1 / 11
1.
しおりを挟む
私の名前はリーゼル・ペーラー、現在魔法学園に通う十九歳。
艶やかな薔薇の花びらのような真っ赤な髪に、少しつり目の瞳は紫色をしている。
公爵家の長女として生まれて、両親は私にはとてつもなく甘い。
そのため傲慢で我が儘な性格になってもおかしくないのだが、私はそうはならなかった。
理由は簡単だ。
私は前世の記憶を持ったまま転生したから。
そして、自分の名前を聞いたとき妙な既視感を覚えた。
自分が乙女ゲームに出てくる悪役令嬢であると気づくのには、そう時間はかからなかった。
不幸中の幸いというべきなのか、この事実に気づいたのはまだ六歳の幼い頃。
そして、私を断罪することになるメインヒーローである王太子とはまだ婚約はしていなかったのだけど、幼い私の力でそれを阻止することは残念ながらできなかった。
アンドレアス・ハイゼ・ローマン、それが彼の名前だ。
私と同年齢の十九歳で、くせのないさらさらの金色の髪は腰までのびて、後ろで緩く結んでいる。
瞳の色は王家の人間である証となる黄金色。
容姿端麗で、頭脳明晰、魔力量も高い上に剣術の素質も有り、剣聖というギフトまで所持している。
どれをとっても、メインヒーローに相応しい設定だ。
それに比べて、私の持つギフトは状態異常の無効化という、なんとも地味なスキルだった。
これは悪役だから簡単に舞台から離脱させないための処置に違いない。
(強い作為を感じるわ……。だけど、私は絶対に諦めない! 悪役になんて絶対にならないんだからっ!)
そう、幼いときに決意した私は、現在進行形である作戦を実行している。
仕方なく成り行きで婚約者にはなってしまったが『私はあなたには全く興味ないですよ』と思わせる作戦だ。
媚びを売って良好な関係を作ろうとも考えたが、ヒロインが現れたとき嫉妬していると勘違いされる可能性もあるかもしれない。
その点、最初から興味がないと思わせておけば、不測の事態が起こったとしても、私のことなど気にとめることもしないはずだ。
我ながら、この作戦は絶対上手くいくと期待していた。
設定的な話にはなってしまうが、婚約者がいる身でありながら、しかも立場ある人間だというのに、他の令嬢と恋に落ちて本気になるなんて到底いい人間とは思えない。
私がいた前世ではそれを浮気という。
とはいえ、ゲームをしているときはそんなふうに思ったことはない。
こんな考えを持つのは、不運にも自分が悪役ポジションに転生してしまったからなのだろう。
だからこそ、穏便にことを進めたい。
(悪役にだって幸せになる権利はあるはずよ……!)
しかし、現実は思ったよりも上手くはいかなかった。
艶やかな薔薇の花びらのような真っ赤な髪に、少しつり目の瞳は紫色をしている。
公爵家の長女として生まれて、両親は私にはとてつもなく甘い。
そのため傲慢で我が儘な性格になってもおかしくないのだが、私はそうはならなかった。
理由は簡単だ。
私は前世の記憶を持ったまま転生したから。
そして、自分の名前を聞いたとき妙な既視感を覚えた。
自分が乙女ゲームに出てくる悪役令嬢であると気づくのには、そう時間はかからなかった。
不幸中の幸いというべきなのか、この事実に気づいたのはまだ六歳の幼い頃。
そして、私を断罪することになるメインヒーローである王太子とはまだ婚約はしていなかったのだけど、幼い私の力でそれを阻止することは残念ながらできなかった。
アンドレアス・ハイゼ・ローマン、それが彼の名前だ。
私と同年齢の十九歳で、くせのないさらさらの金色の髪は腰までのびて、後ろで緩く結んでいる。
瞳の色は王家の人間である証となる黄金色。
容姿端麗で、頭脳明晰、魔力量も高い上に剣術の素質も有り、剣聖というギフトまで所持している。
どれをとっても、メインヒーローに相応しい設定だ。
それに比べて、私の持つギフトは状態異常の無効化という、なんとも地味なスキルだった。
これは悪役だから簡単に舞台から離脱させないための処置に違いない。
(強い作為を感じるわ……。だけど、私は絶対に諦めない! 悪役になんて絶対にならないんだからっ!)
そう、幼いときに決意した私は、現在進行形である作戦を実行している。
仕方なく成り行きで婚約者にはなってしまったが『私はあなたには全く興味ないですよ』と思わせる作戦だ。
媚びを売って良好な関係を作ろうとも考えたが、ヒロインが現れたとき嫉妬していると勘違いされる可能性もあるかもしれない。
その点、最初から興味がないと思わせておけば、不測の事態が起こったとしても、私のことなど気にとめることもしないはずだ。
我ながら、この作戦は絶対上手くいくと期待していた。
設定的な話にはなってしまうが、婚約者がいる身でありながら、しかも立場ある人間だというのに、他の令嬢と恋に落ちて本気になるなんて到底いい人間とは思えない。
私がいた前世ではそれを浮気という。
とはいえ、ゲームをしているときはそんなふうに思ったことはない。
こんな考えを持つのは、不運にも自分が悪役ポジションに転生してしまったからなのだろう。
だからこそ、穏便にことを進めたい。
(悪役にだって幸せになる権利はあるはずよ……!)
しかし、現実は思ったよりも上手くはいかなかった。
289
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる