豹変したお兄様に迫られました【R18】

Rila

文字の大きさ
16 / 28

16.帰りたくない

しおりを挟む
 楽しい時間はあっという間に過ぎていくものだ。
 カフェを出た後、再び街を歩き回っていると辺りは薄紅色に染まり始めていた。

「フィー、そろそろ帰ろうか」
「……はい」

 私は空が薄暗くなり始めた頃から、ずっとそわそわしていた。
 出来れば、まだ帰りたくはない。
 だけど、そんなことが出来ないことは分かっている。
 今のこの時間は私にとっては魔法にかかったかのような、夢のような時間だったからだ。

(もう、終わりなんだ……)

「どうしたの? その顔、帰りたくないって言ってるみたいだね」
「……っ!? そ、そんなことないですっ!」

 すごく残念に思ってしまったことで、私は感情をそのまま表に出していたようだ。
 それをルシエルに指摘されて、私は慌てるように否定してしまう。
 勢いよく答えてしまったため、ルシエルはおかしそうにクスクスと笑っていた。

「フィーは本当に嘘を付くのが下手だね。可愛いな。でも、それってまだ僕と二人でいたいってことだよね」
「……っ」

 図星をつかれて恥ずかしくなったが、私は小さく頷いた。
 先程思わず否定してしまったのは、ただ恥ずかしかっただけであり、この気持ちを否定するつもりは更々なかったから。
 
「僕もまだフィーと一緒にいたいけど、そろそろ邸に戻らないと父上も母上も心配するよ」

 彼の言っていることは尤もだ。 
 私だって出来る限り、両親に心配を掛けたくはない。
 
「……だけど、フィーが望んでくれるのなら、今晩また部屋に行ってもいい? 勿論、誰にも気付かれないように行くから」
「え? 宜しいのですか?」

「うん、僕は構わないけど……、フィーはいいの?」
「私……?」

 突然の提案に私が戸惑っていると、ルシエルは小さく口端を上げた。
 その表情に私がぞくりと体を震わせていると、彼の口元が私に耳のほうへと移動する。

「僕達は思いが通じ合った。だからもう遠慮をするつもりはないよ。僕を部屋に招くということは、前回の続きをするということになるけど、フィーにその覚悟はある?」
「……っ!?」

 耳元で囁かれていることでさえ戸惑っているというのに、そんなことを言われて私の表情はみるみるうちに沸騰したかのように熱に包まれていく。

(それって……)

「ふふっ、本当にフィーは素直に反応するね。その様子じゃ、意味は分かってくれたと思っていいのかな。今日の夜までに考えておいて」
「……っ」

 ルシエルはにっこりと微笑みながら言った。
 その表情には何かの思惑が見え隠れしているようで、私は戸惑いを隠すことが出来ない。

「さて、帰ろうか」
「は、はいっ」

 ルシエルは何事もなかったかのように私の傍からぱっと離れると、再び手を繋いで歩き出した。
 私の心臓は、それからずっとバクバクと鳴り響いたままだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...