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16.この世界のお風呂事情①
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「……ん……っ」
意識が下りてくると、私はゆっくりと瞼を開いた。
私はふかふかのベッドの上で寝ていて、この感覚にどこか懐かしさを感じ、同時に悪い夢から覚めたのでは無いかという錯覚すら持った。
異世界に来てからは安宿にばかり滞在していたので、固いベッドでいつも寝ていた。
体に負担を感じることなく眠っていた所為か、目覚めはとてもすっきりしていた。
しかし、すぐにそれが夢では無いと気付く。
だだっ広い室内に視線を巡らせていると、ゆっくりと記憶が舞い戻って来て、ここは自分が元いた世界では無いことに気付かされた。
そして下半身からは違和感のような怠さを感じる。
そこで漸く昨晩ユーリと体を重ねたことを思い出した。
「……っ、夢じゃない、よね」
私は顔の火照りを感じながら独り言を呟くと、ゆっくりと体を起こした。
そして布団を捲り上げて、自分の胸元に視線を落とす。
すると無数に散らされた、彼に愛された証拠が残っていた。
(やっぱり、夢じゃない。私、昨日ユーリに抱かれたんだ)
枕元にはピンク色のナイトガウンが置かれていた。
私は手を伸ばしてそれを取ると、慌てるように袖を通した。
シルクのような手触りで、とても着心地が良い。
「セラ、起きたのか?」
「……っ!?」
不意に聞き慣れた声が響いてきて、私はビクッと体を震わせた。
ゆっくりと声のする方向へと視線を向ける。
声の主は当然ユーリであり、私は戸惑った顔で「お、おはよう」と挨拶をした。
上は白いシャツを着ただけのラフな格好なのに、それだけで絵になる姿でドキドキしてしまう。
彼は私のいる寝台へと近づいて来ると、端に腰掛けた。
そして私の手を取り、自然な流れで甲にキスを落としてくる。
「おはよう、セラ」
「……っ」
「朝から随分と顔が真っ赤だな。もしかして、昨日のことを思い出したのか?」
「ち、ちがっ……!」
言い当てられてしまい、私は慌てて否定をした。
金色の髪の彼は皇子のイメージそのものだったが、黒髪の姿はさらに色気が増したように見えて妙に緊張してしまう。
理由はそれだけではない。
昨日の出来事が頭に纏わり付いており、彼が見せた艶やかで悩ましげな表情を思い出してしまう。
(どうしよう。まともに顔が見れない……)
私が俯いていると「セラ」と名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
彼の両手が顔の方へと伸びてきて、頬を大きな掌に包まれてしまう。
そうなると強制的に視線が絡む。
「体は平気か?」
「う、うん……。少し重い感じはあるけど、多分大丈夫だと思う」
「そうか。でも今日はゆっくり過ごそうか。昨晩出来なかった話もしたいからな」
「話……?」
ここに来る前に、何か私に話したいことがあると言っていたのを思い出した。
「ああ。でもそれは後でな」
「え? ……んっ」
ユーリは目を細めると、ゆっくりと顔を近づけてくる。
そして私の唇と重なると、ちゅっと音を当てて啄むように吸い上げてきた。
本当にこの人は自然な流れでキスを仕掛けて来る。
まるで本物の恋人かのように……。
「まずはセラを味わわせて」
「……はぁっ、……っ」
私は流されるままにキスを受けているが、内心はかなり焦っていた。
(まさか……、朝からまたするの!?)
しかし私の考えは当たらず、暫くすると唇は離れていった。
その瞬間、ふわっと石けんのようないい匂いがした。
「あ……」
「どうした?」
私は思わず声を漏らしてしまうと、彼は不思議そうな顔で問いかけてきた。
「私も、体を拭いてきます」
昨日は散々乱されて、沢山汗を掻いてしまった。
好きな人と言うわけでは無いが、あんなことをしてしまったので少し気にしてしまう。
「一応セラの体は拭いておいたぞ」
「そうなんですか? ……ありがとうございます」
きっと私が眠っている間に拭いてくれたのだろう。
気に掛けてくれたことは有り難いけど、なんとなく恥ずかしい。
「一応奥に浴場があるから、すっきりしたいのなら入ってくるといい」
「浴場……? それって湯船があって、お湯の中に浸かったり出来る、あれのことですか?」
「ああ、恐らくそれで間違いない。シャワーという魔道具も付いているから、体も簡単に洗い流すことが出来るはずだ」
「シャワー!? ……なんで」
私は思わず声を上げてしまう。
この世界に魔道具と呼ばれるものが存在していることは知っている。
今の話を聞いた感じから、私のいた世界に存在するものと同じような気がする。
「セラはシャワーを使ったことがあるのか?」
「……はい、一応」
(この世界ではないけど……)
「そうなのか。まあ、一部の貴族の間では使われている物ではあるからな。浴場に興味がありそうだから連れて行ってやる」
「……え?」
「私の首にしっかりとしがみついているんだぞ」
「……わっ、ちょっと、待ってっ……!」
私が戸惑いがちに彼の首に腕を絡めると、突然体がふわっと浮き上がった。
「何、気にすることは無い。すぐそこだ」
「自分で歩けますっ!」
「遠慮するな。昨日は無理をさせてしまったから、これくらいさせてくれ」
「……っ」
この状況で断っても聞き入れてくれないことは分かっていたので、ここは諦めて運んで貰うことにした。
(でも、どうしてこの世界にシャワーがあるんだろう。明らかに違う文明を辿っているはずなのに……)
意識が下りてくると、私はゆっくりと瞼を開いた。
私はふかふかのベッドの上で寝ていて、この感覚にどこか懐かしさを感じ、同時に悪い夢から覚めたのでは無いかという錯覚すら持った。
異世界に来てからは安宿にばかり滞在していたので、固いベッドでいつも寝ていた。
体に負担を感じることなく眠っていた所為か、目覚めはとてもすっきりしていた。
しかし、すぐにそれが夢では無いと気付く。
だだっ広い室内に視線を巡らせていると、ゆっくりと記憶が舞い戻って来て、ここは自分が元いた世界では無いことに気付かされた。
そして下半身からは違和感のような怠さを感じる。
そこで漸く昨晩ユーリと体を重ねたことを思い出した。
「……っ、夢じゃない、よね」
私は顔の火照りを感じながら独り言を呟くと、ゆっくりと体を起こした。
そして布団を捲り上げて、自分の胸元に視線を落とす。
すると無数に散らされた、彼に愛された証拠が残っていた。
(やっぱり、夢じゃない。私、昨日ユーリに抱かれたんだ)
枕元にはピンク色のナイトガウンが置かれていた。
私は手を伸ばしてそれを取ると、慌てるように袖を通した。
シルクのような手触りで、とても着心地が良い。
「セラ、起きたのか?」
「……っ!?」
不意に聞き慣れた声が響いてきて、私はビクッと体を震わせた。
ゆっくりと声のする方向へと視線を向ける。
声の主は当然ユーリであり、私は戸惑った顔で「お、おはよう」と挨拶をした。
上は白いシャツを着ただけのラフな格好なのに、それだけで絵になる姿でドキドキしてしまう。
彼は私のいる寝台へと近づいて来ると、端に腰掛けた。
そして私の手を取り、自然な流れで甲にキスを落としてくる。
「おはよう、セラ」
「……っ」
「朝から随分と顔が真っ赤だな。もしかして、昨日のことを思い出したのか?」
「ち、ちがっ……!」
言い当てられてしまい、私は慌てて否定をした。
金色の髪の彼は皇子のイメージそのものだったが、黒髪の姿はさらに色気が増したように見えて妙に緊張してしまう。
理由はそれだけではない。
昨日の出来事が頭に纏わり付いており、彼が見せた艶やかで悩ましげな表情を思い出してしまう。
(どうしよう。まともに顔が見れない……)
私が俯いていると「セラ」と名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
彼の両手が顔の方へと伸びてきて、頬を大きな掌に包まれてしまう。
そうなると強制的に視線が絡む。
「体は平気か?」
「う、うん……。少し重い感じはあるけど、多分大丈夫だと思う」
「そうか。でも今日はゆっくり過ごそうか。昨晩出来なかった話もしたいからな」
「話……?」
ここに来る前に、何か私に話したいことがあると言っていたのを思い出した。
「ああ。でもそれは後でな」
「え? ……んっ」
ユーリは目を細めると、ゆっくりと顔を近づけてくる。
そして私の唇と重なると、ちゅっと音を当てて啄むように吸い上げてきた。
本当にこの人は自然な流れでキスを仕掛けて来る。
まるで本物の恋人かのように……。
「まずはセラを味わわせて」
「……はぁっ、……っ」
私は流されるままにキスを受けているが、内心はかなり焦っていた。
(まさか……、朝からまたするの!?)
しかし私の考えは当たらず、暫くすると唇は離れていった。
その瞬間、ふわっと石けんのようないい匂いがした。
「あ……」
「どうした?」
私は思わず声を漏らしてしまうと、彼は不思議そうな顔で問いかけてきた。
「私も、体を拭いてきます」
昨日は散々乱されて、沢山汗を掻いてしまった。
好きな人と言うわけでは無いが、あんなことをしてしまったので少し気にしてしまう。
「一応セラの体は拭いておいたぞ」
「そうなんですか? ……ありがとうございます」
きっと私が眠っている間に拭いてくれたのだろう。
気に掛けてくれたことは有り難いけど、なんとなく恥ずかしい。
「一応奥に浴場があるから、すっきりしたいのなら入ってくるといい」
「浴場……? それって湯船があって、お湯の中に浸かったり出来る、あれのことですか?」
「ああ、恐らくそれで間違いない。シャワーという魔道具も付いているから、体も簡単に洗い流すことが出来るはずだ」
「シャワー!? ……なんで」
私は思わず声を上げてしまう。
この世界に魔道具と呼ばれるものが存在していることは知っている。
今の話を聞いた感じから、私のいた世界に存在するものと同じような気がする。
「セラはシャワーを使ったことがあるのか?」
「……はい、一応」
(この世界ではないけど……)
「そうなのか。まあ、一部の貴族の間では使われている物ではあるからな。浴場に興味がありそうだから連れて行ってやる」
「……え?」
「私の首にしっかりとしがみついているんだぞ」
「……わっ、ちょっと、待ってっ……!」
私が戸惑いがちに彼の首に腕を絡めると、突然体がふわっと浮き上がった。
「何、気にすることは無い。すぐそこだ」
「自分で歩けますっ!」
「遠慮するな。昨日は無理をさせてしまったから、これくらいさせてくれ」
「……っ」
この状況で断っても聞き入れてくれないことは分かっていたので、ここは諦めて運んで貰うことにした。
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