国王陛下がアレクシス様を離したくない理由、すごく良く分かるわ……)
「えーと……、どこまで話したか。リリアが途中で野次を入れるから分からなくなったではないかっ! 最初からやり直しだ」
ラルスは私に向けて指を指し、不満そうに文句を言ってきた。
私はげんなりした表情を浮かべ、深くため息を漏らした。
(もう、勘弁して……)
「リリア様、お顔が青ざめておりますが大丈夫ですか? すぐに屋敷に戻りましょう」
「ははっ……、そうね」
グレインに指摘されるほど、私の表情は悪いらしい。
ラルスという存在自体が、私にとっては劇薬なのかもしれない。
ここにいつまでも居座れば、もっと体調が悪くなる気がしてきた。
王子を無視するのは得策とは言えないが、勝手に去ったとしても今の私ならば罰を受けることはないだろう。
少し大袈裟な言い方をすれば、私はこの国の切り札的存在なのだから。
「おい、何を勝手に話している!」
「ラルス様、申し訳ありません。私達は失礼させて頂きます。グレインさん、行きましょう」
私達はラルスを無視して進行方向に体を戻した。
「リリアのくせに生意気だ!」
「……痛っ! 離してくださいっ」
苛立ったラルスの言葉が響いてくるのと同時に、肩を強く掴まれる。
振り払おうとするが、何故か体に力が入らなくて抵抗出来ない。
「ラルス殿下、今すぐにリリア様から離れてください!」
「はっ、執事風情が僕に命令か? 自分の立場を分かっていないようだな。それに、リリアは元々僕のものなんだ。返してもらって何が悪い」
(なにを言っているの……?)
「婚約破棄しようとしなかろうと、リリアは僕のものであることに変わりない。勝手に姿を消したと思ったら、兄上に匿われて。本当にリリアは悪い子だ。二度とそんな気を起こさないように、しっかりと躾をし直さなければならないな。そうだな。今ここで反省して謝罪の言葉を述べれば、また傍においてやろう。平民の暮らしなんてリリアには無理だし似合わない」
ラルスは不適な笑みを浮かべ、自分勝手に決めつけるような言葉ばかりを並べていく。
歪みきったその表情は、狂った人間ように私の瞳には映っていた。
同時に激しい嫌悪感に苛まれる。
私はラルスのモノなんかではない。
この男は私の事を、大人しいなんでも我慢する人形とでも思っているのだろうか。
だから私の感情を当然の様に全否定してくる。
漸く解放されたというのに、またこの男によって我慢を強いられる人生なんて絶対に嫌だ。
「リリアが素直に僕に従えば、また婚約者に戻してやってもいいと考えている。慈悲深き僕に感謝することだな」
「お断りします」
(婚約って……。そもそも新たに婚約した子爵令嬢はどうしたの?)
「はっ……?」
「ラルス様の婚約者なんて、こちらから願い下げ……っ……」
今までの私だったら、言い返す事は絶対に出来なかった。
恐らく、父が怖かったのだと思う。
だけどアレクシスの屋敷で暮らすようになって、自分の感情を表に出したり、素直な気持ちを声に出せるようになった。
今の私はラルスに恐怖心を感じない。
しかし、言いかけたところで強い目眩を感じて床に崩れ落ちる。
「リリア様っ!」
「おい、リリア!! 一体、どうしたんだ」
二人の戸惑っている声が頭上から響く。
そして、暫くしてからふわっと体が浮き上がるのを感じる。
どうやらグレインが私のことを抱きかかえてくれたようだ。
「ラルス殿下。悪いが今は貴方と口論をしている場合では無い。失礼させてもらう」
「待てっ! どこに行くつもりだ。体調が悪いなら早く休ませた方がいい」
「屋敷に連れて帰ります」
「その状態で馬車に乗せるつもりかっ!? リリアに何かあったらどうする! ここには常駐している医者もいる。今すぐ部屋を用意させるから付いてこい」
「……くっ、分かりました」
二人の言い争う声が頭の奥で響いていた。
だけど今の私は手に力を入れることも、声を出すことも出来なさそうだ。
次第に辺りが白く染まっていき、そこで意識がすーっと溶けるように消えていった。
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